まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

ウコンの力、一流営業マンの力

2011-01-25 12:32:35 | お仕事のオキテ
土曜日の盛岡での結婚式について昨日ご報告させていただきましたが、
あれだけ飲んで食べたのだから翌朝はちゃんと10時にチェックアウトできるかどうか心配でした。
ガンガン頭痛がして、吐き気もして、ベッドから起き上がれないだろうな、と。
ところが、いちおう8時半にかけておいた目覚まし時計よりも少し早めに自然と目が覚め、
普通のビジネスホテルではありえないくらい大きめのバスタブにたっぷりお湯を張り、
(新郎の手配により、泊まったのは街中にある盛岡グランドホテルANNEX)
久しぶりにお風呂に浸かって気分も爽快、
9時半までの朝食バイキングにも余裕で間に合って、
以前にここに泊まったとき以来のお気に入りであるシェフ特製カレーを平らげられるくらい、
スッキリさっぱり気分よく目覚めることができました。

12時間もかけてチャンポンして飲みまくり、
アワビやらステーキやらのフルコースから、二次会のジャンクフード、最後はシメの盛岡冷麺まで、
それはもう暴飲暴食を絵に描いたような半日を過ごしたというのに、
どうしてこんなにピンピンしているのでしょうか?
おそらくそれは 「ウコンの力」 のおかげだったのだろうと思うのです。
披露宴の受付のときに、受付台の横に 「ウコンの力」 が山積みに陳列されており、
「ご自由にお持ちください」 となっていました。
ドリンクばかりでなく顆粒の袋も置いてあって、顆粒のほうはけっこう余っていましたから、
最後のほうは、どうぞどうぞこれ持ってっちゃってくださいと、
ドリンクの他に顆粒を7袋も頂いてしまいました。
で、披露宴の前にドリンクを1本、2次会の前に顆粒を1袋のんでおきましたので、
たぶんそのウコンの力が私を守ってくれたんだろうと思うのです。
今どきの披露宴ではあらかじめ 「ウコンの力」 を配布するようになっているのでしょうか?
それともこれも盛岡一という 「盛岡グランドホテル」 のサービスの一環なのでしょうか?
たいへん助かりました。

ところで、この披露宴では私は初めて祝辞も乾杯の挨拶もせずにすんだと昨日書きました。
それはなぜかというと招待客が豪華な顔ぶれで、
新郎の大学時代の部活の顧問なんかが出る幕なんてまるでなかったからです。
席次表を見たときからみんな驚き、不思議がっていました。
新郎は卒業後、外資系の製薬会社に勤め営業としてずっと働いています。
そういう場合、普通だったら新郎側の主賓席は、
自分の会社のお偉いさんばかりになるはずじゃないですか。
ところが違うんです。
新郎側の主賓席は医大の先生たちで埋め尽くされているのです。
中には 「医大教授の令夫人」 なんていう肩書きの人までいます。
つまり、製薬会社にとってはお得意様になりますね。
そういう方々を1テーブル分お呼びしているのです。
当初は、会社からの命令でお得意先を招待しろと言われたのかななんて噂していました。

ところがそうではなかったのです。
主賓の祝辞はその医大のある准教授の方がされました。
その方は新郎のことを担当の営業であるとともに自分の友人でもある、と紹介していました。
そして、自分と新郎との関係についてもお話しされたのですが、
途中で、当日出席できず代わりに奥様に出席してもらっていた医大教授の祝辞も、
代読という形で読み上げ始めたのです。
つまり、本当の主賓はその教授だったのだけれど、
どうしても外せない用があって本人は出席できず、
そういう場合はたんに欠席すればいいだろうに、
その教授は律儀にも自分の代わりとして奥様を出席させた挙げ句、
(つまり、ちゃんとご祝儀を出すということです)
祝辞の原稿も部下に託したというわけです。
これはけっしてお義理で呼ばれた得意先のすることではなく、
むしろ医大教授の側が新郎に対して礼を尽くしているということになります。
一介の製薬会社の営業に対して普通ここまでするでしょうか?

披露宴が進行していくなかでその謎はしだいに解けていきました。
もともと彼の製薬会社はその医大とはまったく取り引きがなかったのだそうです。
営業に行ってもけんもほろろに追い返されてばかりだったそうです。
そんななかで新郎は時間をかけて先生方と人間関係を作っていきました。
たんにモノを売ろうとしたのではなく、自分という人間を売っていったのです。
営業と得意先という関係を超えて、先生方に 「友人」 と呼んでもらえる関係を構築したのです。
そうして営業的にも少しずつ食い込んでいき、
とうとうトップセールスを記録するまでになっていったのです。
会社の同僚や上司の方々の話によれば、
自分の披露宴に得意先の先生方をお招きするなんていうことは滅多にないそうです。
それができたのは、彼がただの営業マンとしてではなく、
ひとりの人間として、友人として信頼を勝ち得ていたからだったのでしょう。

そもそも彼の結婚式が盛岡で開かれたというのも不思議だったのです。
彼は仙台出身なのです。
新婦は盛岡出身ですが、そういうときはたいてい新郎側の郷里が選ばれたりするものです。
日本各地から親せき一同が集うということを考えても、
仙台のほうがはるかに便利だと言えるでしょう。
おそらく彼の親せきからはなんで仙台でやらないんだという声も上がったのではないでしょうか。
しかし、それを新婦の郷里であると同時に、
自分の勤め先であり、得意先もいる盛岡で開催することにしたというところに、
すでに彼のさまざまな気配りを感じ取ることができます。
大学時代から人づきあいのうまい人間だなあとは思っていましたが、
正直ここまでとは思っていませんでした。
社会に出て彼の資質に磨きがかかり、一流の社会人として開花したのでしょう。

そんなこんなでディープな1日を過ごした翌朝、
一流営業マンの力を思い出しつつ、ウコンの力も実感しつつ、
きっちり10時にホテルをチェックアウトすることができました。
ロビーに下りてきてみると、3時までカラオケに付き合っていたはずの新郎の姿がありました。
皆さんをお見送りするために来たんだと言うではないですか。
ホントはもっと早く来たかったんですが、さすがに起きられなくて少し前に着いたところです、
とは言っていましたが、普通、新郎がそこまでするでしょうか?
(ちなみに新婦も一緒に来ていて別の集団を送っていっているところだそうです。)
ただでさえ結婚式、披露宴で疲れているのですから、
それだけでも今頃ぐっすり眠っていても誰にも文句を言われないところです。
とりわけこの夫婦は4次会まで付き合っているんですから、
夕方まで死んでいてもおかしくないはずです。
それをちゃんと朝、ホテルまで見送りに行こうと思う、
その尋常でなさが彼を一流の営業マンたらしめているのでしょう。
おそらく医大の先生たちは市内や近郊在住だからこのホテルには泊まっていないはずです。
得意先がいるかいないかとかは関係なく、自分の知人、友人を大切にする心、
それが自然と仕事にも活かされているということではないでしょうか。

「先生は大丈夫ですか?」 と聞かれたので、
「おかげさまで 『ウコンの力』 のおかげでスッキリ目覚められたよ」 と答えました。
ついでに 「あれってグランドホテル独自のサービスなの?」 って聞いてみたら、
「いや、ぼくが持ち込んだんですよ。皆さんに心おきなく飲んでもらおうと思って。
 ああやってキレイに並べてくれたのはホテルの人たちですけど。」
とのお答えでした。
いやあ、完敗です。
ぼくたちの肝臓の心配をしてくれただけでなく、
ホテルの人たちにも感謝のことばを述べちゃうのかい、君は。
参りました
素晴らしいっ
こういう人間が福島大学の卒業生だと思うと (人間発達文化学類ではないけど)、
本当に誇らしい気持になれます。
一流営業マンのホスピタリティに感動しつつ、盛岡の街をあとにしたのでした。