12/14 モアノー探偵事務所 ケンちゃんの友達がいじめに (4)
純平が顔にアザをつくって帰宅した日,
純平は「ぶつけただけだよ。」と説明した。
翌日純平は学校を休んだ。
ケンちゃんは帰り道、純平の家に寄った。
純平の母は二階の階段を手で示し、「後から行くわ。」と言った。
純平はしょげてはいなかった。
なんかサッパリしたという感じだった。
ケンちゃんは何気なく「はい、これ宿題」と数枚のプリントを渡した。
すると純平は「しばらく学校には行かないよ。
母さんもいいって言ってくれたし。」と言った。
ドアが開いて純平の母は2人にサンドイッチとジュースを持ってきた。
「ケンちゃん、学校のほうはどう?」
と机の前の椅子に座りながら言った。
ケンちゃんは純平の顔をチラっと見た。
「あぁ、あぁ、今日は特別になにもありませんでした。」
純平の母: それじゃ、昨日は何かあったのかしら?
ケンちゃんは返事につまり純平に助けを求める視線を送った。
純平がうつむき加減に「まだ何も言っていなんだ」と言った。
「僕が話そうか?」
しばし純平は考えたが、「イヤ、自分で言う。」と言うと
昨日、岡本とせりあったことを一気に言った。
そして「日本ってメンド・・・」とくくった。
その「メンド・・・」に純平の母はスイスにいたときのあの授業参観の
後に純平と会話したことを思い出した。
純平の母は純平をジッと見つめた。
それから立ち上がると、純平をギュっと抱きしめると
「どうにもならないことなんかないわ。 頑張ろ。」と言った。
そして「ケンちゃん、サンドイッチどうぞ。」と部屋を出て行った。
翌日純平の母は学校に行った。
そして校長と担任に会った。
ケンちゃんはハルさんとベンチでおしゃべりをしていた。
ケンちゃんもチュン太とその仲間はハルさんのパンを食べていた。
と、チュン太はパンを食べるのを止め、「チ」と鋭く鳴くと
ベンチ横の木に一斉に飛び移った。
「チュン太!」 ケンちゃんが周囲をキョロキョロした。
そして公園に沿った道を歩いている純平の母をみつけると手を振った。
「おばさん、こっち、こっち」
純平の母はハルさんのパン屋の袋を持っていた。
「お店にいなかった理由はこれね。」と純平の母はハルさんに笑いかけた。
ケンちゃんはやや上を向いて、「チュン太、もう降りて来ていいよ。」と言った。
チュン太は1羽でケンちゃんたちの側に降りて来た。
「おばさん、この子がチュン太。」
「まあ、この子がチュン太ね。 初めまして。 純平から聞いているわ。」
純平の母に
デュセルドルフ時代に見た大通りの白鳥や
休みでパリを訪問したときに
公園で見た鴨の親子が人間の足元で安心して日光浴をしたり、
手の平のパンに群がるスズメたちがフラッシュバックした。
「日本の雀は人に慣れないって聞いたけど・・・」
ケンちゃんが「スズメによるよ。」とニヤっとしてチュン太を見た。
チュン太は「人によるよ。」と思った。
少し気分のよくなった純平の母は
「学校に行ってきたわ。 ハルさん、岡本君のおとうさんってそんなに偉い人なの。」
と問うた。
その日純平の母は校長に会った。
校長は何も知らなかった。
生徒の名前も、顔も、何も・・・・・何も知らなかった。
担任は「岡本君は問題児ではありませんよ。」
と岡本の弁護がら始めた。
そして続けた。
「岡本君のおとうさんはとてもりっぱな方で、学校にも多額の寄付をしてくださるし・・・」
こうして純平の母の疑問はなにひとつとして取り上げられなかったのだ。
ハルさんは
岡本の母方の祖父が立ち上げた高山物産を岡本の父は継いで、
この町では岡本の父はちょっとしたセレブなのだ
と言った。
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