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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

狐の姫君

2011-08-13 22:07:06 | 白昼夢について


今日は事務所にもカッコいい木の扉がつきまして。
あとは室内をぬってはって仕上げる感じとなっております。
もうじき完成ですねぇ。なので、今日は夜には照明器具を買いに某ハン○マンに行っておりました。

今日の昼には、19期生で同じ部屋になったタカシ君が阿蘇に来てくれたので、一緒にドライブ。
MINIの狭い後部座席に可愛い彼女さんを押し込めてしまって申し訳なかったですが、久々に会っても、別れてても、なぜかまた会えるような感じで。
そんな不思議な感じが面白いなあ、と思っております。

やはり、ご縁があるからなんでしょうね。

さて、この間ARIONに行って居た時、私の昔からのブログ読者の方から。
「あのキツネの話とか、面白かったんですよ。」
と言われて。
はて?どんな話やったかな?
と思ってちょっと検索。
すると、結構バラバラになっていてまとまってないんですね。

そこで、ちょっとひとまとめにしてみましたので。
昔読んだかたも、ちょっと懐かしんで読んでいただければと思います。

これ書いたのは、「なんか話が下りてくるなあ」と思って書いたもので。
実は私も忘れていたくらいなんですが。
改めて読んでみると「意外と面白い。」と自画自賛。
もっと細かく書くと、ちょっとした戦記ものになりそうですね。

ヘミシンクやり始めて面白い現象の一つに、「話が降りてくる」と言う事がありまして。
何かのストーリーが勝手に頭の中で展開して行くのです。

クリエイターの方にもヘミシンクおススメしたいところですね。
では、以下の白昼夢シリーズをお楽しみくださいませ。

<キツネの姫君>

 赤い柱と白い壁が並ぶ横を男が走って逃げています。牢獄から脱走した罪人です。なんとか都の外まで逃げたのですが、役人に見つかって追われているようです。
すると目の前に一匹の白いキツネが現れ、男の前を走り始めました。後ろを振り返りつつ走る姿から、どうやら男をどこかに案内しようとしているようです。キツネはふっと土手の下に走りこみました。男も後を追って土手の下へと飛び降ります。そこには隠れるのに都合のいいくぼみがあり男はそこへもぐりこみます。追っては男を見失い、走り去ってゆきました。
 日が落ちて夜になると、キツネが再び男をどこかへ連れて行こうとします。男はそのままキツネについてゆきます。すると深い森の中へたどり着きました。そこには巨大な木々が茂り、神聖な雰囲気が満ちています。キツネが一本の巨木の下で一声鳴くと周りから4匹の子キツネが現れました。そして、親キツネは木の根元へと男を誘います。するとそこには女の子の赤ちゃんが眠っていました。男が驚いていると、
「あなた様は以前、私達を助けてくれました。それで今日はあなたをお助けしたのです。」
と母キツネが喋りました。そして、この女の子を育ててくれないだろうか、という話をするのです。男は、どうせ都に戻っても罪人扱いされるだけだろうから、ここでキツネと子育てするのも悪くないかと思い、この女の子を育てる事にしました。
 女の子は母キツネの乳を飲み、子キツネを兄弟とし、男に世話をされてすくすくと育ってゆきました。
それから10年の月日が流れ、女の子は兄弟のキツネ達と森を走り回り、母キツネを母親、男を父親と慕い、元気に育っていました。
「おうい、小雪、ちょっと来なさい。」
ある日、いつものように森を兄弟(キツネ)と駆け回っていると男に呼ばれました。どこにいるのか周りを見渡すと、はじめて男と女の子が出会った巨木の根元に母キツネといっしょにいました。
「なんですか父君、母君。」
小雪はそう言って二人(?)の元へと走りよってゆきます。周りにつきまとう4匹のキツネもいっしょです。皆が揃うと男は、
「小雪も、もう十才だ。そろそろ都に行って人間をみるべきだと思う。そこで、次の満月が来るまでに一度、二人で都へ出かけようと思うのだがどうだろう。」
と言いました。母キツネも横で頷いています。
小雪はとても喜びました。人間のたくさんいるところを見るのは初めてだからです。




 小雪と男は都へとやってきました。たくさんの人とたくさんの建物を見て、小雪は驚きっぱなしです。だいいち男以外の人間を見たのも初めてなのですから。
しばらく都を散策していると、男は昔なじみに呼び止められました。以前、男は官職についていたのですが、そのときの同僚だそうです。そして男とそのなじみは、料理屋に入り食事をする事に。すると、そこに役人がやってきて、男を取り押さえてしまいました。
それは、昔なじみがこっそりと通報していたためです。
そこで男は捕らえられて、小雪は一人取り残されてしまいました。小雪は都の外へ出て、キツネの兄弟と共に森へと帰り、母キツネにこのことを話しますとさっそく兄弟のうち、一番すばしっこい一匹に男の様子を見に行かせました。そして小雪に男の話をするのです。昔、今の政治を司る家と対立する立場にあったために男は官職を追われ、罪人に仕立て上げられたのだと言う事を。
そのうち、様子を見に行った兄弟が戻ってきました。男は九州へ送られる事になったと言うことを伝えに。それを聞いて、母キツネは木の根元から一枚の着物を取り出してきました。その着物は小雪が森の入り口に捨てられていた時にくるまれていたものだとか。
「この着物を持って、父君に会いに行きなさい。」母キツネはそう言って手渡しました。
それから、小雪はキツネの4兄弟と共に九州を目指して旅に出るのです。


小雪はキツネと共に九州を目指します。
しかし、人間の作った道は一切通らずに、山の中や森を通って向かっていました。
山にある果実や魚を食べ、夜は兄弟と身を寄せ合って眠り、まったく人と出会うことなく、数日が過ぎました。さすがに何日も歩き通しだと体も汚れてきて気持悪くなるので、たまに川で身を清めたりしながら進んでいます。
 あるとき、荷物を岸に置いて、兄弟達と水浴びついでに魚を採っていると、母キツネからもらった着物が入った包みを何者かが取って逃げてゆきました。すぐにキツネの兄弟が追いかけて犯人の足や手に噛み付いて引き倒してしまいます。遅れて小雪もやってきました。すると荷物を取ったのは小雪よりも小さな男の子でした。
キツネを放してから、どうして取ったのか聞くと、「俺はみなしごなんだ。物を取らないと生きていけない。」と言うのです。そこで、小雪は自分も親から捨てられて、今の父君とキツネの母君に育てられたというと、男の子は笑い始めます。
キツネが人を育てるもんかと。するとキツネの兄弟が威嚇の声を上げて周りを取り囲んで脅しをかけたりしました。男の子は急いで謝って、小雪は取られた荷物を持って、先を急ぎ始めます。するとその男の子は付いてくるのです。
どうせ、みなしごだからどこへいっても自由だし、小雪についていって九州にも行ってみたいと思ったからです。
名前は一太と名乗ります。それから二人と4匹は九州に向かい歩き出しました。一太は火を起す術を持っていたので、それからの旅では魚を焼いたり、焚き火で暖まったりできるようになりました。

 そしてそれから数ヶ月が経ち、すこし背の伸びた小雪と一太、それに4匹のキツネは関門海峡へと到着しました。そこは子供が泳いで渡るには流れが急すぎて危険です。そこで九州へと渡る船を探していると、一人の老人と出会いました。その老人は、自分の息子達は戦に取られてしまって、後を継ぐものがいない、と嘆いています。そこで、一太は言いました。「この子とキツネをむこうへ渡してもらえないか。そうすれば俺がじいさんの跡取になってあげるよ。」老人は喜びました。
そうして、小雪は九州の地を踏む事ができました。そこで一太とはお別れです。「俺はこれからここで漁師として暮らすつもりだから、今度九州から渡りたい時はこの岬で煙を上げてくれよ、そうしたら迎えにくるから。」
と言って一太は笑いました。小雪はお礼を言って、父君のいる所へ向かいました。


 小雪は一太と分かれた後、父親を探そうと思いましたがどこに行けばいいのか良く分かりません。
なので、近くにいた役人に、都から九州に流された人たちはどこにいるのかと聞いてみると、大宰府にいると教えてくれました。
そこで、小雪はキツネの兄弟達とまた山の中を通って大宰府を目指します。キツネの兄弟が他の動物に道を尋ね、それを小雪に教えてくれるので、危険なところを避けて進む事ができました。盗賊などにも出会うことなく、数日後には大宰府にたどり着きました。
そこで、キツネの兄弟が夜のうちに父君を探して、ついに小さな小屋に住んでいるのを見つけました。
 そこで小雪と男は再会を果たすのです。
そして小雪は母キツネからもらった着物を男に見せました。すると男の表情が変わります。何度か頷いた後、小雪に言いました。
「小雪はここでしばらく暮らしてみないか。人間に関するいろいろな勉強を身に付ける必要がありそうだからな。」
小雪は父君と暮らせるのは嬉しかったので、そのままいる事にしました。
大宰府には都から多くの人が流さされて来ており、華やかさはないものの、教養のある人達が揃っていますので、都の学問を学ぶにはちょうど良かったのです。
そうして、小雪は5年を過ごしました。



 小雪は15歳になるまでに様々な人から教えを受け、武芸も、学問も極めてしまいました。そこで父君が言います「もうお前も15だ、都へといってみないか?」と。
小雪は喜んで行きたい旨を伝えると、父君は書状を手渡して言いました。
「この書状とお前が持ってきた着物を都の藤原氏へと届けてくれ。」と。
そして、身なりを男にして、女であることを隠してゆくようにとも言われました。
小雪は男子の旅装束をして、キツネと共に都へと向かいました。関門海峡では一太と再開しました。
最初一太は小雪が分かりませんでしたが、キツネ達を見て気が付いたのです。そこで、陸路では時間もかかるので、知り合いの船にのせてもらって途中まで行くといいという話しになり、船で瀬戸内海を渡る事に。
そして松山を過ぎたあたりで、船は中国地方の小さな港へと寄航しました。ここから先は海賊が出るために、しばらくここで護衛を待つそうです。
そこで、小雪は先を急ぐので、礼を言って分かれて陸路を行く事にしました。今回は有力な豪族の紹介状を持っているので街道を歩いて行きます。薄暗い山沿いを歩いていると、突如山賊が現れました。
6人くらいの侍くずれのようです。ここで、小雪は怖気づくこともなくお金は渡せないと言い、チャンバラの始まりです。でも小雪はたいそう強く、手下をみなみね打ちに仕留めてゆきます。そして頭との直接対決。ここでも小雪は軽い身のこなしでやっつけてしまいます。
そこで小雪は山賊に言いました、私達を護衛して都まで来ないかと。山賊の頭はすっかり小雪の懐の深さに感服して、ついてゆくことにしました。
小雪は給金だと路銀を先に手渡し、身なりを整えるように言いました。
次の宿場から出る頃には、どこかの御曹司とそのお供といった感じで、元山賊達もまんざらではない様子です。そもそも元は侍だったので、どこかにお世話になりたいという気持は持っていたのです。
小雪にその魅力をかんじたのか、皆は素直に小雪の言う事を聞いてくれます。そして新しい仲間と共に小雪は都へと歩いて行くのでした。

小雪たちは無事に都へとたどり着き、書状を見せて藤原氏への面会を求めました。するとすぐに面会する事ができまして、皆で屋敷へと向かいます。
 そこで、小雪は藤原氏の家長、藤原貴正と面会する事に。そこで自分の持ってきた着物と父君から預かった書状を見せました。すると貴正は表情を険しくし、書状を持って考え込んでしまいました。
 その後、小雪たちは藤原氏の邸宅に厄介になることになりました。旅の疲れもあり、小雪は部屋の中ですぐに寝てしまいます。部屋の外には平次郎達が番をしていました。貴正はそのような事はしなくても安全だと言うのですが、平次郎は自分はここが落ち着くと言って、部屋の前から離れようとはしませんでした。
 夜中、小雪が寝ている天井から3人の男が降りてきて、襲い掛かります。しかし、部屋の中にはキツネ達がいて、すぐに応戦です。
そこで外から物音を聞いた平次郎が飛び込んできて、小雪も目を覚まして応戦し始めます。黒装束の男三人は不利と感じたのか、すぐに逃走しようとしました。平次郎が追いかけると、一人が吹き矢を放ちます。間一髪、平次郎はそれを避ける事ができました。そして物音を聞きつけて貴正や他の護衛の者達も集まってきました。
貴正は、ただの物取りだろうと言って、護衛をさらに強化するように言って、去ってゆきました。平次郎はさっきの吹き矢を手にとり、火にかざしてよく見ています。そして小雪に、「さっきの男達はただの物取りではありません。この吹き矢は大陸の国、唐で使われる毒矢です。」と囁きます。
物取りがそのような武器を使うわけがありません。平次郎は、どうやらこの貴正の家は怪しいと思い始めたのでした。

一行は藤原氏の家に厄介になりながら、都にて情報収集を行っていました。平次郎の部下は都の各地に散って酒場や市場などで情報を集めていました。
小雪と平次郎、それとキツネの兄弟は毎日共に都を歩き回っていたので、都でもちょっとした話題になり始めていました。キツネをお供にした美男子、「キツネの君」と都の婦人方から呼ばれるようにもなっていました。
これは平次郎の案で、目立っていたほうが襲われ難いだろうと言う事です。それに行方がすぐにわかったほうが藤原氏も安心するだろうと。平次郎は貴正が怪しいと思っているのでした。
 そんなある日、一人の貴族が小雪に声をかけてきました。
「おお、私の良く知っている方にそっくりだったもので。」と言って爽やかに笑います。
これは都でも噂のプレイボーイ、藤原貞朋です。
一応小雪は男として活動していますので、平雅清と偽名を名乗っています。貞朋は、九州から出てきた小雪たちから話が聞きたいと、言って、自分の屋敷へと招待しました。そこで貞朋は九州の現状、それと都へ来た理由などを話しました。
貞朋は書状の中身を知りたがりましたが、小雪は知らないと答えます。そういう重要な書状は、こっそりと一度目を通して覚えておくものだ。と言ってあきれています。

そこで、貞朋は興味深い話をし始めました。現在九州地方では独立して国を作ろうとしている動きがあると。貴正もそれに協力している人物だが、最近はどうも動きがおかしいと。大陸の使節と良く会っているようだし。そこで、どうやら貴正は九州を独立させる時に、大陸の国からの後ろ盾を得ようとしているようだと。
はたしてこれは九州で活動している人たちは知っているのか?と言います。
小雪はそういう話は聞いたことがなかったと言います。すると、貞朋はそのへんの探りを藤原氏にいれてみたらどうかとアドバイスをします。そこで、平次郎が、なぜそれほどの内容を自分達に話したのかと問うと、貞朋は、「私はこのような面白そうな話がだいすきでね。安心しなさい、役人や都の上の方々は私は嫌いなので、君達の事をあえて話したりしないよ。」と言いました。

小雪たちが藤原氏の邸宅に帰る途中、平次郎があの男を信用してよいものかとぶつぶつ言っていましたが、小雪は信用していてもしていなくても、情報を得るのには都合が良い御人だ、と言ってこれからもちょくちょく家を訪れてみようという話しになりました。
 二人と4匹が帰ったあと、貞朋は懐から一通の書状を取り出しました。それは小雪の父君から送られてきたもの。それを眺めて、貞朋はふっと笑ってつぶやきます。「やれやれ、私にこのような面倒をおしつけおって。」
 小雪たちは毎日それぞれが集めた情報を交換して、都の様子をだんだんと理解してゆきました。そして、これからは九州の独立に関する情報も集める事にしました。


藤原貞朋は都の中央にある宮殿へと向かいました。そして廊下で摂政の仲原実康と会いました。そこで話しかけます。
「最近、都で見かけるキツネの君をご存知か?」
「貴正より聞いておる。九州から来た御仁だとか。それがどうかしたのか?」
「一度顔を見られると良い。驚かれると思うぞ。」
そう言って笑いながら奥へと進んでゆきました。実康は苦々しげに、「まったく、帝の一族だからといって、こうも宮殿へ気安く入ってきてもらっては困るな。」とその背中に言いました。
 貞朋は奥の宮に居る帝へと面会を求めます。するとすぐに許可がでて、奥へと通されました。そこにはまだ髪上げを行ったばかりの若い女性が座っていました。その両側には中年の男と女が控えています。若い女性は貞朋の姿を見ると嬉しそうに声をかけます。
「貞朋!良く来たな。今日はつまらぬ公務ばかりで退屈していたところだった。ちこう来て話をしておくれ。」
貞朋は前に進み出て座ります。
「これは帝、大事なお仕事を退屈だなどと言ってはなりませぬな。」
「第一、このような単純な仕事であればこの康智や比奈津でもこなせよう物を。」と言って、帝と呼ばれた少女は左右の男女を見ました。
そこで、康智と言われた男も、比奈津といわれた女も帝へ少し苦言を言いまして、帝はすねたようになりました。そこで、貞朋は最近、都に面白い御仁が来ていると小雪たちの事を話しました。すると帝はとても興味をもちまして、ぜひ会ってみたいと言います。貞朋は面白そうにその様子を眺めてから、「一度会われると帝も驚きますよ。」と言って笑いました。
その時小雪たち一行は、自分達の滞在用に与えられた屋敷でこれからどうしたものかと話し合っていました。目的地について書状を渡したまでは良かったが、それからの指示が何も無いからです。一応、藤原氏は書状の返事を書くまでは客人としてこの屋敷で過ごしてくれと言ってはもらえるのですが、もう4日もたっています。特にあの黒装束の男達も現れないようなので、とりあえす都の情報を集めて、いつでも動けるようにしておこうというはなしでまとまりました。
その時、戸口に何かが放り込まれる音が。見に行くとそこには一通の書状が入っていました。注意深くそれを開くと、そこには「戌の刻に参ります。貞朋の屋敷にてお会いしましょう。」というないようが書いてありました。


その日の夜。貞朋邸に小雪たち一行は向かいますと、貞朋はすべて知っているような顔で邸へと案内します。そして、しばらく九州にかんする話などをしていると、門から使いがやってきました。
「さて、客人が来ましたよ。」そう言って、貞朋は小雪とともに出迎えに行きます。すると、そこには一台の牛車が止まっていました。貞朋が近づくと、中から勢い良く少女が飛び出してきました。
あの帝です。だいぶ軽装で、町女のような格好ですので、小雪はまさかそんなに身分の高い人とは思いませんでした。
二人は初めて会って、驚きました。満月の光に浮かんだ顔は、まるで生き写しのようにそっくりだったのです。
帝は大きく笑って、「いや、面白い。まさか私と同じ顔の男子がいようとは、驚いた。して、名はなんと言う?私は 捺、じゃ。」
小雪は本名ではなくもちろん偽名で答えます。そのままだと門で話し込んでしまいそうだったので、貞朋は二人を部屋へと通します。そこでまた話が始まったのですが、帝も小雪も若い割には政治にも文学にも精通しており、二人とも漢文も理解できるほどであったので、さまざまな話題でもりあがりました。
隣で聞いていた貞朋があきれるくらいです。帝も同じくらいの年齢で、このようにいろいろな話ができるのが楽しいらしく、話題がつきません。小雪がふと九州の独立について話をふると、「私はしたければすればいいのではないかと思う。」と帝は言いました。
今だって、税を集めているくらいでそれほど中央と密接な関係があるわけではない。ならば独立してもらって、貿易で利益を挙げたほうが大和の国としては有利ではないのかと言います。あまりに思い切った内容だったので、貞朋が驚いたくらい。しかし、と言って帝は続けます。
「ただ、大陸と組んで独立をしようとしている輩がいるというのは気に食わん。それは利用されているだけじゃ。そうやって独立しても今度は大陸の属国に成り下がるだけで、わが国を侵略する拠点程度にしか考えておらんよ。」と。小雪もそういうものですかねえと言って、すこし賛同します。
 そしてあまり夜が更けるのもいけませんので、帝も名残おしそうに帰る事になりました。今度碁で対局しようと約束して。そして帰り際に帝が、「そちは私のところで働いてみる気はないか?」とさそってきました。小雪はまだ自分の動きが定まっていないと言うと、都にいる間に自分の所にも遊びにくるように言って、二人は分かれました。貞朋その様子をは面白そうに眺めるのでした。
 一方、貴正の屋敷では、黒装束の男に、貴正が何か書状を渡していました。
「これで、九州の方は私が掌握するとしよう。」そう言ってにやっと笑うのでした。


ある日、貞朋が一通の書状を持って小雪の邸にやってきました。それは昨日父君から送られてきたものだとか。それを読むと、しばらく都で勉強してこいというような内容でした。それで、小雪は貴正のところにそれを見せにゆくと、貴正はそのまま今の邸を使っていて良いと言って、ついでに都のことを教えてくれる先生も紹介してくれるとの事でした。そして、いざやってきたのは貞朋でした。都の帝付きでありながら、大陸へ渡った経験もあり、法律などにも精通してるからだとか。小雪は見知った人物だったので安心して勉強をはじめました。そしてたまに夜になると貞朋の邸で帝と碁を打ったり、最近の情勢について話したりして、より友好を深めていったのでした。
ほかに、平次郎などの家臣を養うために仕事がしたいと小雪が言うと、貞朋は税を管理する仕事を紹介してくれました。そこで、小雪は税の集められ方、使われ方などを学んでゆきました。平次郎達も馬や弓矢の訓練に向かい、日々武術の練習を行っていました。たまには小雪の練習相手にもなったりして、山賊をしていた頃よりも充実した日々を送っていました。
そういう日々が過ぎてゆき一年が経ちました。
その間、キツネ達は一度森に帰って、母狐と父君の様子を見てきてくれたりしました。
どちらも変わりなく健康に過ごしているようで、小雪は安心して都の知識を学んでいったのでした。おかげで、帝がたまに意見を聞きに来るくらいです。
もちろんまだ正体は教えていませんので、小雪は帝の事をどこか有力な貴族の一員であろうくらいにか思っていませんでした。別に誰であろうと関係無いと思っていましたので。そうこうしているうちに、貴正が突如九州へ向かってゆきました。大宰府を見に行くためだそうで。
貞朋はすこし胡散臭そうに思いましたが、小雪の父君と書状を交し合っていたので、貴正の動きに気をつけるようにといった内容を送っていました。それと、平次郎が貴正の邸に以前見かけた黒装束の男が出入りするのを見かけたという内容も沿えて。

そして幾日か過ぎた頃、都に早馬が飛ぶように駆けてきました。その使者が伝えた内容に、帝や貞朋、他の人人も驚きました。それは、九州が大陸に占領されているという内容です。今、関門海峡の近くで、で北上するのを食い止めているので応援を乞う、とも。そこで、至急会議が開かれ、応援の部隊を送り込むことになりました。
そこで、小雪は自分もその部隊に入り、九州へ行くことを志願しました。貞朋は、父君の事を思えばそれも仕方がないか。と思い、貞朋も帝の代理として一緒に行く事に。
平次郎達も同行し、都から南に向かって討伐軍が出発したのでした。


小雪たちは下関に向かっていましたが途中、中国地方にさしかかった時,平次郎が言うのです。ここで少し暇を下さいと。ここでもう少し戦力を集めてきます。と言います。正直、都の戦力だけでは心もとないところもあったので、小雪は貞朋に許しをもらって、平次郎と以下数人とここで別れました。平次郎は瀬戸内海を目指してゆきます。
 小雪たちは途中で戦力を集めつつ、下関につきました。海峡の向こうには大陸から来たと思われる軍船がいくつかと、九州の船が多数あります。潮の流れなどの関係で、まだ本州への上陸は果たしていないようです。そこで、小雪はキツネの兄弟をむこうに送り込んで、状況を偵察させようと思いたちました。人間より小回りがききますから。下関で、小雪は一太と再開を果たし、キツネ達は一太の船でこっそりと九州に渡ってゆきました。その間、下関側では軍船を集めたり、部隊をまとめたり、情報を集めたりと次第に戦いの気運が高まってきていました。何度か強行偵察を出したり出されたりで、おおよその規模を把握したところ、船の数や戦力は九州側のほうが有利なようでした。そこで、貞朋は極力海戦は避けて、陸上よりの攻撃をしつつ、情報を集める作戦をとりました。何度か小競り合いがありましたがまだ小手調べ程度。そしてキツネが渡ってから2日後、偵察からかえってきました。それによると、大宰府にいた主要な人物は、ほとんど監禁されていると言う事。今回の状況は、貴正がほとんど一人で大陸側と交渉して引き寄せたものらしいのです。大宰府の小雪の父君などは大陸の力が入ることに反対していたので、現在監禁されているとか。それと、キツネ達は相手側の布陣も教えてくれまして、大陸の軍と九州の軍は2:8の割合で構成されているとか。そして、会議が開かれ今度の引き潮の時に、まだ相手側の意思の統一がとれていないうちに大規模に攻め込もうということになりました。
 小雪も鎧に身を固め、一太の操る船で出陣です。潮の流れを読んだ攻撃の仕掛け方で、当初、小雪達の軍が有利に戦闘を行っていましたが、大陸の軍艦が動き出してからは一変しました。圧倒的な攻撃力で、日本の小型の船を蹴散らしてゆきます。もともと水軍の不足していた都の軍隊はだいぶ危険な状況になってきました。戦いの中、一太も負傷し、小雪は船から船へと飛び移るほどの活躍をしていましたが、もう力も出なくなり始めていました。日も落ち初めて、潮の流れが逆方向にかわった時、瀬戸内海がわから軍船の大船団がやってきたのです。それは平次郎が集めてきた海賊の軍団でした。平次郎は自分と同じように元武士で仕方なく海賊をしている仲間に声をかけ、説得してともに戦うようにしむけたのです。海賊は潮の流れ巧みにを読み、効果的な攻撃を加えてゆきます。劣勢だった小雪達の軍も勢いが出始めました。海賊達は軍船にも取り付いて、大陸の船一隻を沈めてしまいました。それにより九州軍は引き始め、都の軍と海賊達が九州への上陸を果たしたのです。貞朋は海賊達を褒め称え、このまま一緒に戦ってくれれば正式に召抱えると約束をして、仲間に加えました。海賊はその後も夜襲を仕掛けたりして大陸の船を苦しめ、戦力を削るのに活躍しました。
 皆が九州で陣を固めている時、一太の傷は深かったため、小雪たちと共に進む事が困難になり下関に残る事に。また小雪と分かれ、再開を約束したのでした。     

小雪達の軍勢は九州に上陸し、快進撃を続けてゆきます。九州からの寝返った部隊も多く、貴正の軍勢はだんだんと追い込まれてゆきました。元海賊の力は絶大で、海上からも貴正の軍勢を圧倒して行きます。ついに、高取山の砦にて貴正は追い込まれ、捕縛される事に。貴正は言います。「九州に流されたものの辛さ、苦しさを都のものに思い知らせてやりたかった。」と貞朋は、「それは私とて思うところがある。あなたはやり方がまずかったのだ。」と言って、貴正を都へ連れて行くよう部下の壱彦に言いました。
貞朋は、「私はまだここでやる事があるので農村出身の兵とともに戻ってくれ。もうじき作物の収穫もあろうから。」
そこで都の軍勢は、貞朋の直属の部下、小雪の兵(平次郎達と海賊達)を残して都へ帰る事に。その後姿を見送りながら、「さて、これからが本番だ。」貞朋はそうつぶやくのでした。
 帝達は早馬により戦の結果を知っていたので、戻ってきた軍を歓迎して、労をねぎらいます。
都へ戻った壱彦は帝に貞朋より預かった書状を手渡しました。それを読んで行くうちに帝の表情が変わります。
「おのれ、貞朋、計ったな。」怒りと、どこか楽しそうな口調でそう言いました。摂政も書状を読んで顔色を変えます。「いかが致しましょう。」しかし、帝は落ち着いたもので、「別に九州が独立しようと私はかまわぬ。ただ、あちらにも“帝”がおるというのが少し気に食わぬが。」と言います。
「使いを送れ、使者を立てて帝に一度会いに来いと。捕獲したりせぬから安心して来いとな。」そして、「まだ碁の決着がついておらぬからな、碁を打ちに私も九州に行ってみたいものじゃ。」と笑いながら言いました。
 一方、大宰府では貴正に捕まっていた主な人々と貞朋が九州が独立すること。それに、正当な血筋の帝を抱えていること、などを話し、独立宣言を都に送ることとなりました。そこで、小雪に父君が、「そなたは、これより我々の君主として働いていただく事になった。よろしいかな?」と言います。
小雪は自分が君主とは何事かと思い、父君に問いますと、送り出す時に持たせた着物を取り出し、言いました。この着物にある紋は紛れも無く帝の血筋の家。しかも帝には生まれてすぐに生き別れた双子の兄弟がいる。と、小雪はそれが自分の事だと気が付きました。貞朋はこの事を知った上で帝と会わせていたのです。「帝と知った仲であればむやみな戦はおきないだろう。」という考えの上で。
 小雪が女へと戻った時、平次郎を含め多くの部下が驚きに包まれました。しかし、帝自らが戦場でともに戦ってくれていたという事にみなは感激し、一生小雪についてゆく気持になったのでした。
 それから数日後、若い女帝が治める「九州国」が誕生しました。九州の帝は「キツネの帝」と呼ばれ都の帝と区別されて、好意をもってこう呼ばれました。



第一部完
 ここで一つ区切りがつきましたね。一応ここで小雪の話は終りますが、まだ続きそうな気配もします。というか、一太はあのあとどうなったのか?とかちょっと気になることもありますから。まあ、イメージが押し寄せてきたら第二部が始まるかも?




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5 コメント

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まるの日さん、こんにちは。 (りんパパ)
2011-08-13 22:29:12
 今日、アマゾンからまるの日さんの、新刊本が届きました。
 モンロー研体験記、ですね。
 著者の紹介の所で、まるの日さんの、お顔の写真がありました。
 みなさん、まるの日さんの、お顔を見たい方は、ぜひ、本を買ってくださいね。

 これから、読みます。
 ちょうど、お盆休みなので、のんびり読ませていただきます。
 私は、早く欲しかったので、アマゾンで買いましたが、まるの日さんのお店、ネコオルで買うと、まるの日さんの、サイン入りです。
 ぜひこちらで買ってくださいね。
 
返信する
初めてコメントします。 (道産子だもの)
2011-08-13 23:28:35
まるの日さんにはインドの美男子のイラストを描いていただいた者です。

狐の姫君、面白かったです!話に引き込まれました♪
返信する
キツネの話面白く読ませて頂きました。 (トポロ)
2011-08-14 08:34:30
まるの日さんが他で書かれたストーリーを読んでも思うのですが、それぞれ独特の風合が有り、今回も、話の着地点として史実から遠くても、違和感無く、「香り高い」仕上がりになっていると思いました。
お話が、空気感を伴っていて、薄っぺらくないのですね。
返信する
初めまして。 (shaga)
2011-08-14 08:36:18
去年の今頃、まるの日さんのブログ最初から全部読ませていただき、最近また最初からもう一度読んでいて、今2008年の9月あたりですが、どうしても小雪さんの話の続きが気になっていたところで本日。
わー続きだーと期待しましたが、、、
是非続き出ましたらお願いします。
去年の12月からゲートウェイ始めていますが、まだ何かもやっとする程度です、ただ一度だけ1ヶ月前頃目の前に鮮明に見えたのがとあるレストランの中の風景で、それが昨日読んだこのイラストと全く同じなのには驚きました。http://pub.ne.jp/marunohi/?daily_id=20080918
昨日今日と驚きの連続でつい書いてしまいました。
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皆様コメントありがとうございます。 (marunohi)
2011-08-14 15:26:15
基本的に楽しんでいただけて嬉しいです。
まあ、細かく書くといろいろともっと平次郎などの良さも出てくると思うのですが。

この話、第2部がもしあるとすると、たいての戦記ものにありがちな

・崩れていく人間関係
・主人公の苦悩
・そして崩壊する国

みたいな衰退の話になりそうな気もするので。
まあ、見ない方が良いかもしれない、という気もします(笑)。
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