六根清浄、お山は晴天。 登って下って、どっこいしょ。

たまに書く、時々入力、気が向いたら、したためる。駄文満載、阪神裕平ことおやじぃ雅のアウトドア雑記帳。

冒頭の文句だけは知っている、 あの恋愛小説の舞台にて

2023-06-16 23:59:41 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
ちょっと道草、回り道。寄り道をして山歩き
たかを括って
国境の長いトンネルを抜けると 
                         
【大峯百番観音・越後湯沢駅~山の湯~
    湯沢高原スキー場~NASPスキーガーデン~
     秋葉山~越後湯沢駅/新潟県】

G.Wに新潟へと出かける用事ができた。
だったら用事の前にひと登り、
途中下車して、以前から気になっていた
山道を歩くことにした。

山道の名は「大峯百番観音」。
場所は新幹線・上越線の「越後湯沢」駅を
囲む感じ、列車の進行方向でいえば、
新潟方面に向かって左半分となる部分で、
道中には西国、秩父、坂東の観音様のオンパレード。
拝んで歩けば、さぞやご利益も
あるのではと思わせる、ありがたきルートである。

さらに
この大峯百番観音には
ある恋愛小説の生まれるきっかけとなったという
エピソードもある。

何でも大峯百番観音が完成したのが昭和9年。
完成当時はお祝いの大宴会が催され、
周囲の芸妓は皆宴会の席に出勤中。

そんな折、宿のお客のひとりが芸妓を所望した。
さあ困った、仕方がないので見習い・半玉で対応したところ、
これが大正解。お客はことのほか喜び、
この半玉をモデルに小説を書き上げた。

この客こそ、後にノーベル賞も受賞した
あの文豪。そして書き上げた小説が
「国境の長い~」と、
誰もがご存じのフレーズで始まる
「雪国」だった。

へぇ、そうなのでのある。
ただ、ここで心に引っかかったのは、
信心でも、文豪、半玉でも、雪国という作品でもなく
大峯百番観音のこと。

つまり街をあげて、そこまで盛大な祝いをした割には
知名度低しという点だった。

これまで越後湯沢には、かなりの頻度でお邪魔をしてはいるが、
大峯百番観音の名を聞いた記憶はない。

果たして今は、どうなっているのかと好奇心がわいて、
いつか出かけてみようかなと思っていた次第である。

調べてみると、やはり歩く人はごく僅か。
時代の流れの中で、
人々の記憶からも消えかけていた存在だったらしいが、
近年再整備がなされたという。

地図を見ると等高線の間隔は密。これは意外と大変かも、
いやいや急登、急降下のようだが、こちらは巡礼の道でもある。
きっと道は迂回やらあれこれ、楽に歩ける工夫があるのではと、
楽観視、希望的観測を抱いていた。

ところがどっこいである。現実は甘くないのである。
登りは地図の示す通り急であり、
しかも途中にあるのがスキー場。
               

                                   

           
特に今年は疫病による自粛もなく、
人、ひと、人の大賑わいである。

登り口から息を切らし、観音様を拝みつつ
無心で静かに歩いてきたものの、
日頃は煩悩まみれの身。
このにぎわいは見過ごせない。

さっそく出店ウォッチングほかで、
事前に計画したコースタイム無視の
大休止となる。

いかん、今日は巡礼チックな山の旅。
まだ先も長いぞと、心を鬼にというのか、
後ろ髪を引かれつつが適切か、
とにかく前へ、再び歩き出す。

が、おっとルートを誤った、
大峰をめざすはずが、
少しオフコースしてしまった。

であるが、進むべき方角は
間違ってはいないので、
そのまま進み、後半戦へ。
           
まだ冬の雪対策の名残りか、
黒い覆いのある観音様も
いらっしゃるが、出会えば合掌、
あらためて無言の行ではないが、
口を結んで沈黙の山歩き、
アゲインである。

今度は下り、こちらも急降下。
観音様の前ではとにかくストップ、
立ち止まり、
この先、転けませんようにと
お願いする始末だ。

そうこうしているうちに
またしてもスキー場に出くわす。
こちらも家族連れなどで
大盛況である。

今度は小休止、そそくさと後にして、
最後の登り、秋葉山をめざす。
                   
その後も合掌、プラス唱える定番の文句、
ひと言を存じ上げないので黙礼を
繰り返しつつ、再び越後湯沢に駅へ。

朝、7時半過ぎに出発して、現在12時30分。
途中で大・大休止や、ショットカットはあったものの、
舐めてかかるとしっぺ返しありの
大峯百番観音は無事に、ほぼ完歩と相なった。

ようし、とりあえず気になっていた
山道は歩いた。

ならば、せっかくなので
ついでに「国境の長いトンネル」の続きも。
東京に戻ったら、今度は活字の海で、
泳いでみるとしますかな。
                       

〜2023(令和5)年5月4日(木)にトボトボ。
  ん、そういえば、道中は誰にも会わなかった。
    アップダウンは大変だが、駅前ながら静かな歩きを楽し‥、
      いや苦しむか、とにかく歩く〜

せっかくなので、歩きますかな、残りもう2駅分

2023-01-12 02:34:46 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
登る前に
お会いした二人のレディより
パワー、頂戴いたしました
             
【上条~入広瀬~大白川/新潟県】

どえらき降雨で、断念した夏の守門岳山行。
ご縁があればまたあらためてと思っていたら、
秋のある日に出かけることができ、
無事にピークにもお邪魔することができた。

そこで山の記録を残すかと
パソコンに向かったが
山の話は、ほかでもいろいろありそうなので、
少し趣向を変えて。

今回は途中で出会った
インパクトある御仁について書いてみようと思う。

実は今回の計画では、垂直に登る前に水平もと、
只見線の駅、2駅間を歩くこともプラスしてみた。

理由は、前回訪れた際に登れないので、仕方なしと
只見線の3つの駅の間を歩いたが、これが
意外と面白かった。そこで引き続きである。

コースは登山口の最寄りとなる「大白川」駅まで、
夏は「越後須原」駅までだったので、
残りの2つの駅間、
「上条」と」「入広瀬」を歩くことにした。

只見線の沿線に、人気、有名、話題のスポットは
見当たらない。

コスパだ、タムパだ何度という人には、歩いたところで
時間の無駄と一刀両断、切り捨て御免のエリアだろう。

しかし、そんな一見空費なような時間の使い方が
闇雲に忙しく、何でも費用効果や
ものごとに即決が求められる現代においては
逆に貴重で、得難い経験でもあるような気もする。

例えば今からしたためる2駅間の歩き旅では、
パワー溢れる淑女にお会いすることができた。
それもお二人。どちらもシルバーエイジの女性だが
ともすれば意気消沈、うつむき加減となりそうな心を、
パッと前向き、元気へとチェンジしてくれそうな
雰囲気を持ったレディである。

お一方は「入広瀬」駅の周辺で。

上条駅から歩き出し、途中に守門温泉、廃隧道や
道の駅、その裏にある城跡を巡ってと、
ひとり遊びを楽しんだ後に
到着したのが上条の次、入広瀬の駅。
    

     

    
ここでも週末だというのに、
観光客、というかあまり人には
出くわさない。
                                     

        
かわって、只見線に愛想をふりまく
カカシたちがお出迎えとなった。

では先にと歩き出してすぐ、
目に止まったのが、玄関に「松風」という
名称の入りの暖簾がかかった古民家。
       
ここは何だろうと、のぞいていると
呼び鈴があったので、
そっと押して「ごめんください」と、
声をかけてみた。

するとクイックレスポンスである。
奥から、まあ張りのある
まさに、はつらつとした
返答があり、人がやってくる気配だ。

声の主は女性、お歳はレディに聞くのは
失礼なので憶測だが、多分70代か。

とりあえず、ここは民宿か何かと
クエスチョン。アンサーは、
完全予約制レストランとのこと。
昨年開業して今日にいたっているそうだ。

では今度は客として来ますと申せば、
「ぜひおこしを。お持ちしています」と
これまた力強い響きの声で、ひと言いただいた。

女性と別れて、愛用タブレットで
インターネットで検索してみると
女性は浅井さんといい、お歳は76歳。

開業の動機は、地元・地域が元気になればと
一念発起したそうで、とても俗にいう
老いてくるとありがちな
たそがれ、しょぼくれ感は微塵も感じない。

自身も決して若くはなく、
時にもう歳だしと弱音が口からポロリだが、
ここで大いに反省。

でしゃばるわけではないが、
それなりの力でひと踏ん張りも
必要だなと思えてきた。

さらに歩く。入広瀬から大白川までは
本当に何もない。ただただ、ひたすら道歩きだ。
途中にはかつて「柿ノ木」という駅も
あったそうだが、今は全く痕跡なし。

さらに歩く。ようやく大白川の駅が、
只見線では大きな部類の駅舎が見えてきた。
やれやれである。
             
  
大白川駅の駅舎の2階部分は、
週末と祝日のみ営業のそば屋となっている。
上手いとの評判もあり、今日も駅舎前は
そば店利用者の車がびっしり。

その光景は、鉄道の駅でありながら、
ここは道の駅かと見まごうばかりだ。
この駅舎の前で出会ったのが
もう一人のレディ。

彼女は地元の農家の方で、
あれこれ手作り野菜を広げて、
販売中だった。

人だかりにつられて、
あれこれ眺めているうちに、
言葉は悪いが、いかん逃げ遅れただ。

気がつくと自分以外にお客はゼロ。
これは気まずい、小心者ゆえに
何も買わずに立ち去る勇気もない。

ちょうど手頃なプライスの
枝豆ほかがあったので、よしこれ買ったとなる。

お金を払って、しばし彼女とも
「売り上げは‥」などと
おしゃべりタイムとなる。

あまり長話は商売の邪魔になるかと、
ではそろそろと、なったところで
彼女から大サービスだ。

よかったらまだ食べるのには
ちょっと早いがと、アケビをいただいた。

しかも「いいよ、持てるだけ、
好きなだけ、どうぞ」。
気前もいいのである。

遠慮せず、たっぷり頂戴し
ザックに詰め込み、さて今宵の宿まで
歩くか。いやその前にいただいたアケビを
ひとつ口にしてみる。

味は彼女のいう通り、
本当の美味を味わえるのは
もう少し先のようだ。ではあるが、
久方ぶりに食べたアケビは、
ほんのり甘かった。

食べながら振り返ると、
彼女はひと休みと、紫煙をくゆらしていた。
これがまた、実に美味しそうで、
超クールな佇まい。

禁煙全盛の時代ではあるが、
タバコだって、お酒などと同様に
過度は慎むべき嗜好品の一種。
彼女のように格好よく、適度に嗜むのであれば
そうめくじら立てる問題ではないような気もするが
どんなもんだろうか。

レストランを開業したレディ、
駅舎前で手作り野菜を販売するレディ、
お二人の醸し出す雰囲気は、
お笑い芸人の芸名ではないが
「とにかく明るい」である。

高齢化社会での弊害のひとつに
「怒り、すぐ怒る」がある。さらに最近は
「俺の意見が一番で、ほかは論外」という輩も
少なくない。

よって世の中は、
どこか殺伐としているが、
明るさなしでは、
幸運だってソッポである。

ほんの短い時間ながらも
二人のレディから、あらためて
明るさ、元気さの大切さを
学ぶことができました。

後は、東京に帰ってから
実践あるのみ。
眉間の皺より、口角上げて。
さあ、ジィさんには
できるかなである。


歩いた翌日は大白川からピストンで守門岳へ。

無事に下山して、東京に戻る列車の
乗り換えで下車した小出の駅で
ゴミを捨てようとしたら、アケビがひと枝分
ザックの底に残っていたので、思わずガブリ。

甘みが気持ち増しているような気がした。
            

〜2022(令和4)年11月のある週末、雪の便りが届く前にと、
  ジィさん、沿線を歩いて、人に出会って、山に登って、帰京したとさ。
    はい、お疲れ様〜

その日、悪天につき

2022-10-19 23:39:59 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
頂は、また次なる機会に
いただくといたしましょうか
     
【只見線沿線トボトボ「越後広瀬駅」~「魚沼田中駅」~
「越後須原駅」/新潟県】

掃除用具の高圧洗浄機で
取り除かれる各種汚れは
きっとこんな気分なんだろうな。

しのつく雨に、前進も後退もできず、
その場でフリーズ、立ち往生しながら
ぼんやりとそんなことを思っていた。

今、ものすごい勢いで雨が降っている。

予定は、只見線の大白川駅から
守門岳の頂をピストンだった。
しかし天気予報をチェックすると、
今日は悪天、終日大雨。
乗り換え駅である小出駅でも
かなりの雨模様だ。

さてどうするか、無理は禁物である。
若い時分は、技術に知識なしを
体力で補っていたが、じいさんとなれば、
頼みの体力もなしである。

ましてや単独行、俺は大丈夫と、
高をくくっての行動は、
百害あって一利もなし。

よし、ここは雨天順延だ。

急きょ山の予定は平地に変更、
この機会に周辺を散策してみることにする。
スタートは、こんなこともなければ
多分降りることもなしの駅からとしますかな。

そして散々迷った挙句に決めたのが
始まりは只見線「越後須原駅」。
まずは秋になったら再訪してみようか、
そんな花の園・コスモス園をお邪魔する。


この時点で天気は曇。
あれ、これなら予定通りに
登山すればよかったか。

しかし登らずに正解、とりあえずは
長年山やアウトドアと付き合ったせいで
身についた“山カン”は、現在も一応正常に
作動中のようで、途中から雨、
これでもかと降ってきた。

大変な事態ではあるが、
本人は案外冷静というのか、
阿呆なのか、しばらくは先にも書いた
高圧洗浄機で洗い流される
汚れ気分にひたっていた。

しかし、それも限界、そろそろ何とかせねば
足元すくわれ、川にでも流されて、土左衛門である。

すると前方に「ものずき村」なる施設の看板を発見した。
それでは、急いで逃げ込め、ものずき村へ。

屋根があり、雨がしのげる場所へと足を動かすが、
雨脚はそれ以上。
微速にして牛歩だが、とにかく動けだ。

ものずき村は、地元・新潟魚沼の絶品なる
山や里の幸を販売する施設だった。
また併設された飲食店「そば処 げんたん」は、
その名の通りそば、そして天ぷらのお店らしい。

タブレットで調べてみると、飲食店は評判の店らしく
普通なら、かなりの待ち時間あり、
行列のできるグルメスポットのようだが、
本日は雨で人もまばら。
そこでランチはそば&天ぷら、食事をしながら
しばらく天気の状態を様子見することにする。

雨はますます勢い良く、おまけに食べる施設は
ビニールハウス風なので、雨が屋根にぶつかると、
まさに爆音。とにかくけたたましい。
    
  
 
これからは、さてさてどうしようか。
おとなしく東京へ帰るか、いやもう少し待ってみるかと、
お店の方のご好意もあり、食後も店内に長居をしていると
ようやく雨のパワーもダウン、弱くなってきた。

時間も午後とはいえ、平地ならまだ普通の活動時間である。
では、もう少し先へ歩こうかだ。

出発の用意をしていたら、お店の方が、只見線以外にも
バスもあるからと手書きのバスの時刻表を渡してくれた。

ありがとうございます、多謝に感謝、最敬礼して、
次の駅「越後須原駅」をめざしてみることにする。

目的はお住まい拝見、駅前他に
かつての地元で指導者的な
農家の建物が二軒あり、こちらの見学だ。

一軒目は庄屋様級のお方お住まい。近いのかと思いきや、
これが随分と上へ上へで、急勾配の道を大汗かいて、
息を切らして、ようやく着。ちょいと休ませていただく。
    
お次は駅前の庄屋様でもある豪農の館。
道も今度は駅まで下りオンリー、
よって歩きも快調、おっ雨も上がったようだ。

豪農の館、ついでに創業は豪農の館の主という酒蔵も見て、
タイムオーバー、そろそろ帰京の時間。
只見線の列車が駅にやって来る時間だ。
それでは本日の行動はこれにてと、駅へ向かう。
   

            
列車を待つ間、暇なので駅のホームでしばし、
ぼんやりシンキングタイムとなる。

雨のせいで、偶然、いきなり、予定外で歩いた
只見線3駅間。美味しい味に出会ったり、
お店の方にお世話になったり、見事な建築物を拝めたりと、
これはこれで得難い極上の時間を過ごすことができた。

山へ出かける計画も、人生で起こる
あれやらこれやらの出来事と一緒で、
やっぱりご縁ですかな。

ご縁があれば、予定通りの行動ができたり、
今回のような中止、断念があっても、また今度と
あらためて計画をしてアプローチの機会が訪れるもの。

一方、ご縁なしの場合となれば、はいそれまで。
また別の山を選ぶだけ。では予定だった守門岳の頂は。
さてご縁は、どうですかなぁ。

とまあ頭に浮かぶ雑感と遊んではいたが
それにしても遅い。いつまでたっても列車が来ない。
時刻表ではとっくに到着時の時刻、いやかなり過ぎている。

きっと雨のせいだなと、引き続きホームにて
ひとり物思いにふけつつ、
まだかな、いつかな、そろそろ来るかなと列車を待つ。


●ここで、ご教訓のひと言。
山の計画・行動は、無事帰宅となるまで
最後まで気を抜かずに。

その後、只見線は雨の影響で
終日運休という情報を知る。
さあ困ったぞ、そしてその時に思い出したのが、
ものずき村での会話でも登場したバスの存在。

バスの時刻は、いやバス停はいずこ、
じぃさん、大慌てで駅を飛び出したとさ。

●そして、肝に銘じたい四文字熟語
「慎始敬終(しんしけいしゅう)」
~意味:物ごとは始めと終わりが肝心である~
     
~2022(令和4)年8月
期せずして、今秋11年ぶりに
全線が再開通する「只見線」沿線を
雨にビビりながらもブラブラ歩く~


それでも季節は、今年も順番に

2020-11-19 23:02:51 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
かつて経験したことのない
不思議な1年の秋に

只見~蒲生岳(828m)~要害山(705m)~只見【福島県】



「なんて日だ!」。

朝、只見の駅を降り、空を見上げて
開口一番、出た言葉は、お笑い芸人のギャグと
同じだった。

日差しはある、遠くには申し訳程度だが
青空も見える。しかし雨である。

今年は例の「COVID-19(新型コロナウイルス)」の影響で、
春先から、誰もが人生で初となることが続く毎日で、
例年とは全く異なる時間を過ごすことを余儀なくされた。

となると、この狐の嫁入り的、あまりお目にはかかれない天気も
まあ今年らしいのかもしれない。

おっと、ぼんやり思いにふけっている場合ではなかった。
山の行動の基本は、まずは早立ち。それでは
雨具をまとい、いざ最初のお山となる
蒲生岳へと出発する。

蒲生岳は、高さは1000mにも満たない。いわゆる低山だが
「会津のマッターホルン」と呼ばれるだけあり、その姿は個性的。
その存在を知ってから、今度、そのうち、いつか日と、なかなか
登る機会がなかったが、本日ようやくご対面だ。

  

天候は、引き続き薄日はあるが時々雨。
ルートは急峻で岩場多し、スリップ注意で慎重に行動する。
途中も無理せず、一番ポピュラーでユニークな名前の
「鼻毛通し」をチョイスして、めざせピークである。

             

      

登山口から約1時間でピークに着く。
展望は抜群。赤、黄、また枯れた茶に緑などの木々の葉の色、
民家や鉄道の鉄橋など、眼下にはまるで秋のジオラマのような風景が、
本日のへんてこりんな天気も幸いして、一部は黒雲でダーク、
ところどころは太陽の光に照らされて明るめと
絶妙のコントラストつきで広がっていた。



      
   
美しい風景を目に焼きつけたら、では慎重に麓へと。
登ってきた道を、今度は下山路として、一歩一歩、下へ、下界へ。

ホールド、スタンスはしっかりしている、そしてロープに鎖もあり、
普通に歩けば問題なしだが、雨の濡れもある。
ここは落ち着いて確実に。

はい無事に降りました、やれやれと思った矢先、
木の根っこに足を取られて大転倒。何事も最後まで
気を抜くべからずである。

蒲生岳を後に、今度は要害山へ。朝来た道を引き返す。
高校の手前で右折して、ここからは道なりに。
景色を見ながら、今日ばかりはマスクなし。晩秋の日本・
福島の自然の息吹をたっぷりと吸い込む。振り返ると
再び見事なコントラストの風景の中、
先ほど登った蒲生岳の独特の姿も拝めた。

 

いかん、急に深呼吸をして肺が驚いたようでむせてしまった。
おっと、振り返った際の身体のひねりで腸もびっくりか、
おな…、いや転失気(てんしき)も高らかに放ってしまった。
誰もいないし、まあいいでしょう。

要害山といえば、一説には武田信玄の生誕とされる
お城があった山梨・甲府が有名だが、会津の要害山も
古くはお城ありの場所。現在ピークに周辺は、
テレビの中継塔が林立。昔は外敵、今は電波障害から
地域を守る役目を担っているようだ。

           

テレビの中継塔に隠れ、かなりささやか、小ぶりの
ピーク表示を記念に1枚写真を撮ったら、さあ振り出し、
只見の駅へと下山するのみ。

だが要害山からの下山ルートも、相当な急降下。
かなり気をつけてはいたが、終点の神社の手前で、
また大転けだ。先の蒲生岳での教訓は、いかされずである。

予定通りに只見の駅に戻ることができ、
15時台の列車に乗ることも可能だったが、
ようやく雨も上がった。
特に先を急ぐこともないと、周辺をブラブラして
みることにする。

ただ、飲食店など大方のお店は
疫病蔓延防止のためか臨時休業中で万事休す。
列車も15時の次は18時、さぁてどうする3時間だ。
そして再び口をつくのは
「なんて日だ!」のひと言。

仕方がないので、駅前の土産物店で
ウインドショッピングでもして時間を潰すことにする。
何も買わないのは失礼かと思い、
一品選んでレジへ。店員さんに
この周辺で、何か見どころ、
または見学できるような施設はと尋ねたところ
「温泉ではないけれど、少し歩けば
沸かし湯のお風呂がある」とのこと。

これは朗報、早速ゴーである。
料金は500円。ん、このフィナーレは
最近のマイブーム、山に登って、ゴールは地元の昔ながらの
お風呂屋さんとする「銭湯登山」にも似ているような。

それはともかくニューヨーク、
福島は南会津、只見の町で入浴だ。

湯船につかって、今日1日の一人反省会。
天気には一応恵まれたとしよう。計画した2つの山の頂も踏んだ。
秋の風情も楽しめたし、ひょっとすると
これはなかなか充実の山旅だったのではないか。

ならば結論は、こんな感じか。

「なんて日だ!」あらため
今日は「なんていい日だ!」。

〜明日はトリック or トリート、ハロウィンか。
  ところでハロウィンって、何だっけ?
   只見の一角で、一人反省会の後のお風呂で
    ふと思う。そんな2020(令和2)年の10月は30日に歩く〜
    

お肌だったら、良かったんだが

2019-10-24 18:31:08 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
震える足で、そろり、そろりと

藪神~戸隠神社~下権現堂山(897m)~上権現堂山(997.2m)~
手又沢〜中子沢~中家〜藪神【新潟県】


 
        

国境の長いトンネルを抜けると、
そこは真夏の雪国だった。

これは、東京がまだ何となく肌寒く、
今年は冷夏かなと思われた頃に出かけた
新潟の山歩きの話である。

“舞台”は権現堂山といい、
越後三山の見晴台的な存在の山。
高さも1000メートルに満たない、
一般には低山と呼ばれる場所だ。

素晴らしい景色をたっぷりと
拝ませていただきますかと、
出かけたまでは良かったのだが、
今回は予期せぬアクシデントに
見舞われてしまった。

あろうことか登山開始直後から、
熱中症となり、足がいうことをきかない。
いわゆる「つった」状態だ。

           


今考えると、
原因はあれもこれもと思い浮かぶ。

寒い東京にいたお陰で暑さに身体が順応していなかった、
寝不足だった、水分補給が足りなかった、
などなど、これらの要因が
柔道なら合わせ技一本とばかりに、
足のけいれんを招いたようだ。

したがって行動は、こんな
感じでと相成った。

ツル、ツル、ツル、足がつる。
スキンヘッドで頭ツルツルは
格好良しかもしれないが、
足ともなると、さあ困っただ。

最初のピークとなる下権現堂山までは
途中の水場で大休止。その後は、
騙し騙し、牛の歩みで一歩、一歩である。

           


ピークには先客がいらっしゃった。
話をするうちに、足の方はかなり
調子が戻ってきたようだ。

では先に進もう。
ピストンで戻る先客の方と別れ、
行動再開、めざすは上権現堂山だ。

ところが歩き出すと、
再び足に異変である。

ツル、ツル、ツル、足がつる。
お肌のツルツル、スベスベ感は
男だってウェルカムだが、
足の場合は、アイム・グッドで
ノー・サンキューのひと言。

ちょっと進む、痛みで立ち止まる、
しばらく待って痛みが消えたら、
また足を出す。

この繰り返しで、計画では
エスケープルートにしてある
分岐まで、とりあえず
行ってみることにする。

どうにか到着したので、
これからどうするか、
ひとり会議だ。

体調は良好、ただし足の具合は除く。
時間はある、天気は晴で日没もまだ先だ。
装備も万端、万が一のビバークも問題なし。

よって出た結論は予定通り、
前へ進めである。

では、いざ上権現堂山の頂へ。
と、歩き出したら、またつった。
これまでは片足づつ、太もも&ふくらはぎ
だったが、今度両足一度に
つってしまった。

ツル、ツル、ツル、足がつる。
麺類を味わう表現の喉越しツルツルは
腹がグウグウとも鳴るが、足がつるのは
グウの音も出ない、お手上げだ。

あと少し歩いても、この状態なら
また今度と、引き返すか。
行けるところまでと、思っていたら
再度おみ足は回復モードである。

     

よって、おっかなびっくり、
右足、左足を前に出して、
恐る恐る進む。そうこうしているうちに
上権現堂山に無事に到着した。

どっかと座り、かなり休む。
足も今のところは大丈夫。
それでは、この小康状態のうちに
下山しますか、そうしましょうと
歩き始めたら、また足がつった。

 

本日の行動は、ここからがハイライト。
素晴らしい景色の中を
下山するのだが、道は急降下である。

      

ツル、ツル、ツル、足がつる。
今から歩くルートは、雪道のツルツル同様、
足がつってもツルツル、スリップには要注意。

不幸中の幸い、怪我の功名か、
足のつったのが良かったわけではないが、
行動はいつも以上に慎重となり、さらに
足の痛さで度々立ち止まるので、
周囲の景色も、いつも以上にたっぷり
見ることができた。

足のつりは、かなり回復してきたが
それでも時折、強制停止を余儀なくされる。

まったく今日はまいったなと思っていたら、
予定のコースタイムより大幅な遅れではあるが、
ようやく登山道はおしまい、林道に出くわす。

ここから距離はまだあるが、危険度はほぼなしの
ロード歩き。あっちこっちでひと休みしながら
スタートでありゴールでもある藪神の駅へと向かう。

       

途中、ザックを椅子にぼんやりしていたら
犬の散歩の方と談笑する機会があった。
駅まで歩くと話をしたら「まだ結構ありますよ、
気をつけて」とエールも頂戴した。

「はい、頑張ります」と、
勢いよく立ち上がったら、また足がつった。

ようやくラストのコーナー、
ここを右に曲がれば、
駅も近くはないが、さほど遠い距離ではない。
そんな時、1台の車が後ろからやってきて、
少し先に止まった。

ツル、ツル、ツル、足がつる。
車のタイヤがツルツルも
足のツルツルも、百害あって一利なしですなと
たわけたことを思っていたら、
車のドライバーが、こちらに声を発している。

何だろうと、よく見ると
ドライバーはさっきの犬の散歩の方。
そして「駅まで乗っていきませんか」と、
おっしゃる。

えっ、わざわざ家に戻って、
車に乗ってここまで。これには、
感謝、感謝、新潟の方の優しさにひたすら
頭を垂れる足つりオヤジかなだ。

でも、どう見ても新車である。
この格好で乗っては汚れてご迷惑だし、
歩くのもあと少しなのでとお断りすると、
今度は「じゃあ差し入れ」と
飲み物などをいただいた。

最敬礼で頂戴し、車をお見送り。
本当にありがとうございますだ。

ツル、ツル、ツル、足がつる。
全行程で終始悩まされたが、
仕舞いはウルウルと、涙腺刺激の感動の出来事で、
足つる山行もどうにかこうにかフィニッシュである。

そして結びにひと言。
新潟で偶然出会った
犬の散歩の途中のレディー様、
その節のご親切に、
あらためて御礼申し上げます。



〜2019(令和元)年7月3日(水)
  天気晴朗なれど、足つりし。
   苦労たっぷり、でも感謝に感激の出来事もありと、
    想定・予定外のあれこれに遭遇しつつ歩く〜