【はじめに】
今回は、戦前と戦後の官僚制度/採用試験について書きます。
【戦前の官吏】
明治初期には公務員試験は有りませんでした。内閣制度が始まったのは1885年(明治18)で、伊藤博文が初代の内閣総理大臣に就任しました。それまでは、武士が官僚になっていましたが、優秀な人材を登用する必要が有ると考えて、87年から高等試験と普通試験を始めました。
局長以上の『官』は、試験によらずに採用し、帝国大学卒業生は無試験で高級官僚に採用しました。(当時、帝国大学は東大だけでした。京大は97年の設立です。)その後、官吏の採用試験が始まりました。
現在は『官僚』が一般的ですが、戦前は『官吏(かんり)』だった様です。官吏は下に示す①~④です。現在と違うのは大臣の多くが官吏だったことです。そして、陸軍大臣と海軍大臣は軍人か軍出身者だった様です。皇室は山林や株式などを所有する大富豪だったので経済的に独立していて、宮内官は官吏には含まれていませんでした。(皇室費を国家予算から出す事にすると、国会の議論/承認が必要になり、恐れ多いいと考えて、莫大な資産を(形式上)皇室の所有にしたのだと思われます。宮家の費用も皇室資産から出ていました。)
奏任官の技術系の役人は『技師』、判任官の場合は『技手(ぎて)』と呼ばれていました。
・・・ 戦前の官吏 ・・・
① 親任官 :現在の大臣級
② 勅任官(ちょくにんかん) :高等官1等、2等、現在の次官や局長級
③ 奏任官(そうにんかん) :高等官3等、現在の課長級以下
④ 判任官(はんにんかん) :1等~4等
⑤ 雇員・傭人等
・・・ 戦前の官吏採用試験 ・・・
★ 1887年 :高等試験(奏任官の採用試験)と普通試験(判任官の採用試験)
★ 1893年 :文官高等試験
★ 1899年 :勅任官も高等文官試験の合格者が就任する事になりました。
(余談 :総理大臣の任命) 前述の様に1885年(明治18)に内閣制度が発足し、伊藤博文が初代の内閣総理大臣に任命されました。 大臣達は天皇の臣下(天皇の補佐役)で、議会が選んだのでは無く、天皇が任命しました。天皇に任命責任が生じる場合が想定されるので、『元老』達が相談して総理大臣候補を一人に絞って天皇に推挙しました。天皇は推挙された人間を必ず総理大臣に任命しました。元老達が年老いて亡くなってしまったので、(天皇直属で官吏では無かった)内大臣と重臣達が内閣総理大臣を推薦する様になりました。
この方式で選ばれた最後の総理大臣は、吉田茂です。吉田茂は土佐藩出身の政治家だった竹内綱の五男で、資産家の吉田家に幼い時に養子に入り、→→東大卒→→外交官で終戦を迎えました。終戦直後に貴族議員に任命され→→外務大臣→→総理大臣になりました。
尚、新憲法下で選ばれた最初の総理大臣は、日本社会党の片山哲です。
【戦前の武官僚】
戦前には陸軍省と海軍省が有りました。陸軍士官学校と海軍兵学校(修学期間3年ほど)が有り、その卒業生の一部が修学期間3年の陸軍大学校と海軍大学校で学びました。
1872年(明治5年)に海軍病院学舎が設立され、→→82年に海軍医務局学舎/海軍医学校→→94年に海軍大学の中に軍医科→→97年に海軍軍医学校になりました。 1886年(明治19年)に陸軍軍医学校が設立されました。
(余談 :森鴎外) 森鴎外(林太郎)は東大の医学部を81年に卒業し、陸軍の軍医になりました。当時・まだ陸軍軍医学校は有りませんでした。鴎外は軍医としてドンドン出世して軍医の最高の地位『陸軍軍医総監(中将相当)』になりました。極めて多忙だったと想像しますが、時間を作って執筆活動を続けました。 文学だけでなく美術にも詳しく、(軍医退職後は)1917年に帝室博物館(現在の東京・京都・奈良の国立博物館)総長兼図書頭→→19年に帝国美術院(現在の日本芸術院)初代院長に就任しました。
(余談 :父) 1901年生まれの父は、貧しい家に養子に出され、尋常小学校を中退して商店に丁稚奉公に出ました。昔の丁稚は勉強する時間が与えられた様で、陸軍幼年学校に合格して→→陸軍士官学校に進みました。陸軍幼年学校は月謝が必要でした。養子先から出して貰っていないのは確かですが、金をドンナニして得たのか父は話しませんでした。英語の勉強もした様で、私が中学生だった時、中学校の英語の教科書が読めました。
・・・ 陸軍の学校 ・・・
★ 陸軍大学校 :陸上自衛隊教育訓練研究本部指揮幕僚課程に相当する。
★ 陸軍士官学校・本科 :現在の陸上自衛隊幹部候補生学校に相当する。
★ 陸軍士官学校・予科 :現在の防衛大学に相当する。
★ 陸軍幼年学校 :原則としては旧制中学校卒業生を採用しましたが、学歴が不問だったので、父は入学出来たのです。(月謝が必要)
・・・ 海軍の学校 ・・・
★ 海軍大学校 :海上自衛隊幹部学校に相当する。
★ 海軍兵学校 :旧制中学校の卒業生を採用した。
(注記) 他に、海軍機関学校と海軍経理学校が有りました。
【戦後の国家公務員試験】
戦後の大臣や官僚は公僕(国民に奉仕する役人)です。 日本国憲法の規定によって、内閣総理大臣は両院の選挙で選ばれる事になりました。その最初の内閣総理大臣が片山哲です。現在は、総理大臣の下に大臣、副大臣、大臣政務官がいて、原則として国会議員の中から選ばれる事になっています。(これらの役職には現役の官僚はなれないと思います。)
下に列記する様に、種々の国家公務員(官僚)採用試験が行われています。総合職試験に合格すると超!エリート官僚(キャリア官僚)になれます。2021年の合格者数は1,834人でした。 大卒の一般職試験の合格者数は7,553人(採用予定数は4,654人)でした。
地方公共団体では、(民間企業と同じ様に)大卒程度と高卒程度を対象とした採用試験を行っています。最初から超!エリートとして採用される事は無いようです。 就職した時から超!エリート扱いするのは民主的とは言えませんから、私は、「総合職試験を廃止すべきだ!」と考えます。
❶内閣総理大臣→→❷大臣→→➌副大臣→→➍大臣政務官・・・原則として国会議員が就任
〇事務次官→→〇外局長官→→〇官房長→→〇局長→→〇部長→→〇次長→→〇課長→→〇課長補佐→→〇室長→→〇企画官、専門官→→〇係長・主査→→〇主任→→〇係員
・・・ 現在の国家公務員採用試験の歴史 ・・・
① 1947年 :国家公務員法
② 1949年 :第1回の国家公務員試験(受験資格が大卒程度のみ)
③ 1950年 :4級職採用試験;(受験資格が高卒程度。現在の国家公務員採用一般職試験の高卒
程度に相当)
④ 2001年 :国家公務員採用Ⅰ種試験(現在は国家公務員採用総合職試験に統合)、外務書記生試験(現在の外務省専門職員採用試験)が開始されました。
・・・ 現在の国家公務員採用試験 ・・・
★ 総合職試験(院卒者) :キャリア官僚
★ 総合職試験(大卒程度) :キャリア官僚
★ 一般職試験(大卒程度)
★ 一般職試験(高卒者)
★ 専門職試験(大卒程度) :国税専門官試験・労働基準監督官試験・財務専門官試験、航空管制官採用試験
★ 専門職試験(高卒者) :刑務官試験、省庁大学校、海上保安学校の採用試験
★ 経験者採用試験 :民間企業の途中入社採用試験の様な制度
● 外務省専門職員採用試験 :試験は外務省が行っている。
(注記 :省庁大学校) 省庁が沢山の大学校を運営しています。下記の①~⑦の大学校を卒業すると、大学卒と同じ『学士』になれます。 ①~④、⑧の大学校に入学すると月給とボーナスが支給されます。貧しい家の子供でも、頑張ったら大学校に進学出来ます。
① 防衛大学校(防衛省) :有給、学費無料
② 防衛医科大学校(防衛省) :有給、学費無料
③ 海上保安大学校(国土交通省) :有給、学費無料
④ 気象大学校(国土交通省) :有給、学費無料
⑤ 水産大学校(水産庁) :学費必要
⑥ 職業能力開発総合大学校 :学費必要
⑦ 国立看護大学校 :学費必要
⑧ 航空保安大学校(国土交通省) :2年制(短大相当)、有給、学費無料
⑨ 警察大学校(警察庁) :幹部警察官の研修所(新規採用は無し)
⑩ 税務大学校(国税庁) :高卒で税務職員採用試験に合格した人の研修、有給
⑪ 航空大学校(国土交通省) :パイロット養成、学費必要
⑫ 職業能力開発大学校(厚生労働省) :職業訓練施設
⑬ 職業能力開発短期大学校(厚生労働省) :職業訓練施設
⑭ 自治大学校(総務省) :地方公務員に対する研修所(新規採用は無し)
⑮ 消防大学校(総務省消防庁) :消防上級幹部等の研修所(新規採用は無し)
⑯ 国土交通大学校(国土交通省) :研修所(新規採用は無し)
【戦後の武官】
戦前は徴兵制でしたが、現在は応募制です。厳しい訓練を行っているのに応募者がいる事に感心します。私の家の近くに、息子と同級の男の子がいました。彼は小さい時から自衛隊に入ると言っていました。高校を卒業して入隊したのですが、10日もしない内に帰って来ました。「朝起きるのが辛かった!」、「訓練に耐えられなかった!」と言っていました。
中学卒でも入隊出来ます。陸上自衛隊高等工科学校(横須賀市)で募集しています。優秀な成績を収めると防衛大学に進めます。学費は無料で、月給とボーナスが支給されます。
韓国は徴兵制で服務期間は陸・海・空・海兵隊で異なり、18か月~21か月です。戦後の兵器の進歩は目覚ましく、兵器の操作/整備に訓練と知識が必要です。自衛隊には種々の学校が有って、種々の訓練/勉強をしています。韓国の様に服務期間が短いと、実戦で役に立たないのでは?と思います。
私は1985年頃に複数の護衛艦を見学した事が有ります。全て退役した旧型艦の話ですが、艦砲は甲板に設置されたドームに収納されており、イタリア製でした。 遠隔操作するので、ドーム内は無人でした。 砲弾は船内の弾薬庫から機械で持ち上げられ、自動で艦砲に挿入され、1分間に数十発連射出来るとの説明でした。接近して来たミサイルの方向にドームを急速で回転させる必要があり、ドーム内に人間がいると”目が回る”との事でした。 護衛艦にも沢山の種類があり、それぞれ種々の兵器を搭載しています。
陸海空の自衛隊が所有する兵器の種類は数え切れないほど沢山有ります。その為に、防衛省には幹部候補生を教育する学校だけでなく、種々の技術を習得する為の学校が沢山有るのです。 ウイキペディア『自衛隊の学校等一覧』で検索して見て下さい。
(余談 :消防車の点検・整備) 機械設備の新設では最寄りの消防署に書類の提出が必要な場合が有ります。 メーカーが作成した書類を顧客が提出し/説明するのが原則ですが、メーカーに同行を要求する顧客も有り、私は数回消防署に行った事があります。説明に署長が同席されて、雑談を小一時間するのが常でした。どこでも、「消防車は何故?何時も車体がピカピカに磨かれているのか?」と質問されました。「いざという時に故障しない様に、毎日消防車を点検/整備している。車体を磨く事は消火活動とは関係無いが、点検した証明に毎日車体を磨いている」と誇らしげに言われました。自衛隊でも、同じ様に毎日!毎日!点検/整備しているのだと思われます。
・・・ 自衛隊の歴史 ・・・
★ 1950年 :警察予備隊
★ 1951年 :警察予備隊・総隊普通科学校が設立された。(陸上自衛隊幹部候補生学校の前身/戦前の陸軍士官学校に相当する。)
★ 1952年 :保安庁
★ 1952年 :防衛大学校の前身が設立された。
★ 1954年 :防衛庁
★ 1954年 :海上自衛隊幹部学校(旧海軍の海軍大学に相当する)
★ 1955年 :陸上自衛隊少年工科学校→→2010年に陸上自衛隊高等工科学校・・・中卒、有給
★ 1964年 :自衛隊体育学校
★ 1973年 :防衛医科大学・・・学費無料、有給
★ 2007年 :防衛省
【現在の官僚の人数】
国家公務員と地方公務員の合計は”333万人”ほどで、約18%が国家公務員で、その内約46%が自衛官です。 先進国の中では国家公務員の数は少ない方です。女性の割合が少ない(約40%)のが問題だと思います。公務員の給与は、先進国の中では高い様です。
マイナンバーと住民票、厚生福祉関係の書類、預金貯金通帳、不動産登記等々を連結して、国家と地方公共団体をデジタル化し、インターネットで手続き出来る様にしたら、公務員の数を大幅に削減できると私は考えます。 (更に、金持ちは相続税を誤魔化す工夫を種々やっていますが、誤魔化しが難しくなります。)
・・・ 2019年の公務員数 ・・・
★ 国家公務員 :合計≒58.5万人
❶一般職≒28.7万人、❷特別職≒3万人、➌防衛省≒26.8万人
★ 地方公務員 :合計≒274.4万人
【アメリカの官僚】
アメリカでは1789年にワシントンが初代大統領に就任しました。 政権が交代すると官僚(上級と下級役人)が入れ代わりました。『僚(下級役人)』まで交代すると、行政が混乱します。 百年後(1883年)に公務員法(ペンドルトン法)が出来て、(官に相当する)上級管理職と郵政庁などを除く国家公務員は競争試験の成績で採用される様になりました。
上級管理職は今でも政権が交代すると入れ代わります。 日本では上級役人(官)は難しい筆記試験の点数で採否を決めますが、アメリカでは上級管理職の競争試験制度は有りません。
日本は『終身雇用制度』が慣例化されており、官僚も原則として終身雇用です。従って、日本の公務員試験は新卒を想定した物になっています。 逆に、欧米諸国では、空いたポストに経験豊富な人材を得る事に注力している様に見えます。これは、日本で言う「途中入社」です。 日本でも途中入社を認める大企業が少しずつ増えて来ているようですが、官僚についての「途中入社」はまだ狭き門です。
韓国の財閥系の大企業では殆ど途中入社を認めていない様ですが、公務員の一部は民間企業で働いていた人を採用しています。 但し、元働いていた企業に情報を流すなどの不正が時々問題になっています。
アメリカの政策には一貫性が無い様に見えますが、上級管理職が政権交代時に入れ代わる制度が原因の様に私には思えます。 安倍晋三氏はトランプ氏と親密な関係を築いたと自慢げでしたが、「何時梯子を外されるか?」私は心配していました。 立憲民主党は政権を取る前に、アメリカの政治について独自に情報を収集し/勉強しておく必要が有ります。でないと、2010年の鳩山・オバマ会談の様に顰蹙(ひんしゅく)を買う事になってしまいます。 何故なら、野党の政治家には外務省や内閣情報局が機密情報を流す分けが有りません。
・・・ アメリカの公務員の数 ・・・ 出典=ウイキペディア
アメリカの人口は33,000万人、日本は12,600万人です。アメリカは、国家公務員も地方公務員も非常に多いい国だと言えます。
★ 国家公務員≒275万人 (上級管理職≒0.8万人、行政≒269万人、立法≒3万人) (日本≒31.6万人)
★ 軍関係≒140万人 (日本≒26.9万人)
★ 地方公務員≒1,600万人 (州政府≒434万人、群や市≒1,185万人) (日本≒274.4万人)
今回は、戦前と戦後の官僚制度/採用試験について書きます。
【戦前の官吏】
明治初期には公務員試験は有りませんでした。内閣制度が始まったのは1885年(明治18)で、伊藤博文が初代の内閣総理大臣に就任しました。それまでは、武士が官僚になっていましたが、優秀な人材を登用する必要が有ると考えて、87年から高等試験と普通試験を始めました。
局長以上の『官』は、試験によらずに採用し、帝国大学卒業生は無試験で高級官僚に採用しました。(当時、帝国大学は東大だけでした。京大は97年の設立です。)その後、官吏の採用試験が始まりました。
現在は『官僚』が一般的ですが、戦前は『官吏(かんり)』だった様です。官吏は下に示す①~④です。現在と違うのは大臣の多くが官吏だったことです。そして、陸軍大臣と海軍大臣は軍人か軍出身者だった様です。皇室は山林や株式などを所有する大富豪だったので経済的に独立していて、宮内官は官吏には含まれていませんでした。(皇室費を国家予算から出す事にすると、国会の議論/承認が必要になり、恐れ多いいと考えて、莫大な資産を(形式上)皇室の所有にしたのだと思われます。宮家の費用も皇室資産から出ていました。)
奏任官の技術系の役人は『技師』、判任官の場合は『技手(ぎて)』と呼ばれていました。
・・・ 戦前の官吏 ・・・
① 親任官 :現在の大臣級
② 勅任官(ちょくにんかん) :高等官1等、2等、現在の次官や局長級
③ 奏任官(そうにんかん) :高等官3等、現在の課長級以下
④ 判任官(はんにんかん) :1等~4等
⑤ 雇員・傭人等
・・・ 戦前の官吏採用試験 ・・・
★ 1887年 :高等試験(奏任官の採用試験)と普通試験(判任官の採用試験)
★ 1893年 :文官高等試験
★ 1899年 :勅任官も高等文官試験の合格者が就任する事になりました。
(余談 :総理大臣の任命) 前述の様に1885年(明治18)に内閣制度が発足し、伊藤博文が初代の内閣総理大臣に任命されました。 大臣達は天皇の臣下(天皇の補佐役)で、議会が選んだのでは無く、天皇が任命しました。天皇に任命責任が生じる場合が想定されるので、『元老』達が相談して総理大臣候補を一人に絞って天皇に推挙しました。天皇は推挙された人間を必ず総理大臣に任命しました。元老達が年老いて亡くなってしまったので、(天皇直属で官吏では無かった)内大臣と重臣達が内閣総理大臣を推薦する様になりました。
この方式で選ばれた最後の総理大臣は、吉田茂です。吉田茂は土佐藩出身の政治家だった竹内綱の五男で、資産家の吉田家に幼い時に養子に入り、→→東大卒→→外交官で終戦を迎えました。終戦直後に貴族議員に任命され→→外務大臣→→総理大臣になりました。
尚、新憲法下で選ばれた最初の総理大臣は、日本社会党の片山哲です。
【戦前の武官僚】
戦前には陸軍省と海軍省が有りました。陸軍士官学校と海軍兵学校(修学期間3年ほど)が有り、その卒業生の一部が修学期間3年の陸軍大学校と海軍大学校で学びました。
1872年(明治5年)に海軍病院学舎が設立され、→→82年に海軍医務局学舎/海軍医学校→→94年に海軍大学の中に軍医科→→97年に海軍軍医学校になりました。 1886年(明治19年)に陸軍軍医学校が設立されました。
(余談 :森鴎外) 森鴎外(林太郎)は東大の医学部を81年に卒業し、陸軍の軍医になりました。当時・まだ陸軍軍医学校は有りませんでした。鴎外は軍医としてドンドン出世して軍医の最高の地位『陸軍軍医総監(中将相当)』になりました。極めて多忙だったと想像しますが、時間を作って執筆活動を続けました。 文学だけでなく美術にも詳しく、(軍医退職後は)1917年に帝室博物館(現在の東京・京都・奈良の国立博物館)総長兼図書頭→→19年に帝国美術院(現在の日本芸術院)初代院長に就任しました。
(余談 :父) 1901年生まれの父は、貧しい家に養子に出され、尋常小学校を中退して商店に丁稚奉公に出ました。昔の丁稚は勉強する時間が与えられた様で、陸軍幼年学校に合格して→→陸軍士官学校に進みました。陸軍幼年学校は月謝が必要でした。養子先から出して貰っていないのは確かですが、金をドンナニして得たのか父は話しませんでした。英語の勉強もした様で、私が中学生だった時、中学校の英語の教科書が読めました。
・・・ 陸軍の学校 ・・・
★ 陸軍大学校 :陸上自衛隊教育訓練研究本部指揮幕僚課程に相当する。
★ 陸軍士官学校・本科 :現在の陸上自衛隊幹部候補生学校に相当する。
★ 陸軍士官学校・予科 :現在の防衛大学に相当する。
★ 陸軍幼年学校 :原則としては旧制中学校卒業生を採用しましたが、学歴が不問だったので、父は入学出来たのです。(月謝が必要)
・・・ 海軍の学校 ・・・
★ 海軍大学校 :海上自衛隊幹部学校に相当する。
★ 海軍兵学校 :旧制中学校の卒業生を採用した。
(注記) 他に、海軍機関学校と海軍経理学校が有りました。
【戦後の国家公務員試験】
戦後の大臣や官僚は公僕(国民に奉仕する役人)です。 日本国憲法の規定によって、内閣総理大臣は両院の選挙で選ばれる事になりました。その最初の内閣総理大臣が片山哲です。現在は、総理大臣の下に大臣、副大臣、大臣政務官がいて、原則として国会議員の中から選ばれる事になっています。(これらの役職には現役の官僚はなれないと思います。)
下に列記する様に、種々の国家公務員(官僚)採用試験が行われています。総合職試験に合格すると超!エリート官僚(キャリア官僚)になれます。2021年の合格者数は1,834人でした。 大卒の一般職試験の合格者数は7,553人(採用予定数は4,654人)でした。
地方公共団体では、(民間企業と同じ様に)大卒程度と高卒程度を対象とした採用試験を行っています。最初から超!エリートとして採用される事は無いようです。 就職した時から超!エリート扱いするのは民主的とは言えませんから、私は、「総合職試験を廃止すべきだ!」と考えます。
❶内閣総理大臣→→❷大臣→→➌副大臣→→➍大臣政務官・・・原則として国会議員が就任
〇事務次官→→〇外局長官→→〇官房長→→〇局長→→〇部長→→〇次長→→〇課長→→〇課長補佐→→〇室長→→〇企画官、専門官→→〇係長・主査→→〇主任→→〇係員
・・・ 現在の国家公務員採用試験の歴史 ・・・
① 1947年 :国家公務員法
② 1949年 :第1回の国家公務員試験(受験資格が大卒程度のみ)
③ 1950年 :4級職採用試験;(受験資格が高卒程度。現在の国家公務員採用一般職試験の高卒
程度に相当)
④ 2001年 :国家公務員採用Ⅰ種試験(現在は国家公務員採用総合職試験に統合)、外務書記生試験(現在の外務省専門職員採用試験)が開始されました。
・・・ 現在の国家公務員採用試験 ・・・
★ 総合職試験(院卒者) :キャリア官僚
★ 総合職試験(大卒程度) :キャリア官僚
★ 一般職試験(大卒程度)
★ 一般職試験(高卒者)
★ 専門職試験(大卒程度) :国税専門官試験・労働基準監督官試験・財務専門官試験、航空管制官採用試験
★ 専門職試験(高卒者) :刑務官試験、省庁大学校、海上保安学校の採用試験
★ 経験者採用試験 :民間企業の途中入社採用試験の様な制度
● 外務省専門職員採用試験 :試験は外務省が行っている。
(注記 :省庁大学校) 省庁が沢山の大学校を運営しています。下記の①~⑦の大学校を卒業すると、大学卒と同じ『学士』になれます。 ①~④、⑧の大学校に入学すると月給とボーナスが支給されます。貧しい家の子供でも、頑張ったら大学校に進学出来ます。
① 防衛大学校(防衛省) :有給、学費無料
② 防衛医科大学校(防衛省) :有給、学費無料
③ 海上保安大学校(国土交通省) :有給、学費無料
④ 気象大学校(国土交通省) :有給、学費無料
⑤ 水産大学校(水産庁) :学費必要
⑥ 職業能力開発総合大学校 :学費必要
⑦ 国立看護大学校 :学費必要
⑧ 航空保安大学校(国土交通省) :2年制(短大相当)、有給、学費無料
⑨ 警察大学校(警察庁) :幹部警察官の研修所(新規採用は無し)
⑩ 税務大学校(国税庁) :高卒で税務職員採用試験に合格した人の研修、有給
⑪ 航空大学校(国土交通省) :パイロット養成、学費必要
⑫ 職業能力開発大学校(厚生労働省) :職業訓練施設
⑬ 職業能力開発短期大学校(厚生労働省) :職業訓練施設
⑭ 自治大学校(総務省) :地方公務員に対する研修所(新規採用は無し)
⑮ 消防大学校(総務省消防庁) :消防上級幹部等の研修所(新規採用は無し)
⑯ 国土交通大学校(国土交通省) :研修所(新規採用は無し)
【戦後の武官】
戦前は徴兵制でしたが、現在は応募制です。厳しい訓練を行っているのに応募者がいる事に感心します。私の家の近くに、息子と同級の男の子がいました。彼は小さい時から自衛隊に入ると言っていました。高校を卒業して入隊したのですが、10日もしない内に帰って来ました。「朝起きるのが辛かった!」、「訓練に耐えられなかった!」と言っていました。
中学卒でも入隊出来ます。陸上自衛隊高等工科学校(横須賀市)で募集しています。優秀な成績を収めると防衛大学に進めます。学費は無料で、月給とボーナスが支給されます。
韓国は徴兵制で服務期間は陸・海・空・海兵隊で異なり、18か月~21か月です。戦後の兵器の進歩は目覚ましく、兵器の操作/整備に訓練と知識が必要です。自衛隊には種々の学校が有って、種々の訓練/勉強をしています。韓国の様に服務期間が短いと、実戦で役に立たないのでは?と思います。
私は1985年頃に複数の護衛艦を見学した事が有ります。全て退役した旧型艦の話ですが、艦砲は甲板に設置されたドームに収納されており、イタリア製でした。 遠隔操作するので、ドーム内は無人でした。 砲弾は船内の弾薬庫から機械で持ち上げられ、自動で艦砲に挿入され、1分間に数十発連射出来るとの説明でした。接近して来たミサイルの方向にドームを急速で回転させる必要があり、ドーム内に人間がいると”目が回る”との事でした。 護衛艦にも沢山の種類があり、それぞれ種々の兵器を搭載しています。
陸海空の自衛隊が所有する兵器の種類は数え切れないほど沢山有ります。その為に、防衛省には幹部候補生を教育する学校だけでなく、種々の技術を習得する為の学校が沢山有るのです。 ウイキペディア『自衛隊の学校等一覧』で検索して見て下さい。
(余談 :消防車の点検・整備) 機械設備の新設では最寄りの消防署に書類の提出が必要な場合が有ります。 メーカーが作成した書類を顧客が提出し/説明するのが原則ですが、メーカーに同行を要求する顧客も有り、私は数回消防署に行った事があります。説明に署長が同席されて、雑談を小一時間するのが常でした。どこでも、「消防車は何故?何時も車体がピカピカに磨かれているのか?」と質問されました。「いざという時に故障しない様に、毎日消防車を点検/整備している。車体を磨く事は消火活動とは関係無いが、点検した証明に毎日車体を磨いている」と誇らしげに言われました。自衛隊でも、同じ様に毎日!毎日!点検/整備しているのだと思われます。
・・・ 自衛隊の歴史 ・・・
★ 1950年 :警察予備隊
★ 1951年 :警察予備隊・総隊普通科学校が設立された。(陸上自衛隊幹部候補生学校の前身/戦前の陸軍士官学校に相当する。)
★ 1952年 :保安庁
★ 1952年 :防衛大学校の前身が設立された。
★ 1954年 :防衛庁
★ 1954年 :海上自衛隊幹部学校(旧海軍の海軍大学に相当する)
★ 1955年 :陸上自衛隊少年工科学校→→2010年に陸上自衛隊高等工科学校・・・中卒、有給
★ 1964年 :自衛隊体育学校
★ 1973年 :防衛医科大学・・・学費無料、有給
★ 2007年 :防衛省
【現在の官僚の人数】
国家公務員と地方公務員の合計は”333万人”ほどで、約18%が国家公務員で、その内約46%が自衛官です。 先進国の中では国家公務員の数は少ない方です。女性の割合が少ない(約40%)のが問題だと思います。公務員の給与は、先進国の中では高い様です。
マイナンバーと住民票、厚生福祉関係の書類、預金貯金通帳、不動産登記等々を連結して、国家と地方公共団体をデジタル化し、インターネットで手続き出来る様にしたら、公務員の数を大幅に削減できると私は考えます。 (更に、金持ちは相続税を誤魔化す工夫を種々やっていますが、誤魔化しが難しくなります。)
・・・ 2019年の公務員数 ・・・
★ 国家公務員 :合計≒58.5万人
❶一般職≒28.7万人、❷特別職≒3万人、➌防衛省≒26.8万人
★ 地方公務員 :合計≒274.4万人
【アメリカの官僚】
アメリカでは1789年にワシントンが初代大統領に就任しました。 政権が交代すると官僚(上級と下級役人)が入れ代わりました。『僚(下級役人)』まで交代すると、行政が混乱します。 百年後(1883年)に公務員法(ペンドルトン法)が出来て、(官に相当する)上級管理職と郵政庁などを除く国家公務員は競争試験の成績で採用される様になりました。
上級管理職は今でも政権が交代すると入れ代わります。 日本では上級役人(官)は難しい筆記試験の点数で採否を決めますが、アメリカでは上級管理職の競争試験制度は有りません。
日本は『終身雇用制度』が慣例化されており、官僚も原則として終身雇用です。従って、日本の公務員試験は新卒を想定した物になっています。 逆に、欧米諸国では、空いたポストに経験豊富な人材を得る事に注力している様に見えます。これは、日本で言う「途中入社」です。 日本でも途中入社を認める大企業が少しずつ増えて来ているようですが、官僚についての「途中入社」はまだ狭き門です。
韓国の財閥系の大企業では殆ど途中入社を認めていない様ですが、公務員の一部は民間企業で働いていた人を採用しています。 但し、元働いていた企業に情報を流すなどの不正が時々問題になっています。
アメリカの政策には一貫性が無い様に見えますが、上級管理職が政権交代時に入れ代わる制度が原因の様に私には思えます。 安倍晋三氏はトランプ氏と親密な関係を築いたと自慢げでしたが、「何時梯子を外されるか?」私は心配していました。 立憲民主党は政権を取る前に、アメリカの政治について独自に情報を収集し/勉強しておく必要が有ります。でないと、2010年の鳩山・オバマ会談の様に顰蹙(ひんしゅく)を買う事になってしまいます。 何故なら、野党の政治家には外務省や内閣情報局が機密情報を流す分けが有りません。
・・・ アメリカの公務員の数 ・・・ 出典=ウイキペディア
アメリカの人口は33,000万人、日本は12,600万人です。アメリカは、国家公務員も地方公務員も非常に多いい国だと言えます。
★ 国家公務員≒275万人 (上級管理職≒0.8万人、行政≒269万人、立法≒3万人) (日本≒31.6万人)
★ 軍関係≒140万人 (日本≒26.9万人)
★ 地方公務員≒1,600万人 (州政府≒434万人、群や市≒1,185万人) (日本≒274.4万人)