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ビーチャムとロス・アンヘレスの「ラ・ボエーム」

2025年01月19日 23時57分00秒 | プッチーニ
阪神淡路大震災から30年を迎えました。今年は、毎年行っている1.17つどいの会場設営のボランティアに行けないな、と思っていたのですが、当日になると、引き寄せられるように会場に行った私でした。30年ということもあってか、ボランティアの数はここ数年の何倍か、でした。加えて、前日から天皇皇后両陛下が神戸に来られ、私の勤務地の近くにも来られるということで、一度ご尊顔を拝し奉りたい、と思ったのですが…。残念でありました。とにもかくにも、30年でありました。

まあ、そんなことで今回は、プッチーニの歌劇『ラ・ボエーム』であります。年末に、井上道義さんの引退公演をテレビで放映していたので、みました。いろいろと趣向が凝らされていましだ。まだVHSビデオの時代、たしかシドニーの歌劇場の公演で、若い主役ふたりがとてもいい(時に視覚的に)ボエームがお気に入りで、今から思うと劣悪な画質で見ていました。そのビデオもVHSの時代の終わりともに、行方不明になりました。出演者もまったく憶えていません。

このボエーム、私的にはテバルディのものが一番のお気に入りでいた。このブロクでも、フレーニやカラスを取り上げ、トスカニーニやバーンスタイン盤も言及しました。もはや新しい録音も出ないだろう中、それほど聴くことがなかったんですが、過日、いつもの梅田の中古やさんで、見つけた名盤であります。それはトーマス・ビーチャム指揮RCAビクター管による1956年3-4月、ニューヨークのマンハッタン・センターでの録音。モノラルです。

ユッシ・ビョルリンク(ロドルフォ)、ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス(ミミ)、ロバート・メリル(マルチェルロ)ルチーネ・アマーラ(ムゼッタ)ジョルジョ・トッツィ(コッリーネ)他であります。ミミのロス・アンヘレスは、かつて幼少の砌、初めて聴いたソプラノ歌手でした。たいそう懐かしいです。カルメンなどよく聴きましたね。RCAビクター管はメットのオケのことだそうです。モノラル録音ですが、それがまったく気にならないいい音であります。

しかし、この演奏はいいですねえ。まず、ビーチャム。非常に生気あふれる活気のある演奏。馬場面場面の様子が手に取るようにわかる、写実的であり、またそれぞれの歌手の歌唱に寄り添うように、ていねいかつたいそうな共感をもっての演奏になっております。歌手以上に雄弁にこのオペラを演奏しています。各幕の聴かせどころを、その特徴を存分に把握して、盛り上げてくれます。こんなにビーチャムって、オペラの演奏が上手かったんだと驚いてしまうほどであります。歌手のみなさんも、ビーチャムの巧みな指揮に助けてもらっているところも多いかと思います。最後のミミが亡くなって周囲の慟哭、その背後でのビーチャムも歌手以上にオケを泣かしてくれていますねえ。見事であります。

歌手のみなさんですが、けっこう時代かかった歌声なんですが、古き良き時代の素晴らしい歌唱が聴けます。まず、ロドルフォの友人たち、第一幕の主役ふたりの登場前の場面、とても若者らしい活気があふれています。演奏によってはあまりおもしろくないのですが、この演奏では彼らに共感をもって接することができるのであります。ビョルリンクもたいそう生真面目な印象のロドルフォです。美声を精一杯発揮して、これはこれでとても満足感いっぱいでありした。ムゼッタのアマーラも、第二幕では元気よく、たのしく聴くことができました。

やはり、ロス・アンヘレスのミミがとてもよい。情感たっぷりのミミであります。決して力業ではなく、冷静で落ち着いた歌唱に終始しています。その中で場面場面での表現や表情は深いですねえ。第一幕の名乗りのアリアもいいし、第3幕の告別の場面も涙を誘います。そして最もこころに染み込むのが第四幕の死までのミミなんです。これはとても上手い。悲しみが表現されたり、慟哭的になることもない。物静かに切々と歌う。穏やかでありますが、死の床のミミを深く表現しているのには、驚かされましたし、感動的でありました。こんなミミは、ここでしか聴けないと思うのでありました。

しかし、一方で南海トラフの巨大地震も何時起こってもおかしくない状況だそうです。ああ、そうなるんでしょうねえ。まったく。
(EMI CDCB47285 1986年 輸入盤)

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