少し前にテレビドラマを観て、
原作を読んでみたくなり、
図書館で借りて一気に読み終えてしまった、
「母の待つ里(浅田次郎/新潮文庫)」。
本当の母が待つ里なのではなく、
いわばカード会社が提供するサービスで、
ブラックカードを所持する人のみが体験できる
一泊二日のプログラム。
“母の待つ里”に電車やバスを乗り継いで到着すると、
そこは自然に囲まれた過疎の村。
“母”や、“かつての同級生”を演じる村人たちが出迎えてくれて、
懐かしい母の料理を味わい、
薪で沸かしたお風呂に入り、
“母”とのよもやま話も・・・
“故郷の里”での心温まる2日間に、
プランを利用した登場人物たちは、
これまでの人生や自身の生き方に思いを馳せ・・・
心の奥深くに染みこんでくる物語だった。
私には故郷といえる場所はないし、
母も父も他界しており、
こんなサービスが提供されたら、
ぜひ体験してみたい・・・
でも、
フィクションとはいえ、
一泊二日で50万円、
ブラックカードを維持するための年会費が
35万円となると・・・
それにもし、
限界集落の存続を目的に
実際にこんなサービスが実現したとして、
今の時代、
“母”や“かつての同級生”を演じる村人たちは、
動画撮影されたりして、
面白おかしくSNSにアップされ・・・
ユーチューバーや見物客などが押し寄せて、
村全体が、
見ず知らずの人たちの好奇の目や悪意にさらされ、
平和な生活がおびやかされることだろう・・・
優しい“母”と自然に囲まれた生家で
温かい一夜を過ごせるサービスは、
物語だからいいのよね・・・
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