英車のクラシックバイクの部品は入手がしやすいと言われます。その通りで愛車を調子よく走らせるのに大変助かります。しかし部品が手に入りやすいということがすぐ使えるということではありません。ボルトオンで容易に交換できると思っていたら大きな間違いだったということもしばしばです。
クラシックバイクオーナーなら誰でも部品はその車輌の年代に合った形式のものを付けたいと思うのは当然です。この写真のボンネビルにはやはりモノブロックキャブレターです。幸い新品も作られるようになっているのはとても有り難いことです。3年ほど前、それを使いたいというオーナーの希望で新品に交換しました、でも調子が出ません。2つのシリンダーの片側は調子よく問題ないのですが、もう一方がダメでした。ガソリンが濃くてすぐプラグは真っ黒になり被ってしまいました。ジェット類、調整スクリュー目いっぱい薄くしてもまったく変わりありませんでした。キャブレターを左右交換すると左右のシリンダーの症状が逆転するのでキャブが原因なのは明らかでした。2つのキャブを見比べても違いが分からずいろんなことをやってみたのですが結局あきらめていました。キャブレターのボデーに小さな穴があったので、中にスでもあってガソリンが出てきちゃっているのかなと想像してました。
最近になってオーナーが再度つけてみたいというので、その時使ったモノブロックキャブレターの悪かったほうを新品にしてトライしました。しばらく時間も経っているしそうそう不良品に当たるものじゃないだろう考えましたが甘い考えでした。届いた新品は前回の不良品より更にひどく、まったく着火しないで、生ガスがマフラーからポタポタ出てくる始末です。またキャブを左右逆にすると症状も逆転です。ガックリきました。虫眼鏡で見ながら良いほうのキャブレターと生ガスキャブを比較すると部品類は何一つ違いは無さそうでした。しかし見つけました!一箇所違う所を。スロージェットをアルミのボデーの外側から取り付ける構造になっているのですが、取り付けた状態で外側への出っ張り量がわずかに違うのです。ダメなほうが2mmくらい多く出っ張っていました。キャブのボデーのねじ山の奥行きが少ないらしく入っていかないようです。それようのタップなどあろうはずもなく深くネジを切ることができません。それじゃ、とジェット側のねじ山を削ってみたら、その分ジェットは奥へ入っていきました。そうなんです、ジェットは先端がボデーに当たるようになっているのです。そしてジェットの真ん中の穴から適量のガソリンが出て行くのです。その先端がキャブのボデーに当たってなかった為、できた隙間からガソリンが多量に出て行ってしまったわけです。2年前ダメだったキャブも良く見ると一山分くらい良いほうのキャブよりでていました。前回の原因の追及が甘かったわけですが、3年経っても不良品を造り続けるのもすごいものだと感心致しました。