事実確認の廃止 メタまで変質するとは
「東京新聞」社説 2025年1月15日
フェイスブックやインスタグラムなどを運営するSNSの世界最大手「Meta(メタ)」のザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が、投稿内容を巡る第三者機関によるファクトチェック(事実確認)を米国では廃止すると発表した。日本では継続するという。
投稿規制を批判してきたトランプ次期大統領ら保守派に擦り寄った形だ。うそや中傷が放置されれば、だまされ、傷つく人が増え、陰謀論のまん延や社会の分断に拍車をかける可能性がある。事実確認は継続すべきである。
メタがファクトチェックを導入したのは2016年12月。トランプ氏が1期目の大統領当選を決めた直後だった。対抗馬だったヒラリー・クリントン氏をおとしめる虚偽情報が広がったためだ。
ロシアによるSNSを通じた選挙介入なども問題となり、投稿規制の強化が続けられてきた。21年1月の米連邦議会襲撃事件では、暴動をあおったトランプ氏の利用を停止し、関係は悪化した。
しかし、トランプ氏の返り咲きが決まると、ザッカーバーグ氏はトランプ氏への巨額の寄付を表明し、関係改善に転じた。市場独占を問題視して厳しい姿勢をとってきた民主党政権への反発と、権力に接近して市場での優越性を維持したい思惑が透けて見える。
いちはやくトランプ氏に取り入った実業家マスク氏が保有するSNSのX(旧ツイッター)では、すでに虚偽情報や差別的な投稿が急増している。
ザッカーバーグ氏は事実確認停止について、第三者機関が「政治的に偏りすぎた」と説明したが、米オハイオ州立大によると、虚偽情報は保守派が流布する傾向にあり、第三者の事実確認は当然だ。昨年の大統領選で「移民が米国民のペットを食べている」とのうそを拡散したのも保守派だった。
ザッカーバーグ氏は、選挙結果をゆがめるほど虚偽情報が広がり社会を分断した経緯を直視すべきだ。SNSはもはや言論空間を支配し、人々の暮らしや社会に大きな影響を与える存在である。その重い責任から逃れてはならない。
Xやフェイスブック・インスタグラはもうやめるべき時に来たように思う。