里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

イタリアに行くと「日本は超貧乏国」と痛感…

2023年09月25日 | 生活

 豊かになるために転換するしかない“政策”は

デイリー新潮 9/25()

 

岸田改造内閣が真っ先に取り組むべきは…

 日本にいると、他国にくらべて日本人の賃金が低いことを実感しにくいが、いま海外に行くと痛感する。なにもかもが高いからである。そのことを報告したいのだが、その前に、日本人の賃金がどれほど低いのか確認しておきたい。

 各国の平均年収はOECD(経済協力開発機構)が公表している。先進諸国を中心とする加盟38カ国のデータにかぎられるが、概ねそれで不足はないだろう。

 2021年の統計を見ると、日本は39,711ドルで全体の24位。下位に甘んじている。アメリカの74,738ドルはもちろん、スイスの68,957ドル、オランダの6923ドルにも大差をつけられている。ドイツの56,040ドル、カナダの56,006ドル、イギリスの49,979ドル、フランスの49,313ドル、イタリアの4767ドルより低く、すなわちG7のなかで最下位である。

 もっとも、2000年の統計でも、日本の38,823ドルはG7で最下位だったのだが、問題は、2000年当時は日本より平均賃金が低かった国が、2021年には続々と日本の金額を抜いていることだ。

 37,155ドルだったアイルランドは51,045ドル(上昇率37.38%)、36,018ドルだったイスラエルは42,165ドル(同17.07%)、35,613ドルだったスウェーデンは48,951ドル(同37.45%)、32,802ドルだったニュージーランドは46,976ドル(同43.21%)、29,550ドルだったスロベニアは43,992ドル(同48.87%)、そして29,505ドルだった韓国は42,747ドル(同44.88%)に上昇し、日本を抜き去った。

 一方、日本の上昇率は2.29%にすぎないから、相対的に賃金が下がっていくのは当然だ。2000年時点で日本よりずっと上位にいた国も、賃金上昇率はアメリカが29.98%、オランダが10.45%、ドイツが17.66%など、日本にくらべてはるかに高い。文字どおり日本の一人敗け状態である。

円安をキープした異次元緩和策の大罪

 この20年のあいだにどんな経済政策が行われたかといえば、最大のものはいうまでもなく、201212月に発足した第2次安倍晋三内閣がデフレ脱却を目的に掲げた経済政策だった。すなわち、大胆な「金融政策」、機動的な「財政政策」、民間投資を喚起する「成長戦略」という「3本の矢」を掲げたアベノミクスである。

 とはいっても、現実には成長戦略はうまく講じられず、財政赤字が拡大し続けるなかでは財政政策も困難だった。このため唯一、金融政策が突出することになった。20133月に就任した日本銀行の黒田東彦総裁が、異次元の金融緩和政策を打ち出し、今年4月に退任するまでこの緩和策を堅持した。

 その結果、どうなったか。円は1ドル=80円程度だったのが急下降し、いまでは140円台をつけている。その結果、輸出産業の利益は大幅に増し、株価も上昇。8,600円だった日経平均がいまや3万円を超えているのは、周知のとおりである。

 では、それでよかったのかといえば、とんでもない。異次元緩和によって引き起こされた円安で、企業は濡れ手で粟の利益を得たが、ふつうは日本の輸出が増えれば円高に反転して、輸出企業は利益を上げにくくなる。そこで生産性を引き上げるために、技術革新が重ねられる。日本企業はこれまで、こうして困難を乗り越えては生産性を高めてきた。

 ところが、黙っていてもゼロ金利政策のおかげで円安が維持されるので、輸出企業はあぐらをかいた。だから賃金も上がらない。そのうえ円安だから、諸外国にくらべて日本人の購買力は低くなる一方だった。

 それでも日本が自給自足できる国なら、諸外国より賃金が低くても影響は少なくて済むだろう。だが、たとえば食料自給率はどうか。農林水産省が公表している2020年のデータによれば、カロリーベースでカナダ221%、オーストラリア173%、アメリカ115%、フランス117%、ドイツ84%、イギリス54%、イタリア58%、スイス49%に対し、日本はわずか38%。先進国(もはや日本が先進国であるか疑わしいが)のなかで、群を抜いて低い水準なのだ。

円安に誘導されて日本人は先進国随一の貧乏国に

 日本の食料自給率は、1960年代には70%を超えていたが、日本は食糧安全保障を放棄して、輸入に頼る道を選んだ。それなのに、輸出企業を助けるために異次元緩和を続けて円安を維持したのだから、食糧が高騰するのは当然である。それでも、せめて賃金が上昇すればいいが、ぬるま湯政策で企業の技術革新への意欲も減退し、賃金は上がらない。

 その結果、日本人がいま置かれている状況がいかにひどいか、この夏、イタリアに行ってよくわかった。地下鉄の初乗りが320円、自動販売機の缶紅茶は320円、タクシーで2キロ程度移動して1,900円、グラニータ(カップに入った氷菓)を立ち飲みして650円、ガソリンが1リットル315円……。

 また、比較的大衆的な店でパスタを食べても、12,500円はくだらないし、ホテルの宿泊費は数年前に12万円程度だったところが37,000円。いわゆる高級ブランド品などは、21世紀初頭の3倍、4倍になっている。

 じつは、イタリアも賃金はあまり上がっていないのだが、通貨は堅実なので、すべてが割高になるような事態にはいたっていない。ましてや、イタリアを訪れる日本以外の外国人観光客にとっては、賃金の上昇分で価格高騰のある程度は補えてしまうのではないだろうか。

 そう考えて、日本人だけが貧しくなっている現状に気づかされるのである。最低賃金を引き上げたところで、問題はなにも解決しない。ガソリンや電気料金、ガス料金への補助金支給を延長しても、ツケが後世に回されるだけだ。そうではなく、アベノミクスと異次元緩和の非を認め、ゼロ金利政策を抜本的に転換するしかないのではないか。

 企業を助けてぬるま湯につけ、株価だけ上げて国民を貧しくした。そんな政策を改めることからしか、はじまらないのではないか。企業の業績が一時的に下がってもいい。日本企業はこれまで、どんなに円高になってもそのたびに技術革新を重ねて、乗り切ってきたではないか。

 そんな努力の機会を奪う政策が日本を、そして日本国民をどんどん貧しくしている。岸田改造内閣が真っ先に取り組むべきは、そこだと思うのだが。

香原斗志(かはら・とし)

音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。


国民の暮らしより「軍事費」を集めるために必死のキシダ政権だ。

発熱から10日経った。明日から農作業を始めようと思う。
よく寝た。