現状に深い危機感 貧困層・少女に人生変える能力を
「しんぶん赤旗」2022年9月21日
【ニューヨーク=島田峰隆】グテレス国連事務総長は19日、国連本部で開かれた「教育変革サミット」で演説し、先進国と貧困国の格差や、富裕層と貧困層の間の格差が広がっているとして「教育に予算をあてることは各国政府の最優先事項にならねばならない」と訴えました。
教育変革サミットは第77回国連総会に合わせて、グテレス氏が呼び掛けました。新型コロナウイルスの感染拡大による学校閉鎖や、社会の変容に教育が追いついていないことなどによって「教育の危機」が世界的に深刻化しているとして、教育を国際社会の最優先課題に引き上げ、行動を促すことが目的です。
グテレス氏は、貧困国では10歳までに基礎的な文章を読む力を身につけていない子どもが約7割おり、高校を修了していない生徒は半数近くに達し、7億人の非識字の成人がいることなどを挙げて「教育は深い危機の中にある」と述べました。
また先進国でも教育制度が世代を超えて不平等を再生産していると指摘。「富裕層は学校や大学に進学し、最良の職を得る一方で、貧困層、特に少女は人生を変える能力を身につけるうえで巨大な障害にぶつかっている」と語りました。
グテレス氏は、変革の方向として、▽すべての子どもや若者の学習権を保障する環境づくり▽教師の能力や自主性を拡大し、教師に人間らしい労働条件を保障して若者にとって魅力ある職業にする―などを強調。また教育は単なる消費支出ではなく、「どの国にとっても教育予算は国民とその将来への唯一の最も重要な投資になる」と教育予算の拡充を求めました。
国連によると、新型コロナのパンデミック(世界的流行)の影響で、世界の子どもの9割以上が教育の中断を経験しました。
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待ち受ける「軍事大増税」ラッシュ…防衛費5兆円増の財源に「つなぎ国債」発行で布石着々
日刊ゲンダイDIGITAL 2022/09/21
増税ラッシュの足音が聞こえてくる──。2023年度予算編成の最大の焦点となっている防衛費増額の財源。岸田政権は財源確保策として「つなぎ国債」を発行する方向で検討していることが明らかになった。防衛力強化や財源を議論する有識者会議の初会合を30日に開く。
防衛費について、自民党内ではNATO(北大西洋条約機構)水準のGDP比2%以上への増額を求める声があり、5兆円規模の安定財源確保が必要となる。「何らかの将来の償還財源を念頭に置くことは、財政健全化を考えれば必要」(鈴木俊一財務相)、「国債は駄目との立場は取らない」(木原誠二官房副長官)と「つなぎ国債」をにおわす発言が相次いでいたが、どうやら本気で発行するようだ。
「つなぎ国債発行は増税とセットです。当面は借金でしのいでおいて、後で財源を捻出し、ツケを返済するということです。防衛費増額のために5兆円のつなぎ国債を発行すれば、必ず5兆円の増税が行われます」(立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏=税法)
つなぎ国債は東日本大震災の復興事業で活用された。その後、「復興特別」と称して所得税や法人税を引き上げ、ツケ払いに充てられた。
■いずれ消費税もターゲット
防衛費増額の財源には、法人税を軸に金融所得課税やたばこ税も検討中だ。与党関係者が経済界の一部に財源案の大枠を伝えたという。
「まずは、富裕層向けや嗜好品への増税から入るのでしょうが、いずれは、所得税や消費税もターゲットにされるのは間違いありません。国防の充実は、収入に限らずあらゆる国民が恩恵にあずかるなど、いくらでも理屈はつけられます。この先、戦時国債のように、どんどんつなぎ国債が発行され、次々と増税が行われる恐れがあります。財源の裏づけがあり、財政規律は維持できるので、財務省は文句を言わない。増税による軍事大国化が加速しかねません」(浦野広明氏)
「何もしない」と称されてきた岸田政権だが、軍事大国への道筋はクリアなようだ。つなぎ国債の発行を許せば、軍事は栄え、暮らしはボロボロになる。
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「お金がないから子どもを持てない」少子化が進む日本と韓国だけ異質な教育費負担
荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
yahoo!ニュース(個人)9/21(水)
結婚も子育ても贅沢品
「お金がないから結婚できない」という層が一定数いることはこの連載でも何度か指摘してきた(→「年収200万未満で豊かに暮らせ?」最低限度の生活しかできない未婚男が恋愛や結婚を考える余裕はない)。同時に、「お金がなくても結婚はできるが、お金がないことで離婚に至る夫婦も多い」ことも事実である(→「金がないからイライラ?」現代夫婦の離婚事情がハードボイルド化)。加えて、「お金がないから子どもを産めない」という話もある。つまり、お金がないということで「結婚も子どもも作られなくなる」わけである。
結婚生活は経済生活なので、お金のことは切っても切り離せない問題ではあるのだが、もはや「結婚も子育ても金次第の贅沢品」と化しているのだ。
ここで、勘違いしてはいけないのは、この「お金がない」ということとは「食うに困るような貧困」と同義ではないということである。
かつて、日本の中心だった中間層がここ30年間「給料があらない時代」の中におり、消費税の増税や社会保障費の細かい値上げなどで可処分所得は減り続け、そしてここにきて生活費全体のインフレにより、全体的に生活が苦しくなってきている。特に、子のいる家庭にとって、子の教育関連費の負担が大きくなってきている。
所得は増えないのに授業料はあがる
顕著な例は、大学の授業料と親の所得との関係である。
ご覧の通り、国立大はともかく、私立大に関しては平均で授業料があがり続け、所得の増えない親の負担は増すばかりだ。平均よりはるかに授業料の高い医学部などはもっと大変だろう。
親に負担をかけられないと、奨学金を借りて進学したものの、その返済に窮する子もいれば、そもそも自ら進学を断念してしまう子もいるだろう。
進学しない事で就職先や生涯賃金にも格差が生まれるばかりか、その流れで子の結婚にまで影響を与える。そうした親の所得によって子の未来が確定されてしまうという現実もある。
そうした現実の中で、「本当はもう一人子どもがほしいけど、今いる子の教育費を考えると無理だからやめておく」という夫婦がいたとしてもおかしくはない。「多く産んでみんなが貧しくなるよりは、少なく産んでその子に苦労はさせたくない」と考えるのも親心だろう。
事実、もはや、親の所得と子の数とはほぼ相関しているからだ(→「貧乏子沢山」どころか「裕福じゃなければ産めない」経済的少子化と「裕福でも産まない」選択的少子化)。
それを受けて、公立だけではなく私立も含めて、学校に関わる教育費を無償にするなど公的支援の必要性の声も高まるのだが、実態はそれでは解決しない。
日本と韓国だけ異質な教育費用
2020年内閣府が実施した「少子化社会に関する国際意識調査」に興味深い結果が出ている。日本、フランス、ドイツ、スウェーデン、米国、韓国という6カ国において「子育てにかかる経済的な負担で大きいもの」は何かを聞いている(米国と韓国は2010年調査)。
これによれば、日本と韓国という東アジアの国とフランスなどの欧米諸国とで明確な違いがある。
日本と韓国でもっとも大きな負担となっているのは「学習塾など学校以外の教育費」で、日本では59.2%、韓国では71.7%にものぼる。欧米諸国が多くてもドイツの24%であるのに比べてきわめて大きい。日本の場合は、「学習塾以外の習い事の費用」も他国と比べて大きい方だ。つまり、日本の親を苦しめているのは直接的な学校教育費ではないということになる。
学習塾にしても、習い事にしても、経済的に余裕のある親がやればよいではないかと思うかもしれない。しかし、中間層の親にしてみれば、余裕があろうがなかろうが、子の将来のためにここにはお金を惜しみたくないというのが正直なところだろう。
それ以上に、やらなければ他所の子と差がついてしまうという恐れがある。差がついてしまうということは子の未来に差がつくことを意味するだけではなく、他の友達と一緒ではないということで、仲間はずれなどのいじめにもつながるリスクもあるからだ。
親の格差が子の格差へ
そうして競い合うように、親たちは学校以外の教育費に無理をするようになる。物理的に無理ができない層は子どもそのものを諦めていく。学校以外の教育費負担がもっとも大きい韓国は、合計特殊出生率が唯一1.0を切る世界最下位の少子化国家でもある。
奇しくも、いつのまにか日本より出生率が低くなってしまった中国も、2021年に「学習塾禁止令」を出している。
小中学生を対象とした学習塾の新規開設および営利目的の活動は一切禁止というもので、小学校1~2年生に対しては宿題すら禁止という厳しいものである。中国政府はこれを少子化対策であるとは明言していないが、少なくとも中国でも教育に金がかかりすぎて、そもそも結婚することすら避けるようになってきたという事態に歯止めをかけたかった意図はあるだろう。しかし、金持ちはアングラで家庭教師を雇うだけで抜本的に何も変わらないだろう。
もう一度前掲の図表をみていただきたい。
日本と韓国は子供に対する学校以外の教育費のかけ方は尋常ではないのだが、レジャーやリクリエーションにかける費用は欧米と比較して圧倒的に少ない。
なんでも「欧米では」と比較したがる欧米出羽守になる必要はないのだが、日韓では教育という名目の詰め込みに終始して、一番大切な子どもの頃の遊びの楽しさや喜びの機会をないがしろにしてしまっているのだとしたら、それこそ子どもの将来にとってどうなんだろう。
そして、親が富裕層であればあるほど、学習塾や習い事だけではなく、このレジャーやリクリエーション、場合によってはよいファッションや美味い食事という経験を子にさせることができるという点がある。
教育費だけで精一杯の親はそこまで手が回らない。そこに子の経験の格差が生じる。
親のせいではない。
富裕層の親も中間層の親も貧困層の親も、それぞれが親として自分のできる範囲の中で頑張っているはずだ。しかし、どの親も頑張っているはずなのに、その子の格差は確実に広がっていく。やがて、それは、結婚できる子、できない子、子を持てる子、持てない子という形で顕在化するのだとしたら残酷なことである。
「国葬」「軍事」よりこどもの教育と子育て世代への援助を!「スタートライン」にさえ立てない子をなくすために。