12/4 モアノー探偵事務所 ケンちゃんの友達がいじめに (3)
純平たち一家はスイスの前はドイツのデュッセルドルフにいた。
商社マンだった純平のおとうさんの最初の海外赴任地だった。
デュッセルドルフはパリには例えられる美しい町だった。
車の行きかう広い車道には太くて高い街路樹が続き、
幅のひろい歩道はときに、公園から抜け出した大きな白鳥が
ノッシ、ノッシとカッポするときもあった。
誰も白鳥を公園に連れ戻そうとはしなかった。
ジュネーブは清潔な町だった。
ここは国境を接する国の言葉はドイツ語に始まり、イタリア語、
フランス語、そして英語が話され、
小さい商店の店主でさえ、これらの言葉を自然にこなすのだった。
純平と姉はインターネショナルスクールに通っていた。
学校にはいろいろな国籍と人種がいたが、
校内の公用語は英語だった。
しかし、親の都合で突然スイスにくることになった子供たちのなかには
母国語以外理解できなかった子供たちもいた。
でも学校は一人、一人の環境に対処して学校生活にはなんの支障も起こらなかった。
純平はいろいろな子供と遊ぶのが好きだった。
しかし、午後に行く日本人学校はちょっと様子が違っていた。
子供たちは親の職業別に集まるように感じられた。
さらに親の社会的地位? いやもしろ、職業の社会的評価によって
”暗黙”の階段みたいなものがあった。
ある日の授業参観の後、純平は彼の感じたことをおかあさんに
言った。
商社マンって外交官より下・・・・ !?
純平のおかあさんは商社内の夫の上下関係、さらに高官なんかへの気遣いで
ウンザリしていた。
「ボク、あまり好きじゃない」
と純平はボソっと言ったのだけど、
純平のおかあさんは「おかあさんもよ」とクリアな声で答えた。
そして美しい細いマユを寄せて、唇をギュっと結んで行ってしまった。
純平が学校を休んだ日、ハルさんは客足の途絶えた店で
ショーウインドーの同じところを磨きながら
頭の中はせわしく働いていた。
チリチリチリと店の戸が開いた。
「いらっしゃいませ」とハルさんは言いながら
「どなただったかしら?」と思っていた。
その夫人は菓子パンの陳列棚を覗き込みながら
いくつかの菓子パンを選んだ。
「こちら中学校にもお店をお持ちでしょ?
次男が大好きで、上の子も下の子も好きになったのよ。」
「あらまぁ、ありがとうございます。 どのぼっちゃんだったかしら?」
「岡本隆っていうのよ。」
「ああ、岡本君のおかあさんですか? 毎度ありがとうございます。」
ハルさんはチャンスと思ったけれど、結局何もできなかった。
あれが岡本君のおかあさんか?
店の前の電線でチュン太はじっとその夫人をみつめた。
チュン太は電線を飛び移りながらあとについて行った。
途中でチュン太の仲間2羽も参加した。
岡本君の家は大きな庭のあるなかなかの家構えだった。
チュン太は仲間2羽と縁側の側の木で日暮れまで中を観察した。
岡本君の兄も弟も、さらにおとうさんまで日暮れ前に見ることができた。
岡本君のお父さんは運転手つきの車で帰ってきた。
岡本君の兄さんも弟も素直な子供で、格別に問題はない
とチュン太は思った。
岡本君ってどういう子なんだろう??
続
純平たち一家はスイスの前はドイツのデュッセルドルフにいた。
商社マンだった純平のおとうさんの最初の海外赴任地だった。
デュッセルドルフはパリには例えられる美しい町だった。
車の行きかう広い車道には太くて高い街路樹が続き、
幅のひろい歩道はときに、公園から抜け出した大きな白鳥が
ノッシ、ノッシとカッポするときもあった。
誰も白鳥を公園に連れ戻そうとはしなかった。
ジュネーブは清潔な町だった。
ここは国境を接する国の言葉はドイツ語に始まり、イタリア語、
フランス語、そして英語が話され、
小さい商店の店主でさえ、これらの言葉を自然にこなすのだった。
純平と姉はインターネショナルスクールに通っていた。
学校にはいろいろな国籍と人種がいたが、
校内の公用語は英語だった。
しかし、親の都合で突然スイスにくることになった子供たちのなかには
母国語以外理解できなかった子供たちもいた。
でも学校は一人、一人の環境に対処して学校生活にはなんの支障も起こらなかった。
純平はいろいろな子供と遊ぶのが好きだった。
しかし、午後に行く日本人学校はちょっと様子が違っていた。
子供たちは親の職業別に集まるように感じられた。
さらに親の社会的地位? いやもしろ、職業の社会的評価によって
”暗黙”の階段みたいなものがあった。
ある日の授業参観の後、純平は彼の感じたことをおかあさんに
言った。
商社マンって外交官より下・・・・ !?
純平のおかあさんは商社内の夫の上下関係、さらに高官なんかへの気遣いで
ウンザリしていた。
「ボク、あまり好きじゃない」
と純平はボソっと言ったのだけど、
純平のおかあさんは「おかあさんもよ」とクリアな声で答えた。
そして美しい細いマユを寄せて、唇をギュっと結んで行ってしまった。
純平が学校を休んだ日、ハルさんは客足の途絶えた店で
ショーウインドーの同じところを磨きながら
頭の中はせわしく働いていた。
チリチリチリと店の戸が開いた。
「いらっしゃいませ」とハルさんは言いながら
「どなただったかしら?」と思っていた。
その夫人は菓子パンの陳列棚を覗き込みながら
いくつかの菓子パンを選んだ。
「こちら中学校にもお店をお持ちでしょ?
次男が大好きで、上の子も下の子も好きになったのよ。」
「あらまぁ、ありがとうございます。 どのぼっちゃんだったかしら?」
「岡本隆っていうのよ。」
「ああ、岡本君のおかあさんですか? 毎度ありがとうございます。」
ハルさんはチャンスと思ったけれど、結局何もできなかった。
あれが岡本君のおかあさんか?
店の前の電線でチュン太はじっとその夫人をみつめた。
チュン太は電線を飛び移りながらあとについて行った。
途中でチュン太の仲間2羽も参加した。
岡本君の家は大きな庭のあるなかなかの家構えだった。
チュン太は仲間2羽と縁側の側の木で日暮れまで中を観察した。
岡本君の兄も弟も、さらにおとうさんまで日暮れ前に見ることができた。
岡本君のお父さんは運転手つきの車で帰ってきた。
岡本君の兄さんも弟も素直な子供で、格別に問題はない
とチュン太は思った。
岡本君ってどういう子なんだろう??
続