時事解説「ディストピア」

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最近読んだ糞本

2013-04-13 21:23:19 | 浅学なる道(コラム)
いわゆる嘘八百のでたらめを書いたものではないが、
これはどうよとツッコミを入れたくなる本。


『民主主義の未来』(阪急コミュニケーション)

民主主義化はすべて善と信じて安住していれば、
権力と市民生活のモラルは腐敗していく。
民主政治の限界と理想はどこにあるのか。

・・・と銘打っておきながら、「ピノチェトのおかげで
チリの社会主義独裁政権は打破された」と礼賛していた。

あのさー、アジェンデは選挙で選ばれたけれど、
ピノチェトはCIAと結託して軍を動かして独裁を敷いた
んだぜ?

どう考えたってピノチェトのほうが野蛮極まりないじゃないか。

ピノチェトのクーデターと独裁はOKで、アジェンデ政権はNOって、
まんま韓国のパク・チョンヒは良い奴で北朝鮮のキム・イルソンは
悪党という今の朝日新聞の良識ぶった小賢しい論調と一緒だよ。
どっちも独裁者、特にパク・チョンヒなんて日本に避難していた
キム・デジュンを拉致した奴なんだから、両方、責めろよそこは。
(そもそもアジェンデ政権は独裁なんかじゃない)


『デモクラシーの世界史』

生物兵器があると言いがかりをつけて始めたイラク戦争を
全面的に支持した政治学者、猪口孝様がご翻訳あそばれた名著。

北岡伸一といい、こいつといい、どうして政治学者って
アフガンやイラク戦争を支持してしまうんだろうか……と考えると
欧米流の政治学が主流になっていることが根本的な原因だと思う。

この本もデモクラシーの限界に多少は言及しながらも、
結局は現状における最も理想的な制度として位置付けている。

ところが、民主制というのは欧米が発端となったもので、
今現在の民主化とは日本を見ればわかるように、近代化である。

そういう異文化で発祥した政治制度を強制することが
どれだけヤバいかというのは、ポール・コリアーの
『民主主義がアフリカ経済を殺す』などで明らかとなっている。

猪口大先生は、この本はデモクラシーを絶賛していないよと
わざわざ注意を促しているが、個人的にはどうもなーと思った。

ポスト・コロニアリズムというのが哲学の分野で既に確立されているが、
植民地側の視点に立つという態度は政治学では傍流なんじゃないだろうか?

上の本は決してウソ本ではないけれど、西洋の価値観で語る政治学は
客観的な記述のようで、多分に主観的ではないかと思った。