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アメ横の高架橋で耐震補強

2015-07-06 15:56:00 | 日記
 多くの人でにぎわう東京・上野のアメ横。公式サイトによれば、平日でも1日10数万人、年末には1日50万人の人出があるそうです。休日の路上は身動きができないほど混雑します。
 もし大地震に襲われて頭上を走る鉄道の高架橋が落ちてきたら被害はどれほど大きくなるでしょう。想像するだけで恐ろしい。こうした悲劇を防ごうと、阪神大震災から20年を経て鉄道施設の耐震補強工事が本格化します。既に工事のために休業を始めた店舗もあります。
 台東区の観光調査では、上野地区には2012年の1年間に2034万人が訪れ、うち457万人がアメ横の観光客です。増加傾向にあり、浅草地区の2075万人に肉薄しています。上野の街は2つの顔を持っています。上野駅の北西側は台地で広大な公園や動物園になっており、美術館や博物館、音楽ホールなどが建っています。大学もあり、文化・芸術の集積地です。
 対して上野駅の南側は、物販店や飲食店が集中する下町の繁華街です。なかでもアメ横は中心的存在で集積度が非常に高いです。JR線の御徒町駅までの高架下400mの区間を中心に400もの庶民的な店舗がびっしり建ち並びます。物販店では所狭しと商品が並び、飲食店では隣の客と肩が触れ合うほどです。高架下の細い通路は迷路のようになっており、まるでジャングルです。
 高架の上を走る列車も高密度です。京浜東北線の朝ラッシュ時の上野から御徒町までは、混雑率が200%と都内で最も混雑する区間のひとつです。並走する山手線も含めて混雑を緩和するために計画されたのが、3月に開業する上野東京ラインです。高架の上下で人がひしめいており、耐震性を向上させる事が重要な課題だったそうです。鉄道構造物の耐震性を向上させる取り組みは、1995年に起こった阪神大震災がきっかけだそうです。例えば山陽新幹線は、同震災で新大阪-姫路間の83kmが被災。早朝で運行前だったこともあり死傷者こそいなかったものの、高架橋が落ちるなどして復旧までに81日を要しました。
 これを教訓に耐震基準が1998年に引き上げられ、鉄道各線で耐震補強が進みました。2011年の東日本大震災では、東北新幹線が大宮-いわて沼宮内間の536kmと長い区間で被害を受けたものの、落橋などの致命的な被害はなく、49日で運行を再開しました。阪神淡路大震災の教訓が生かされた日本のすばらしい技術です。一方、同じJR線でも東京近郊などの在来線区間では、対策が遅れ気味でした。新幹線への対策を優先したほか、高架下にテナントが多数入居している、場所が狭くて施工しにくいといった都市部ならではの課題がありました。 2011年には東日本大震災が起こり、首都直下地震の危険性がさらに声高に叫ばれるようになりました。東日本旅客鉄道は2012年、総額3000億円を投じて都市部の鉄道構造物の地震対策を強化すると発表。5年間を重点期間と位置づけて、都内各所で対策が加速しだしています。
 既存の都市空間を安全なものに変えようとすると、様々な課題にぶつかります。高架下に店舗があるケースでは、工事に当たって相当な配慮が必要です。アメ横は集客力がありながらも小規模な店舗が多く、一時的であっても移転や休業は死活問題につながりかねません。にぎわいそのものが街の魅力になっており、移転して顧客が付いてきてくれるとは限りません。構造物を管理する側や工事する側など関係者は、難しい舵取りをしながら計画を立案・推進していく必要があると思います。地震等の災害はいつ起こるかわかりません。だからこそ、いつ起こっても大丈夫なように備えるのは大切な事です。


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