六根清浄、お山は晴天。 登って下って、どっこいしょ。

たまに書く、時々入力、気が向いたら、したためる。駄文満載、阪神裕平ことおやじぃ雅のアウトドア雑記帳。

あい・あむ・あ・にっぽんいち

2016-06-13 22:24:26 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
 ~日本で海岸線から一番遠い地点(長野県佐久市田口榊山)~ 

2016年5月31日の火曜日、
時間は午前10時を1分まわった瞬間、
私は「日本一」になった。

10時ジャストではなく、
また針のある時計の文字盤が1番美しいとされる
10時10分でもないところが悔やまれるが
とにかく日本一になった。

では何が、どんな日本一なのか。

それは「日本で海岸線から一番遠い地点」に立つ人間。
周囲には誰もいないので、
正真正銘、この日この時間に限ると注釈はつくが
兎にも角にも、今、私は日本一である。

  

場所は長野県の佐久市。小海線の臼田駅から徒歩で
約2時間半、途中、函館とここにしかない五稜郭に、
未知の生物がいきなり登場しても
何ら違和感ゼロ、エメラルドグリーンの
水をたたえたダムを経て、
少しばかり沢伝いに登った山の中だ。

着いた「日本一の地点」は、
サイト地にはなりそうだがやや傾斜した地。
展望なしで、特に目立った特徴はなし。
あるのは、日本一の地点を示す看板2つのみ。

とはいえ日本一である。気分は決して悪くない。
記念の1枚に、コーヒーブレークの1杯と、
しばし、いや、たっぷり、これでもかと
日本一気分に浸った後、来た道を戻る。

   

今年は熊の出没も多い日本のお山、ここへ来る
途中にも注意を喚起する表示があった。

したがって、お守りがわりの鈴をつけ
ついでに歌でもと「あるぅ日、森の中、くま…」いかん
歌詞に難ありで、これでは熊との遭遇だ。
慌てて口には別の歌、ザックの鈴の音も高らかに
脱兎のごとく、一目散に車の往来もある
県道目指して下山する。

   

日本一の地点を出て35分、
県道に着く。ではここから先は
のんびりとまいりましょうか。

行きは五稜郭もダムもちらっと拝見だったが、
帰りのはじっくり見学。
そして、この日本一の地点を訪れると
「到達認定証」を発行してくれるそうなので、
市役所の出張所へと足を伸ばすことに。

建物の老朽化に伴う工事のため
出張所が移転していたのは予定外だったが
立派な認定証もいただいた。

「ムフフフフ、イヒヒヒヒ」と、
普段からニヒルやクールとは真逆の
ヘラヘラムードの表情が、
一層、にやけ気味となる。

2016年5月31日の火曜日、
時間は午前10時を1分まわった瞬間、
私は「日本一」のおっさんになった。

   

そして同日、午後2時を過ぎた頃、
日本一の認定証を手に、
駅へと向かう道すがらは
他人が見れば挙動不審者、
実に怪しげな笑顔をふりまく
おっさんにもなっていた。

ただし、
こちらは日本一にあらず、多分。


12月ではあるが“走”らず“歩”きますか

2015-12-28 00:10:51 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
~アラウンド・世界文化遺産の山~ 


いつもは貧乏で暇な身分でも
さすがに師走ともなると、
仕事もバタツキ気味で、何とも気ぜわしい。

とはいえ、ひとりでこなせる仕事の量は、
たかだか知れており、それでもと
踏んばってみると、すぐに身体はフリーズ、
ひと息プリーズの状態となる。

そんな時は山である。気分転換にと、
どこかへ出かけてみたくなる。ではどこへ。

予定は日帰りでと考えながら、
スーパーのレジで並んでいたら、
あっけなく見つかった。よし、ここへゆこう。

当日は天候にも恵まれ、その場所には
バス停より、湖畔を歩き、休憩を挟んで、
ちょっと登ってと、1時間少々で到着した。

ここからは絶景が拝めるはずだが、
視界は不良で肩すかし、肝心の日本一の
山の周囲は雲に覆われていた。



しばらく待ってはみたが、結果は同じ。
先に進む予定もあるので、
後ろ髪を引かれる思いで歩き始める。

大きなアップダウンもなく、
落葉に埋もれた道を気分よく進む。

ピークに着いた。
吹く風は強いが、今年は暖冬のせいか
寒いというより、むしろ心地よしだ。

期待した風景は見られずじまいだったが、
そんな日もあるさと、ひと休み。
しばしぼんやり、ひなたぼっこを決め込む。

しかし今は12月。さすがに寒くなってきたので、
腰を上げ、では行動再開とまいりましょうか。

下山はキャンプ場を経て、湖を半周し
朝のスタート地点であるバス停に戻る。

バスのやって来るまでは、まだ時間があるので、
バス停前にあるお土産物店をのぞいてみた。

冷やかしのつもりだったが、入った店内には
お客さんらしき人影はない。店の方の視線も
プレッシャーとなり、何も買わずに店を出るには
かなりの勇気が必要だ。そこで1品、
お値段安めで恐縮ながら、とりあえずお買い物となる。

レジに向かう。そしてお金を払う、その前に
渡すお札をチラリ。今回は周囲というのか
“輪郭”だけだったが、確かにこんな風景だったな。

今日訪ねたのは、富士五湖の最西端、
本栖湖を囲む山のひとつである中ノ倉山(1247m)。

登山の始まりとなる車道から少し登った
中之倉峠から見る富士山は、
千円札に描かれているあの風景だ。

周囲には富士を見る“展望台”として
超人気の山も多いが、こちらは中之倉峠を過ぎれば
ひっそりとしており、誰もいない。

今時分なら、それこそ師走の喧噪を忘れさせてくれる
のんびりムードも満点な冬枯れの低山である。

バスに乗った。窓からは今日初めて
富士山の勇姿を見ることができた。

それにしてもついてない。

いやいやモノは考えようだ。
今年は例年になく暖かなこともあり、
富士山の雪化粧の“のり”も今ひとつ。そのせいで、
きっと見られたくなかったに違いない。

そういうことにしておこう。

“雨中”人、難読山へ

2015-08-12 17:25:01 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
~一尺八寸山(706.7m)~

 朝から雨が降っている。しかも強烈だ。我がガラケーにはエリアメールと
して避難に関する情報も送信されてきた。だが、しばらく様子を見ていると、
若干雨脚は弱くなっている。よし、出発してみるか。

 今日の山行は、ほとんどが車道歩きとなる。目指すのは一尺八寸山。こち
らは日本の難読山ランキングで第1位、つまり読めない漢字の山の日本“最高
峰”である。場所は九州は大分県の日田市と中津市の境にある。

 アプローチ手段は通常はマイカーでとなるが、せっかく九州まで来たのに
それは味気ない。よって最寄の駅となるJR日田から歩く。天気は小雨模様。
雨具&傘の出で立ちで、一路登山口へ。時間の経過とともに、再び雨脚が強
くなってきた。

 一尺八寸山は、特異な山名以外は特に何もなし。言い方は悪いが名前負け
の山。事前に調べた資料を要約するとこんな感じとなる。だが、痩せても枯
れても、特長がなかろうとも“日本一”の山だ。どんな場所なのか気になる。
それが今、雨の中を黙々と歩いている理由だ。

 ようやく登山口に着いた。山仕事用と兼用の道はよく手入れされており、
また雨に洗われて緑も美しい。そういえば、歩く途中で話す機会のあった地
元の方が「一尺八寸山は、木材に梨、しいたけ他、山の幸の宝庫。子供時分
はよく訪れた思い出の地」と教えてくれたが、なるほど山の恵みがいっぱい
の宝の山。そんな感じも確かにする。

 気持ちのよい道を順調に進む。そしてラストは「120m」と書かれた道標
に導かれピークに着く。木々に囲まれ展望なしの広場となっており、ここが
日本で1番の読めない漢字の山なりと記された看板や石柱が、新旧織り交ぜ
立っていた。
 

 帰路は来た道を日田の駅まで歩いて戻る。地元に人に愛される山であり、
訪れればそれなりに楽しめる一尺八寸山。しかし、この山の魅力を人に説明
するのは難しい。それでもなぜ出かけたのか、何で登ったのかと問われたら、
答えはもうあの有名な言葉しかなさそうだ。それが「そこにあるから」。ポ
ツリとクールに発して、質問者を煙に巻きたい。てなことを思っていたら、
まもなく日田の駅。朝からの雨も、ようやく上がったようだ。

 ところで、この一尺八寸山なる山名だが、もちろん「いっしゃくはっすん
やま」ではない。正しくは「みおうやま」もしくは「みおやま」と読む。





●コースタイム(カッコ内の左・到着、右・出発時間)  
《第1日目》
JR日田駅
(08:30)
 ↓↓↓↓
藤山町(日田市立三花公民館前)
(09:51/10:00)

JR日田駅よりR212へ。後はひたすら登山口まで黙々ウォークである。
天候は小雨。だが天気予報では次第に雨風ともに強くなるとのこと。
愛用の“登山靴”は、タフで軽量、グリップ力ありと歩く分には申し分
のない地下足袋だが水には弱い。すでに足は、少々濡れた状態だ。

 ↓↓↓↓
矢木入口(下小川内バス停)
(11:03/11:12)

雨脚が強くなる。最初は沿道にも飲食店他多彩な店舗があり気もまぎ
れたが、さすがに山間部に入るとそれもなし。おまけにひたすら登り
である。往路が急坂なら、帰りはずっと下りで楽。と、自分自身にい
いきかせて歩け、登れ、進めである。

 ↓↓↓↓
大石峠(奥耶馬トンネル出口、R212との分岐点)
(11:33/11:33)

            

奥耶馬トンネルを抜けると、右手すぐに「一尺八寸山」の登山口を示
す道標あり。なおR212の交通量は激しく、トンネル内も轟音が響く。
しかし歩道は完備、さらに歩道には高さはバスト上と、安心のガード
レールもあり、ビビることなく歩ける。

 ↓↓↓↓
一尺八寸山登山口出合
(12:08/12:15)
           


ようやく山道となる。仕事道でもあるようで、道幅は2~4mとかなり
広め。勾配も急ではなく歩きやすい。雨はどしゃ降り。

 ↓↓↓↓
一尺八寸山ピーク(706.7m)
(12:45/13:00)
  

 

気になる山の頂に立つ。天気は雨。ここが日本で1番の難読山といった
表示が点在している。展望はなし。それ以外は、これといった特長は
なしで、いわゆる普通の里山のたたずまい。しかし登ってきた道の立
派さや、地元の人の話から、この一尺八寸山は山の恵みを人に与える、
山と人、自然と人との共生という言葉が、形になった場所ではと思う。

 ↓↓↓↓
一尺八寸山登山口出合
(13:28/13:30)
 ↓↓↓↓
大石峠(奥耶馬トンネル手前、R212合流点)
(13:55/14:10)
                        
 ↓↓↓↓
三 和
(15:50/16:00)
雨は降ったりやんだり、そして降り方も強弱ありと猫の目のように変
わる。R212に合流後は、下り坂を一目散に逃げるがごとくの行動とな
る。ただし来た道を戻るだけではと、途中で日田市内を抜けるルート
に変更。途端に周囲は名所旧跡から飲食店など、素通りできない場所
があちこちに出現。休まないまでも道草、回り道が多くなる。
 ↓↓↓↓
JR日田駅
(17:00)

雨中のピストン登山も無事終了。それなりに楽しめた山行だった。車
を使えばあっという間の一尺八寸山だが、歩けば結構な運動量。お陰
でガス欠、シャリバテ、腹減ったである。日田では、B級グルメとして
焼そばが最近のイチオシとの情報も入手済みだ。それでは今度は、や
きそばのお店へ「いざ出発」である。


~2015年6月30日(火)ドバドバ雨の中を、バタバタ歩く~

本日、天気晴朗なれど“風強し”

2015-01-12 17:58:53 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
~笹子駅→笹子雁ヶ腹摺山(1357.7m)→笹子峠→・1278( 中尾根ノ頭)→
  ・1411m(カヤノキビラノ頭)→京戸山、ナットウ箱山→達沢山(1358m)→立沢~


 今日は雨の心配は無用のようだが、風が強く寒そうだ。山へと向かう列
車の車窓からは、冬晴のもと、木々の枝は激しく揺れ、ゴミやら何やらが
吹き飛ばされているのが見える。

 本日の予定は、中央線の「笹子」駅から笹子雁ヶ腹摺山~カヤノキビラ
ノ頭経由で達沢山まで歩く。案の定、駅は寒かった。「イケメンおやじが
下車した駅だけあり、超クールだな」と、今朝の気候にマッチした氷点下
ギャグを一発かまし、では、まいりましょうか。

 次第に手がかじかむ。鼻水、よだれが糸を引く。さすがに立ち止まって
休む気分にはならないので、速度は変われど前へ、ひたすら一歩と足を進
める。そのため笹子雁ヶ腹摺山の頂上には、駅から2時間かからずに到着
と、山梨県だけに風林火山ではないが「疾きこと風のごとし」だ。

 しかし、これは強風による偽りのスピード。そのつけはすぐにやってき
た。笹子峠、中尾根ノ頭、ここらあたりまでは快調だったが、徐々にペー
スはスローダウン気味。息切れ、止まる、寒い、我慢できずに微速前進、
この繰り返しで、京戸山に、珍名ナットウ箱山を経て、達沢山にどうにか
着となる。



 道中は、展望もよく気持ちのよいルートではあったが、いかんせん風が
強過ぎた。這々の体で、下山を開始。ただし風は、人里に降りても変化な
し、よって寒い。駅へと向かうバスの時刻を確かめるが、残念ながら当分
来そうもない。だがここで待っていては凍えてしまう。

 そこでもう少し、適当なバス停まで歩くことにする。途中、道路の脇に
温度計があった。気温はマイナスの表示だ。見なければよかった、余計寒
くなった。歩き出してから約1時間、時刻表を見るとバスのやって来るまで
あとわずかのバス停に着いたので、ここで歩くのは終了。定刻よりやや遅
れ気味で姿を見せたバスに乗り込む。

 バスを降りる。交差点を右に進めば石和温泉の駅だ。温泉でひと風呂浴
びたいところだが、今夜は予定があり時間が許さない。仕方がないので、
某ファストフードのお店にてコーヒーにスープとホットなメニューで暖を
とるが、最近歳のせいか液体を一気に飲もうとすると必ずむせてしまう。

 静かに談笑する人多しの店内に、おっさんの咳き込む音が響き渡る。

 本日の山歩き、風による寒さのお陰が大だったが、コースタイムだけを
見れば、スピーディーでなかなかいい感じ。まだ意外と体力があるかなと
喜びもつかの間、ゴホゴホである。やはり老化現象、体は着実にガタもき
ており、何ともしまらないフィナーレとなってしまった。やれやれ。




●コースタイム(カッコ内の左・到着、右・出発時間)  
《第1日目》
JR「高尾」駅
(06:14)
 ↓↓↓↓
JR「笹子」駅→→→→登山口出会い→→→ 1330m付近(電波反射板脇)→→
(07:09/07:15)    (07:36/07:38)   (08:45/08:46)   

笹子雁ヶ腹摺山(1357.7m)→→→新道分岐→→→→→笹子峠→→→→→→
(08:50/08:58)         (09:09/09:25)  (09:53/09:58)   

JR「笹子」駅からはR20に沿って西進。追分を過ぎ橋の手前で旧道へ。
少し進み、道が左へカーブする部分に道標登場。ここから山道である。

ルートは急登が続く。また途中、落葉のたい積で、道が不明瞭&落葉の
ラッセルも少々あり。

笹子雁ヶ腹摺山から、富士の眺めはグッドのひと言。みとれていたいが、
本日は風が強過ぎ、急いで笹子峠方面へ退散。途中、道が尾根と巻き道
の二手に分かれるが、強風を避けるため巻き道をチョイスする。

笹子峠は、これぞ峠だというイメージのある所。しかし峠は、人の往来
もあるが風の通り道でもある。したがって今日は、先を急ぐ。道標あり。

・1278(中尾根ノ頭)→→→→→・1411(カヤノキビラノ頭)→→→→→
(10:15/10:25)         (11:05/11:30)     

道はしっかりとしている。ただし途中で、2ヵ所道の北側(進行方向右手)
が崩壊しており注意が必要。慎重に進むべし。

・1411(カヤノキビラノ頭)からの富士も見応えあり。

・1411(カヤノキビラノ頭)以降も、道の両側が崩壊している部分あり。
こちらも、足場をよく見て進めば問題なし。

また、道が少々不明瞭な部分もあり。こちらも周りをよく見れば、すぐに
正しいルートがわかる。行動は落ち着いて。

分岐(京戸林道方面への道との分岐)→→→→→京戸山(1430m)→→→
(12:10/12:12)               (12:17/12:20)   

京戸林道への分岐には道標あり。

ナットウ箱山(1412.5m)→→→分岐(立沢方面への道との分岐)→→→→
(12:30/12:35)       (12:42/12:42)   

京戸山(道標は京戸山系)とナットウ箱山、高さは京戸山だが、道標の立
派さはナットウ箱山。どちらも一服には適。

立沢への分岐にも道標あり。

達沢山には、片道10分程度のピストンとなる。ピークには、立派な道標が
あるが展望は今ひとつ。

達沢山(1358m)→→→→→→→分岐(立沢方面への道との分岐)→→→→
(12:52/13:08)       (13:12/13:14)   

分岐から立沢へのルートは、沢沿いの道。よく整備されており、道標の類
いも要所にあり。

林道出合→→→→→立沢(R137との合流点)→→御坂ゴルフ場入口(バス停)
(13:30/13:45) (14:20/14:20)       (15:18/15:29)
                         ↓↓↓↓
                     石和温泉駅入口(バス停)
                       (15:49)         

《2014(平成26)年12月18日に歩く》

青い“行き倒れ”

2014-11-10 16:39:37 | Quiet~いぶし銀、渋めの山
~日本コバ(934m)~

 
                 

 声がした。最初のイメージは痛飲した帰りの電車で「終点ですよ」と起こ
される、あの感じの声だ。確かに寝ていた。が、決定的に違うのは今は山登
りの途中であり、第一お酒も飲んではいない。では何だ、誰の声だ。

 目を開けてみる。そこには、ヘルメット姿の人がいた。一層、頭の中が混
乱する。どうした、そして、あなたは誰だ? である。

 ある日、日本コバという名の山を見つけた。場所は滋賀県にある。いつか
機会があれば登ってみるかと思っていたが、そういう“いつか”は、なかなか
巡ってこないもの。そこで、えぃやぁ!と準備して出かけてみた。

 根っからの小心者なので、山へ行く前の“儀式”は入念だ。登山計画書を作
成し、参考資料や地図は、それこそ穴があくほど見る。その一方で、宿泊に
関しては、かなりアバウトで無頓着だ。山の場合、基本はテント、もしくは
ビバーク、つまり野宿しか考えない。したがって今回も、初日は途中の道の
どこかで寝る、以上で終わりである。

 東京を発ち、電車とバスを乗り継ぎ、現地には夕方に着いた。ここからは、
寝る場所を探しつつの歩きとなる。そんな矢先に雨が降ってきた。雨か、屋
根のあるところがあればと思っていたら、トンネルの出現である。しかも幅
の広い歩道つき。これは天の助け、今夜はここだ。ただちに就寝の準備とな
る。愛用のブルーのシュラフに入れば、寝つきのよさは取り柄なので、また
たく間にグッドナイトで爆睡だ。そして何時間後には起床となるはずだった。

 周囲はやけに明るく、また何かが点滅している。再びヘルメット姿の人が
声を発した。「大丈夫ですか。トンネル内に、青い行き倒れありと通報があ
り急行しましたが」。ようやく状況が理解できた。明るく点滅しているのは、
パトカーと救急車の回転灯で、声の主であるヘルメット姿の人は救急隊員。
周囲を見渡せば、警察、消防署の関係者など、人、人、人である。

 ここからは七重の膝を八重に折り、ひたすらお詫びである。その後、道を
走る車からは見えない場所へ移動をとの指示にしたがい、パッキングのち少
し歩く。ほどなくバス停の待合所に出くわした。ここなら雨をしのげ、横に
なれば道からは死角で大丈夫だ。では、あらためまして。おやすみなさい。

 そして、もうひと言。警察に消防署の救急の皆様、そしてご親切にも通報
してくださった方、今回は大変ご迷惑をおかけいたしました。以後、気をつ
けますので、何卒お許しの程を。

                 




●コースタイム(カッコ内の左・到着、右・出発時間)  
《第1日目》
近江鉄道「八日市」駅
(18:40)
 ↓↓↓↓
永源寺車庫→→→→→→トンネル(相谷第一トンネル)→→→→「佐目」バス停
(19:15/19:20)     (19:45)      

東京から名古屋までは新幹線、以降は東海道本線で米原、米原で近江鉄道に
乗換え八日市、締めくくりはバス乗って、降りたところは永源寺車庫。ここ
から、車道(R421・八風街道)を歩く。ここまでは予定通りだったが、問
題はこのあと。誤算が2つ生じる。ひとつ目は天候。急に雨が降ってきた。
そこへ立派なトンネルが出現となる。そしてもう1つ、最大の誤算は交通量。
夜ともなれば車も減って、トンネルで寝ても誰も気がつかないはずと思って
いたが。甘かった、この道、車の往来は24時間、頻繁でございました。

青い行き倒れ事件後は、場所を少し移動。新しい“お宿”は「佐目」のバス
停脇にある待ち合いスペース。今度は、しっかりと身を隠して眠る。


《第2日目》
佐目バス停→→→→→2.5万図・397の対岸付近→→→→登山道出合→→→
(4:00/5:00)   (5:52/6:00)         (6:10/6:15) 

4時起床。まずは昨夜のハプニングのお詫びをば。関係者の皆様、ごめん
なさい。さあ行動開始だ。道は本日も朝から車がひっきりなし、登山口ま
での歩きはポジショニング、道のはしっこをキープを心がけてである。天
気は、昨夜からの雨降り続く。

登山道の入口には道標あり。また少し進めば登山届提出用のポストも設置
されている。持参した登山計画書を中に入れて身繕い。いざ出発。おっ、
雨はやんだようだ。ちなみにポスト内に用意されている専用の登山届けの
用紙は“品切れ”状態なり。

    

 

またピークまでは、200mごとに位置情報が記載された道標が続く。

    

450m付近(2.5万図の藤川谷の「藤」部分)→→→岩屋→→→→→→→→
(6:45/6:55)                (7:47/8:00)

最初、道は滑りやすく、異常に細い。おまけに進行方向左は崖。要注意で
ある。その後、足場はしっかりとはしているが渡渉もあり。今回は4ヵ所。

450m付近の休憩ポイントから岩屋間は、どこもかしこも道のような広い
沢状の地形の中を進む。が、ここが一番歩きやすそうと思える部分が正し
い道。そして、そこには赤テープもあり。

岩屋の手前にはロープ付きの登りあり。しかし少々大げさ。三点確保など
慎重に行動すればノープロブレム。



分岐(政所道分岐)→→日本コバ(934m)→→分岐(政所道分岐)→→
(8:08/8:08)    (8:35/9:00)      (9:20/9:26) 

このお山、名前同様、地形も不思議。ピークのすぐ下まで水の流れる沢
あり。そのため周囲の木々と相まって、森を彷徨うような幻想的な雰囲
気に包まれつつ前進となる。もっとも、今回歩いているのはおっさん。
絵にはならない点は残念である。ただし歩行中にぼんやりし過ぎは厳禁。
周囲をよく確認して歩いていないと、あれ? という所も少なからずだ。
ロスタイムが生じぬように、要注意。

日本コバのピークは広場のような場所だった。どういうわけか、山頂名
を記した道標がやたらと立っている。

         

衣掛山(・870)→→政所→→→→→→越渓橋(2.5万図・273手前)→
(9:40/9:42)  (10:30/10:35)  (11:12/11:24) 



下山路は、登りより道自体ははっきりとしている。しかし歩きにくい。
なぜなら
1)トラバース部分は、道幅はひたすら細く、傾斜も急。
2)倒木など、道をふさぐ障害物も多し。
3)ラストは、これは急過ぎ、落下するような感じ。
という理由からだ。したがって下山は慎重に。またこの道を登りに使
うのは…。ちょっと、ためらいそうだ。



永源寺ダム→→→→→永源寺(正しくは瑞石山 永源寺)
(12:10/12:15)  (12:43/13:55)        
            ↓↓↓↓
        近江鉄道「八日市」駅
           (14:30)         

政所からは、再び朝来た道を引き返す。道は相変わらずバイクから、
大型トラックまで途切れなしである。途中で永源寺ダムをチラ見し
ていたら「ダムカード、あります」とあったので、記念にと1枚い
ただく。そして名刹である永源寺にもお邪魔して、しばしのんびり。
そうこうしているうちに、そろそろバスがやってくる時間。日本コ
バ登山も無事終了である。1000mにも満たない山ではあったが、
日本らしい自然のよさ、里山の美しさを実感できる、なかなか趣の
ある場所だった。

 
      

《2014(平成26)年10月1日に歩く》