やりたい仕事より定職が必要か 産経新聞 明日へのヒント
【相談・20代女性】
歌手になりたくて音大を卒業しました。
才能はないですが人や機会に恵まれたため、大学生のときから歌う仕事をしています。
今も歌手と生徒を教える仕事をしています。
仕事が楽しくてしょうがありません。
不安定な収入でまだ一人暮らしはできませんが、最近、自分の生活費は自分で得られるようになりました。
両親は年金者で、定職につくように勧めます。
両親の気持ちもわかりますが、今の仕事は自分が目指していた仕事で、やっと最近、少しずつ夢に近づいてきたと思います。
でも、一生お金が得られる保証はありません。
お金のためにやりたいことを辞めて生きる人生と、心が満足している人生の間で迷ってしまいます。
「明日仕事だ、嫌だな」という方をよく見かけますが、皆そういうふうにいきているのでしょうか。
【回答・小池龍之介】
あいにく、「夢を追って自己実現するもんね」という若者が掃いて捨てるほどいる、この現代社会です。
夢どころか、競争相手が山ほどいる残酷なゲーム。
そんな「才能」同士のけ落とし合いのような世界で、ほんの一握りの人だけいわゆる「勝者」として生き残るのです。
その中で迷って、「安定した生活のほうが良いのかも・・」と不安になっているようでは、なかなか生き残れないかもしれません。
「夢を追いたい」とおっしゃる一方では、案外「常識的な」弱さを持っておられるがゆえにこそ、ご両親の言葉を受けて迷ったり、将来に不安を感じたりもされるのでしょう。
「仕事が楽しくてしょうがない」とはいえ、仕事以外の時間にそうした不安が襲ってくるなら、それは実は「楽しくない」と抱き合わせなのです。
その「楽しくなさに」に脅かされながら、この先ずっと続けていくタフさがあるのかと胸に手を当ててみれば、自らの弱さが見えてくるのではないでしょうか。
また、「歌うのが好き」と「歌うことが皆から評価され、仕事になるのが好き」は、イコールではありません。
本当に歌そのものが純粋に好きなのでしたら、それを収入を得るツールにせず、趣味として楽しむのもあり得るのではないでしょうか。
定職に就いたら歌うのを続けられなくなる、という程度のものなら、もとより大した情熱ではなかったと申せましょう。
「小説家になりたいなら他の仕事に就いて収入をきちんと得つつ、なおかつ余った時間で作品を作るくらいの気魄がないと話にならない」
坂口安吾という作家が、こんなニュアンスのことを記していたのは、他の芸術のも当てはまることでしょう。
そのような強さを持たない自分自身をよく知った上で、退くかあえて突き進むかを決断されるとよいでしょう。
【相談・20代女性】
歌手になりたくて音大を卒業しました。
才能はないですが人や機会に恵まれたため、大学生のときから歌う仕事をしています。
今も歌手と生徒を教える仕事をしています。
仕事が楽しくてしょうがありません。
不安定な収入でまだ一人暮らしはできませんが、最近、自分の生活費は自分で得られるようになりました。
両親は年金者で、定職につくように勧めます。
両親の気持ちもわかりますが、今の仕事は自分が目指していた仕事で、やっと最近、少しずつ夢に近づいてきたと思います。
でも、一生お金が得られる保証はありません。
お金のためにやりたいことを辞めて生きる人生と、心が満足している人生の間で迷ってしまいます。
「明日仕事だ、嫌だな」という方をよく見かけますが、皆そういうふうにいきているのでしょうか。
【回答・小池龍之介】
あいにく、「夢を追って自己実現するもんね」という若者が掃いて捨てるほどいる、この現代社会です。
夢どころか、競争相手が山ほどいる残酷なゲーム。
そんな「才能」同士のけ落とし合いのような世界で、ほんの一握りの人だけいわゆる「勝者」として生き残るのです。
その中で迷って、「安定した生活のほうが良いのかも・・」と不安になっているようでは、なかなか生き残れないかもしれません。
「夢を追いたい」とおっしゃる一方では、案外「常識的な」弱さを持っておられるがゆえにこそ、ご両親の言葉を受けて迷ったり、将来に不安を感じたりもされるのでしょう。
「仕事が楽しくてしょうがない」とはいえ、仕事以外の時間にそうした不安が襲ってくるなら、それは実は「楽しくない」と抱き合わせなのです。
その「楽しくなさに」に脅かされながら、この先ずっと続けていくタフさがあるのかと胸に手を当ててみれば、自らの弱さが見えてくるのではないでしょうか。
また、「歌うのが好き」と「歌うことが皆から評価され、仕事になるのが好き」は、イコールではありません。
本当に歌そのものが純粋に好きなのでしたら、それを収入を得るツールにせず、趣味として楽しむのもあり得るのではないでしょうか。
定職に就いたら歌うのを続けられなくなる、という程度のものなら、もとより大した情熱ではなかったと申せましょう。
「小説家になりたいなら他の仕事に就いて収入をきちんと得つつ、なおかつ余った時間で作品を作るくらいの気魄がないと話にならない」
坂口安吾という作家が、こんなニュアンスのことを記していたのは、他の芸術のも当てはまることでしょう。
そのような強さを持たない自分自身をよく知った上で、退くかあえて突き進むかを決断されるとよいでしょう。