時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

チャベス大統領について

2013-04-08 22:53:59 | リビア・ウクライナ・南米・中東
チャベス大統領の遺体が冷凍保存されるというニュースを見た。

見ていて吐き気を催した。

チャベスにではない。
マスコミの偏向報道にだ。



ベネズエラは中東と同じく世界最大級の産出国である。
にも関わらず、チャベス政権の前は、ほとんどの石油を外資企業に牛耳られ、
国民の半数は1日2ドル(大体200円)以下で暮らしていた。

そこに現れたのがチャベスであり、彼は選挙で大統領に選ばれた後、
IMFに借金を返済し、製鉄業や電信事業も買戻し国有化し、
石油利潤を貧民層に再分配、南米一の医療大国キューバからの人的援助で
貧民街には無料の診療所が多数もうけられ、無料の市民食堂や学校が作られた。
失業者のための職業教育や住民の自発的な起業や創業のサポートも行った。

政権前のベネズエラの識字率は40%だったが、
政権後は95.5%にまで上昇した(この数値は日本よりも上だ)。

2002年にはCIAと結託した富裕者層や軍部が
クーデターを起こしたが、数十万の市民がチャベスを
守ろうと蜂起し、失敗した。選挙による社会主義国家を
築いたという点では、かつてのソ連や中国とは全く異なる。
(ちなみにキューバも直接民主制や選挙制度を採用している)


これが社会主義国ベネズエラである。

ベネズエラに限らないが、社会主義国が
どうして共産化するかというと、国際経済の下で
犠牲を強いられているからに他ならない。

だから、共産主義が本当に嫌いならば、
第3諸国に犠牲を強いるシステムをぶっ壊さなくては
いけないのだけれど、なぜか反共主義者はそれを提唱しない。

代わりに打ち出すのが共産主義国は異常なんだーという
いつものイメージ大作戦で、前述のニュースでも、
レーニンや毛沢東や金成日の写真を画面に並べて、
「社会主義国は歴史的に個人崇拝をする!」と喧伝していた。

じゃー、大日本帝国時代の大ボスを無罪にしたあげく、
国家のシンボルに仕立て上げ、死んでからも崇拝し、
アジアの人間を大量虐殺した連中を神として
祭っているどこぞのアホ国家はどうなんだよ。

そもそもレーニンは個人崇拝を嫌っていたし、
これはカストロやホー・チ・ミンなど、ほとんどの「独裁者」もそうである。
そこに共産主義国だからとか資本主義国だからとかは関係ない。

それなのにどうして、毛沢東や金成日と同列にして扱うのか?

共産主義国家=独裁=恐怖政治=個人崇拝というレッテルを
貼り付ける日本のメディアのほうがよっぽど宗教くさいじゃないか。
(靖国は実際、宗教の建造物だし)


イラン、リビア、ベネズエラ。
これらの国家はどれも石油資源が豊富にあり、本来ならもっと
豊かな国になれるはずだったが、戦後の国際システム下で
苦渋を味わってきた。そこで革命を起こして自国の利益を
守り、社会を向上させてきたのだが、その代償として
悪の枢軸として侮蔑されることになった。

核にせよなんにせよ、今の世界のシステムは
国連(欧米・中国・ロシアなどの大国)によって構築され、
そこでは「強いられた平和」が展開される。

むろん、これは大国の都合によって行われているのであり、
ヒッグス湾事件やイラク戦争、ユーゴ紛争、リビア空爆、
そして現在進行形のシリア転覆へのテロ援助や北朝鮮制裁を
見れば一目瞭然のように、大国の都合で簡単に覆される平和だ。

こういう偽ものの平和から本物の平和へと変えていかなければ
第2第3のチャベスが生まれてくるだろう。