里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

音楽家 坂本龍一さん       資本主義を問うとき

2021年01月03日 | 生活

「しんぶん赤旗」発言2021 2021年1月3日

 平和から環境、人権、災害復興と多彩な発言・行動を続ける音楽家の坂本龍一さん。コロナ感染が世界的に広がり、社会のあり方が問われるなか、「資本主義のあり方を根本的に見直さなければ人類の未来はない」と訴えます。思いを聞きました。(加來恵子)

 コロナ感染拡大で、貧困と格差、地球温暖化、差別などさまざまな問題が明るみに出ました。

 資本主義が行き着いた「ニューリベラリズム(新自由主義)」の政策は、効率を何よりも優先して福祉や教育を切り縮め、医療体制を脆弱(ぜいじゃく)なものにしてきました。

 日本政府は、コロナ感染の第2波・3波を予測できたにもかかわらず、医療体制を強化したり、PCR検査を拡大することもせず、ただ「自粛」を呼びかけただけでした。

 教育や福祉が無料のドイツ、フランスでは深刻な医療崩壊は起きていません。感染が拡大しても部屋やベッド、人員も余裕があったからです。医療や教育、命の安全保障をきちんとやっている国では、パンデミックが起きたとしても、乗り越えられるのです。

 これに対し、日本の菅政権が掲げるのはまず「自助」、そして「共助」、最後が「公助」です。要は、国は何もしないという宣言です。

 自己責任論が強烈に振りまかれたのは、2004年のイラクでの日本人人質事件だと思います。アメリカでさえ自国のジャーナリストが捕まれば救出に行きますよ。日本は危険なところに行った人が悪いと言わんばかりに突き放しました。

 2001年、小泉「構造改革」路線で竹中平蔵氏を起用し、労働者派遣法を緩和したり、「医療制度改革」などを行い、「派遣切り」や働いても生活できないワーキングプアの人たちが広がり、貧困と格差を広げてきました。

 貧困問題も、コロナに感染しても自己責任。コロナに感染したら、まず、感染した人に手を差し伸べるのが普通の社会ですよ。歴代の自民党政権が、経済合理主義を推進し、自己責任を押し付けてきた。コロナがその問題をあぶりだしたのです。

 PCR検査ができない先進国なんておかしい―と全国民が政府に対して問うべき大問題です。他の国だったら大規模デモが起きていてもおかしくない。

 大事なことは野党が自民党に対して立ち向かうこと、一大勢力としてまとまって対抗してほしいと思います。

政府の文化・科学軽視 目に余る

原発事故・コロナ禍 いま音楽は

望む社会考え 声あげるべきだ

 安倍政権から振り返ってみて、安保法制や共謀罪法などが強行採決されたことも問題ですが、法の解釈を数人の内閣で変えてしまうことが次々行われていることが、もっと問題だと感じています。

 「国会は国権の最高機関」だと日本国憲法に書いてあるにもかかわらず、その解釈を勝手に変えてしまう―これは憲法違反だと思います。

 アメリカでさえ、何びとといえども法の上に置いてはいけないということを守っていますよ。超保守の最高裁の判事でさえそんなことはさせないのです。

 自民党は世代交代をして、戦争は絶対してはならないという人たちがいなくなってしまった。今や明治憲法に戻れという日本会議に席巻されています。

 また、政府は文化芸術に対する評価が低く、教育や科学軽視は、目に余るものがあります。

 学術文化にお金を出したくない。軍事研究にはお金を出すが、他には出さないと言いだす始末です。

 これに対して、国民にとって常識的なことを言っているのは、日本共産党ぐらいしかないと思っています。

 選挙の時、webで自分の考えと近い政党はどこかというアンケートをやると、必ず日本共産党になるわけですよ。96%くらいは、日本共産党の政策と一致するのです。

 僕は共産党が党名を変えたら支持率が格段に上がるのではと思っています。僕自身にアレルギーはないけど、党名にアレルギーがある人はとても多いと思うので。党員のみなさんは誇りがあるので手放したくないというのも分かりますが。資本主義の在り方を見直すという立場は理解できます。こういう時代だからこそ共産党には頑張ってほしいんですよ。

 福島の原発事故後、岩手、宮城、福島の3県の小・中・高・大学生を集めて「東北ユースオーケストラ」を主宰しています。

 演奏会のたびに、「坂本さんはなぜ東北に固執するんですか」と聞かれますが、結びつきができるとさよならともいえませんし、何より東北の惨事はまだ終わっていません。苦しみや悲しみは10年たとうが20年たとうが、癒えません。復興とは言えないし、失ったものは多いのに簡単には終わらない。僕は寄り添うしかできない。

 しかし、2020年も今年もコロナ感染拡大のためコンサートが開催できません。コロナ禍で、音楽を楽しみ、演奏したり、歌ったりできなくなりました。

 例えば、年末にベートーベンの第九を歌いますよね。100人くらいの合唱団と100人くらいのオーケストラ。大きな声を出し、飛沫(ひまつ)を飛ばして。「世界中の兄弟、姉妹、抱き合おう」と歌う。

 しかしコロナ禍において、もっともふさわしくない音楽の一つになってしまった。

 そもそも音楽は、密集して、寄り添って演奏し、聴く側も寄り添って音楽を浴びるというのが本来の姿だと思いますが、それができないとなると大問題です。音楽のあり方はどうすべきかを模索しています。

 核兵器禁止条約が1月22日に発効します。日本政府に対し、禁止条約に参加を迫る署名の呼びかけ人になりました。核兵器は使ってはいけないし、廃棄しなければいけないと思います。「抑止力」という現実政治としての役割もわかりますが、核兵器に頼って危うい均衡を保っている世界は異常な状態だし、絶対によくない。

 幸福の最も基本的なことは、地球上の全ての人が、安全に平和に毎日を送れることであり、それには、誰も異存はないと思います。

 そのためには、安全な水、食料、衣食住、環境が必要です。

 病気になれば、医療も必要です。核兵器はその対極にあります。早く終わらせなければいけません。誰もが安心して暮らせる世界に移行するために、核兵器はなくさなければいけませんよ。

 これまではニューヨークの自宅の庭から街の喧騒(けんそう)が聞こえていましたが、ロックダウン(都市封鎖)で人間の活動が制限されたことで、街が静かになり、鳥の鳴き声がよく聞こえてきました。

 アメリカの温暖化ガスの排出量もこの30年間で最も少なくなりました。

 コロナ禍により、経済活動が制限され、困窮された方も多いとは思いますが、一人ひとりに余裕のある生き方は、自分の体にも自然環境にも優しくなります。

 何十年も突っ走ってきた暮らし方、社会のあり方を変えても、暮らせるとわかった人は多いはずです。

どんな暮らし方をしたいか、どんな社会を望むのかをこの機に考え、声をあげていくべきだと思います。

 さかもと・りゅういち 1952年生まれ。東京芸大大学院修士課程修了。78年にイエロー・マジック・オーケストラ(YMО)に参加。83年に散開。映画「戦場のメリークリスマス」で英国アカデミー賞作曲賞受賞。映画「ラストエンペラー」でアカデミー作曲賞、ゴールデングローブ賞受賞。環境問題や脱原発などさまざまな社会的問題にも取り組み、東日本大震災の被災地支援として「東北ユースオーケストラ」などの活動も続けています。


 今日は天候も悪く、風も出るような予報でしたので江部乙にも行かず、籠っています。