「おみやげは・・・。」
そんなメッセージを息子に入れている男。
名を松井達男という。
彼はある商社に勤務していて、現在は福岡に出張する予定で
羽田で飛行機を待っている。
その時、液晶ないしはledのディスプレイで
「猛き黄金の国鳥居信治郎、ついにドラマックスで放映開始。」
とある。
達男が福岡に立つ一ヶ月前に、別のチャンネルで一年に及ぶ放映を
終えた人気ドラマである。
サントリーの創始者である男をドラマチックに描ききったと、
言われるドラマで見たこともない達男とて存在を知っている。
その後目にしていたディスプレイでは
「ヒストリーチャンネル、英雄たちの決断竹鶴政孝、妻と共に
サントリーに戦いを挑んだ男。」
という番宣。
なるほどと達男は思った。
両枠で上野駅周辺地方を舞台にしたドラマをやったと思ったら、
ヒストリーなんとかでは下町にはない蒲田の英雄たちの決断
というエピソードをやっていた。
何かに引き寄せられているのだろうか。
凡人の頭しかない達男には思いつかない。
ふと思うのだけれども、鳥居信治郎が主人公のドラマって
漫画原作だ。何か同じ題名で三菱の岩崎弥太郎の物語を
違う人がやっていて、その中で渋沢栄一が登場したような気がする。
もしかしたら、ドラマのスタッフも漫画の原作者も
鳥居信治郎に岩崎弥太郎をなぞらえているのだろうか。
「xx航空765便、福岡行き搭乗口は・・。」
アナウンスが聞こえた。
達男は飛行機のりばに滑るように消えていく。
つづく
そんなメッセージを息子に入れている男。
名を松井達男という。
彼はある商社に勤務していて、現在は福岡に出張する予定で
羽田で飛行機を待っている。
その時、液晶ないしはledのディスプレイで
「猛き黄金の国鳥居信治郎、ついにドラマックスで放映開始。」
とある。
達男が福岡に立つ一ヶ月前に、別のチャンネルで一年に及ぶ放映を
終えた人気ドラマである。
サントリーの創始者である男をドラマチックに描ききったと、
言われるドラマで見たこともない達男とて存在を知っている。
その後目にしていたディスプレイでは
「ヒストリーチャンネル、英雄たちの決断竹鶴政孝、妻と共に
サントリーに戦いを挑んだ男。」
という番宣。
なるほどと達男は思った。
両枠で上野駅周辺地方を舞台にしたドラマをやったと思ったら、
ヒストリーなんとかでは下町にはない蒲田の英雄たちの決断
というエピソードをやっていた。
何かに引き寄せられているのだろうか。
凡人の頭しかない達男には思いつかない。
ふと思うのだけれども、鳥居信治郎が主人公のドラマって
漫画原作だ。何か同じ題名で三菱の岩崎弥太郎の物語を
違う人がやっていて、その中で渋沢栄一が登場したような気がする。
もしかしたら、ドラマのスタッフも漫画の原作者も
鳥居信治郎に岩崎弥太郎をなぞらえているのだろうか。
「xx航空765便、福岡行き搭乗口は・・。」
アナウンスが聞こえた。
達男は飛行機のりばに滑るように消えていく。
つづく