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カラヤン、もうひとつの『トスカ』

2024年04月21日 23時57分00秒 | プッチーニ
先週末、奈良博の『空海』を見に奈良に行きました。ついでに秋篠寺にも寄りました。新緑がきれいで、桜も終わって青もみじの時期ですねえ。興福寺五重塔も修理がはじまり、次は覆屋で見れなくなる。復活するのは何時でしょうねえ。しかし、奈良公園、外国人だらけ、でした。空海は、やはり巨人。何に焦点を当てるかで、なかなか難しいなあ、と思いつつ、書などが多かったですかねえ。春というよりも、もう初夏ですねえ。季節はどんどん変わっていますね。

さてさて、今回はプッチーニ。歌劇『トスカ』であります。 しかし、プッチーニは久々。2017年に同じく『トスカ』を取り上げて以来。もう6年も前になります。まあ、おそらくはそれからそんなに聴いてない、と思います(笑)。今回、梅田の中古やさんで見つけたCDであります。最近、中古やさんでは主にオペラを物色しております。値段は、高いのは高いのですが、全般的に値崩れが顕著な気もします。これは嬉しいことですねえ。

それで『トスカ』ですが、演奏は、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮VPO。レオンテイン・プライス、ジュゼッペ・ディ・ステファノ、ジュゼッペ・ダッディの主役三人。1962年9月ウィーンでの録音。カラヤンは1964年までウィーン国立歌劇場の音楽監督でしたので、VPOとの録音になったんでしょうねえ。このCDはデッカ盤で、ジョン・カルショウのプロデューズということですが、カルショウとカラヤンの組合せというのも貴重なんでしょうね。

そう言えば、デッカにカラヤンはいくつかのオペラを録音しています。『ボエーム』『蝶々夫人』『アイーダ』『ボリス・ゴドノフ』『フィガロの結婚』『オテロ』などですが、『ボエーム』のBPO以外は全部VPOとの録音です。まあVPOがデッカ専属だったことからでしょうが。ただ、DGに1981年に録音した『トゥーランドット』もVPO。後にリッチャレルリとの『トスカ』の再録音ではBPOですが、プッチーニの五録音中、VPOを三回も起用しているんですねえ。

それはそれとして、このトスカ、カラヤンとVPOがとてもいい。VPOはとてつもない美音でカラヤンの意図する演奏に十二分に応えている、というかこのカラヤンの演奏は、VPOであってこそ実現したとも思えるような、見事な演奏ですねえ。まだ、このころは戦前から名手もたくさん居られたんですかねえ。とにかく、弦も、金管木管も実に甘美でもあり、豪快かつ繊細であります。このころもVPOはすごいですねえ、今もですが…。

そして、カラヤンですが、カラヤンのオペラ演奏ってけっこう微妙なんですねえ。でも、プッチーニの前述の4作は、どれも名盤です。その中でもこの『トスカ』は、これほどその場面に応じた表情、そして心情に寄り添う表現、ダイナミックで豪快さと陶酔感、こんな演奏はなかなか聴けないですよねえ。全曲を通じて、プッチーニの音楽っていいよなあ、と最も思わせてくれる。それぞれの場面がいくつも、何回も頭の中で繰り返されるのでありました。ほんとにいいなあ。

加えて歌手ですが、ステファノは甘い歌声に酔うようで気持ちがいいです。多少苦悩が欲しいようですねえ。でも、美声はとてもよく通り、これぞイタリア・オペラですね。また、プライスは安定した歌唱で、切々とトスカの苦悩を歌い上げています。少々声が小さめの感じがしなくはないですが、その他は理想的なトスカですよねえ。そして、ダッディが最も注目すべきですね。このスカルピアは、聴けば聴くほど、悪さと怖さが感じられます。凄味のある歌唱はとても役にはまっていきますねえ。さすがの存在感であります。そして、どの場面もカラヤンとVPOが非常にうまくサポートして、歌唱と管弦楽がうまく合わさって、入魂のオペラとなっています。ただ、カラヤンが仕切っているために歌手の歌唱をいろいろ制限や統制しているということもあるやに思いますが、私は、このカラヤンと歌手は非常に合致して、素晴らしいオペラとなっていると確信しております。

先述の『空海』展の前に、秋篠寺に立ち寄りました。本堂の有名な伎芸天、よかったんですが、何だかもっと仏像があったような…。そう言えば奈良博の常設展には、伎芸天とよく似た造りの秋篠寺の梵天と救脱菩薩があります。これらは秋篠寺で見たことがあったような、なかったような、そんなことを思いつつでありました。
(DECCA POCL-6031/2 1999年 DECCA Legends)

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