近所に、
母の最後の1カ月を診てくださっていた
緩和医療のクリニックがある。
お母さん先生と息子の若先生で診療をしていて、
契約のための最初の面会は若先生。
往診にはお母さん先生が来てくださっていた。
数日前のネットニュースで、
その若先生が末期がんで余命2年と知った。
44歳。
ふたりの子どもも幼い。
胸が締め付けられるようだった。
その、わずか2日後、
近所を歩いていると、
お世話になったお母さん先生が、
通りの前方を歩いておられるのに気がついた。
日用品の買いもの帰りのようだったが、
その後ろ姿が・・・
一人息子であり、クリニックの後継者であり、
緩和医療の同士でもある息子を失うことになる、
母親の絶望のようなものが
背なかに張りついていて、
とても声をかけることはできなかった。
わたしの父が亡くなった1カ月ほど後に、
町で見かけた母も、
曲がった背なかに、
底なしの闇のなかにいるような
暗い哀しみが張り付いていた・・・
泣ききったあとにも、
哀しみは、
その人の背中をおおうように、
重く宿り続けているのだなと・・・
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