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西宮芸文の『蝶々夫人』

2024年07月21日 23時55分26秒 | プッチーニ
西宮の兵庫県立芸術文化センター、「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2024」は、プッチーニの歌劇『蝶々夫人』でありました。自宅から近いところでオペラが見れるということで、今年も行くことにしました。7月12日から21日まで計8回の公演がダブルキャストで行われました。私は、7月17日の公演、D席を購入できました。D席は6000円。二番目に安い席。3階の最後列の右端でした。安い割には、いい席が入手できてよかったのでありました。

しかし、いつも思うのですが、自分も含めて高齢者が多い。まあ平日のマチネですから、普通の人は仕事してますもんね。それと、この8回の公演、チケットは完売だそう。すごい集客力ですよねえ。毎年の恒例になっていること、佐渡さん人気、比較的安い設定のチケット代、京阪神の地理的なこと、などなどいろんな理由があるんでしょう。毎年、こんな形でオペラを見ることができるのは、ほんとうにありがたいことですよねえ。

まあ、そんなことで三宮で昼を食べて、いそいそと出掛けました。蝶々さんは迫田美帆、スズキは林美智子、ピンカートンにマリオ・ロハス、シャープレスはエドワード・パークス、コローは清原邦仁、ヤマドリに晴雅彦、ホンゾに斉木健詞、ケイト・ピンカートンはキャロリン・スプルール。佐渡裕指揮芸文センター管とひょうごプロデュースオペラ合唱団であります。ちなみにもう一方のキャストは、蝶々さんには高野百合恵でした。そして演出は栗山昌良でした。

そんなこんなで、蝶々夫人です。まずは演出。例えば有名なポネルの演出は、それらしくはしているのですが、たいそう不気味な蝶々さんでした。欧米人による演出では致し方ないとして、今回の栗山さんの演出は、実に日本人らしい、日本人そのものを、細部の所作までうまく描いてました。日本人ではないとこうはいかない。それで、この日本人による日本人のオペラとして、まったく違和感を感じることなく、鑑賞することができたのでありました。

それで、第一幕の結婚の場面で、蝶々夫人の登場からうるうるし出しました。第二幕以降は健気な蝶々さん、支えるスズキ、優しいシャープレスの三様が織りなす模様が、プッチーニの大甘の旋律などをバックに心に染み込む。それに子どもが加わると、もういけません。そして、このオペラはこんなによかったんだ、と思うことしきり。妙に日本の旋律が出て来たり、たいそうな音楽だ、とかプッチーニの中でもそれほどとは思わなかったのですが、反省することしきりでした。

まず、佐渡さんと芸文管ですが、このオケいつも硬さを感じるんですが、今回はプッチーニの甘い音楽ということもあってか、それほど感じなかった。もっと振り幅の大きな演奏でもよかったようにも感じましたが、まあ少々押さえてということ。歌手への心配りも随所の感じられるような熱演でもありました。やはり佐渡さんの指揮になると、みなさん気合が入るんでしょうねえ。プッチーニの魅力的な旋律が鳴り響いていました。

そして歌手ですが、まず迫田さん、初めて聴きましたが、非常に安定感があり輪郭がはっきりした歌唱を聴かせてくれました。たいそう落ち着きがあり、理性的な印象を受けました。もっと絶叫型でもとも思いましたが、これくらいがちょうどいいのですよね。ほぼ出ずっぱりの役ですが、最後まで熱唱でした。スズキの林さん。私はスズキがけっこうお気に入りで、ルードヴィッヒやコッソットなどはよかったですよねえ。林さん、迫田さんを支える甲斐甲斐しさ中で、日本的な従者の有り様を踏まえた、実に立派な歌唱でした。また。シャープレスのパークスさん、役柄が滲み出るような優しく思いやりのある領事さんは、とても気持ちが暖かくなる歌声でしたねえ。あと、ゴローの清原さんもよかったですねえ。子役もかわいらしかったです。

第二幕が始まってしばらくしての「ある晴れた日」のときに、ずっと咳をされ止まらなくなった人がいました。まあ、なんでこのときによりによって…、と思ったのですが…。ご本人さんもつらかったでしょうねえ。いやはや、たいへんでありました。カーテンコールでは、観客のみなさんも大満足の表情でした。

それで、来年はワーグナーの「さまよえるオランダ人」だそうです。新国立でも1月にこのオペラ…。楽しみでありますね。
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