6月に帰れたら、浴衣を持ってこよう
小樽の家のクローゼットに浴衣と帯が3セット入っている。
リラ冷え底冷えに開花で湧く野も山も息を潜めながら風でたまった花びら道に 潮見ヶ丘神社祭の幟が立ち出すと、浴衣期(とき)のスタートだ。気が向いた夕方から私は浴衣を着た。晩春のお祭りをぶらつくには、浴衣の下に2枚もトレーナーを着てスパッツもはいてね。そこここで貰って貯まった団扇置き場から気分の団扇を選んでね。悩んだ挙句、いつも結局擦り切れたニッセイのミニーちゃんの団扇を連れ出して、1,500円くらい帯の袋に入れてから下駄をパスして感じ悪くないと思えるサンダルを履く。下駄は特注じゃないから、20歩くらいしか歩けないのよ。何時ぞやの下駄履きの日は、鼻緒で足が切れる予防にたくさんサビオを貼ったのに、ダメだったから・・・色々全部。スタスタとカラランと下駄を履きこなす人が羨ましいな。ペタペタとビーサンで歩く人すら羨ましいよ。
遠回りに下山して馴染みの万屋(よろずや)に寄る。そこは清潔なコンビニでモッキリも出来る。元気な酒好きのお婆さんが葉物や夕飯のおかずを買ってから、ワンカップの蓋を店番さんに開けてもらって、トクトクとほぼ一気に立ち飲みするんだねぇ。私は、ソフトクリームを作ってもらって店のお母さんと話す。親しみのこもった優しい声と空色のアイラインで、歌うように気配りしながら7種類くらいの事務や仕入れや配達の指示をして、7種類以上のありがとうバリエーションを使いこなしていた。彼女のコンビニエントな城は店というよりも彼女らの日常の7割の姿であって、その勤めがそのまま生業で・・・サラリーマン家庭で育った私にはキラキラと「充分に生きるための人との結びつき」に映った。。。
「あらっ? 今週は、どこのお祭りだったかしらね」
「どこも・・・夏だから浴衣着てるの・・・えへへ」
「まあまあ、そうだったのね。私も昔はねぇ、ちょうど今時分に呉服屋さんで浴衣の反物を選びに行くのよ。ほら私は実家で初めての女の子だったから、今思うと甘やかされていてね。縫えないから仕立てもお願いしてね・・・新調の浴衣が届くのが楽しみで・・・。お祭りの時は、おばあさんが少し白粉をはたいてくれて、お母さんの貝殻に入った口紅をほんの少し小指で塗ってくれたりしたわ」
「反物をくるくる解いて、右肩にかけて鏡を見るのよねぇ。私は一回しか浴衣を作ったことないから、それは特別中の特別なことだけど・・・おばさんの娘時代は豪華だなあ」
「・・・戦後で物がない時代よ。残りご飯を煮直して浴衣の糊を作るのだって、贅沢なことなはずだったわね。でも子供たちは家にも町にもたっくさんいて、大人たちはやっぱり張合があったのよね。そういえば浴衣の反物は呉服屋さんじゃなくて見慣れない行商の人から分けてもらったこともありましたわ・・・」
「ぁっ、そういうのに掘出し物もあったんじゃない?」
「いえいえ、今のお洋服と同じでね、柄も色も流行りがあるから浴衣も新柄の新物が欲しかったのよ。わがままねぇ・・・ほほほほ・・・」
「アイスご馳走さま、150円ここに置いとくね」
「はーい、まいどさん。ありがとうございました。坂道気をつけて帰ってね」
・・・
私は「焼き尽くす捧げ祭」みたいな関東の真夏を忘れていたけれど、服装自由な逗子で柄の大きさを気にせずに、お祭りでも花火大会でもない何でもない週末付近夕方。糊をきかせた浴衣を着て、スズキヤでスイカの切身を買うだろう。
小樽の家のクローゼットに浴衣と帯が3セット入っている。
リラ冷え底冷えに開花で湧く野も山も息を潜めながら風でたまった花びら道に 潮見ヶ丘神社祭の幟が立ち出すと、浴衣期(とき)のスタートだ。気が向いた夕方から私は浴衣を着た。晩春のお祭りをぶらつくには、浴衣の下に2枚もトレーナーを着てスパッツもはいてね。そこここで貰って貯まった団扇置き場から気分の団扇を選んでね。悩んだ挙句、いつも結局擦り切れたニッセイのミニーちゃんの団扇を連れ出して、1,500円くらい帯の袋に入れてから下駄をパスして感じ悪くないと思えるサンダルを履く。下駄は特注じゃないから、20歩くらいしか歩けないのよ。何時ぞやの下駄履きの日は、鼻緒で足が切れる予防にたくさんサビオを貼ったのに、ダメだったから・・・色々全部。スタスタとカラランと下駄を履きこなす人が羨ましいな。ペタペタとビーサンで歩く人すら羨ましいよ。
遠回りに下山して馴染みの万屋(よろずや)に寄る。そこは清潔なコンビニでモッキリも出来る。元気な酒好きのお婆さんが葉物や夕飯のおかずを買ってから、ワンカップの蓋を店番さんに開けてもらって、トクトクとほぼ一気に立ち飲みするんだねぇ。私は、ソフトクリームを作ってもらって店のお母さんと話す。親しみのこもった優しい声と空色のアイラインで、歌うように気配りしながら7種類くらいの事務や仕入れや配達の指示をして、7種類以上のありがとうバリエーションを使いこなしていた。彼女のコンビニエントな城は店というよりも彼女らの日常の7割の姿であって、その勤めがそのまま生業で・・・サラリーマン家庭で育った私にはキラキラと「充分に生きるための人との結びつき」に映った。。。
「あらっ? 今週は、どこのお祭りだったかしらね」
「どこも・・・夏だから浴衣着てるの・・・えへへ」
「まあまあ、そうだったのね。私も昔はねぇ、ちょうど今時分に呉服屋さんで浴衣の反物を選びに行くのよ。ほら私は実家で初めての女の子だったから、今思うと甘やかされていてね。縫えないから仕立てもお願いしてね・・・新調の浴衣が届くのが楽しみで・・・。お祭りの時は、おばあさんが少し白粉をはたいてくれて、お母さんの貝殻に入った口紅をほんの少し小指で塗ってくれたりしたわ」
「反物をくるくる解いて、右肩にかけて鏡を見るのよねぇ。私は一回しか浴衣を作ったことないから、それは特別中の特別なことだけど・・・おばさんの娘時代は豪華だなあ」
「・・・戦後で物がない時代よ。残りご飯を煮直して浴衣の糊を作るのだって、贅沢なことなはずだったわね。でも子供たちは家にも町にもたっくさんいて、大人たちはやっぱり張合があったのよね。そういえば浴衣の反物は呉服屋さんじゃなくて見慣れない行商の人から分けてもらったこともありましたわ・・・」
「ぁっ、そういうのに掘出し物もあったんじゃない?」
「いえいえ、今のお洋服と同じでね、柄も色も流行りがあるから浴衣も新柄の新物が欲しかったのよ。わがままねぇ・・・ほほほほ・・・」
「アイスご馳走さま、150円ここに置いとくね」
「はーい、まいどさん。ありがとうございました。坂道気をつけて帰ってね」
・・・
私は「焼き尽くす捧げ祭」みたいな関東の真夏を忘れていたけれど、服装自由な逗子で柄の大きさを気にせずに、お祭りでも花火大会でもない何でもない週末付近夕方。糊をきかせた浴衣を着て、スズキヤでスイカの切身を買うだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます