AERAdot 2024/11/28
つばさの党の人たちはまだ塀の中にいるという。
今年4月、東京15区で行われた衆議院議員の補欠選挙中、他陣営の選挙活動を妨害したとして、「つばさの党」の代表らが5月以降に逮捕・起訴され、半年間にわたって勾留されている。「選挙の自由妨害」を犯した公職選挙法違反の罪に問われている。彼らは、小池百合子都知事が現れたら「おい、嘘つき」と呼びかけ、維新の候補者には「大阪ぶっ壊しておいて今度は東京をぶっ壊すつもりか?」とがなり立て、乙武洋匡さんには「不倫はダメだぜヘイヘイヘイ」とふざけ、百田尚樹さんらの日本保守党には「日本を壊した安倍晋三を崇拝して、保守とか言っちゃってる。頭悪すぎ」と一蹴し、れいわの山本太郎さんに対しては「洗脳をするな!」と叫ぶ……傍から見たら乱暴だが、言っていることは「確かに」と思っちゃったりもしたのであった。でも、そういった「本音」を、思うだけではなく、マイクでがなり立て、大騒ぎし、候補者の演説が聞こえなくなるレベルだと逮捕されるのである。公職選挙法とは、かくも厳しい。民主主義の根幹である選挙を守るために、とてつもなく、厳しい。
先の兵庫県知事選挙で「(斎藤元彦陣営の選挙の)広報全般を任された」と公開したPR会社の社長の投稿が今、世間を賑わせている。県庁職員が自死した説明責任を問われるも何ら明らかにならず、日本全国から知事としての資質を問われ、失職して孤立無援状態であった斎藤さんが、有権者の心を次第に掴み、「斎藤さん、頑張れ!!!」の熱狂に包まれていく過程には、自身のPR戦略の成果であることが詳細に記されていた。
社長の投稿には、「SNSを活用して『斎藤知事を応援したい』『兵庫県をよくしたい』という想いをプラットフォーム化し、ムーブメントを起こす!!! 狙い:県民にメッセージを投げかけ、今回の選挙を自分ごと化、さらには応援してもらう」という提案の資料が紹介されている。今回の選挙ではSNSの影響力が大きかったことは、当選後のインタビューで斎藤知事も認めている。それまでメディアで批判される斎藤知事を「ここまでたたかれているのに、なぜ辞めないんだ?」と疑問に思っていた多くの人々が、SNSを通して「斎藤さんはメディアの被害者だったんだ!」と意識が変わっていき、選挙が自分ごとになり、斎藤さんを応援しなければ! と、積極的に演説に足を運び、選挙を盛り上げていくというムーブメントが生まれたのだ。それはそれは、PR会社としては最高の充足感を味わったことだろう。社長の投稿では「選挙は広報の総合格闘技」という名言が残されている。そこには勝者の酔いを感じる。
感心する。このPR会社の社長さん、優秀である。自分の仕事に忠実で、クライアントに誠実で、努力を惜しまず、アイデアを形にしていく。ネット戦略に長けたこういうPR会社の社長がいたからこそ、斎藤さんは、1カ月前までは誰も想像していなかった快挙を成し遂げたのであろう……などと、私など、素直に感心してしまいそうなのだが……危ない、危ない。SNSなどの広報をお金を払って依頼することは、そもそも公職選挙法に違反することなのであった。知っていましたか? たぶん、フツーの人は知らない。その証拠に多くの人が、このPR会社の社長のXやインスタなどに「お疲れ様でした!」といった好意的なメッセージをリプライしている。
とはいえ……今回のことで明らかになったのは、もしかしたら斎藤さん自身も、公職選挙法、読んでないのではないですか?という大いなる疑問である。読んでいたとしたらすごくヤバく、読まないでやっていたとしてもヤバい。いずれにしても、このような投稿が公開されてしまう超脇甘な背景には、斎藤陣営に、「選挙のルール」の無視/軽視/無知があったということは否めない。今、SNS上では、PR会社の社長が若い女性ということもあり、ミソジニーを交えた批判が飛び交っている。「無能な味方に後ろから刺された斎藤さん」という嘲笑も多く目にする。そして今のところ斎藤さんは、PR会社の社長について「彼女はボランティアの一人」と主張している。先週金曜日にこの件で代理人になった弁護士は、本人が記者会見で認めたように選挙中のことやPR会社社長の投稿を全て把握しているわけではないのに、「(PR会社の社長は)盛っている」と言い切った。SNS上では「籠池される」という言葉も生まれているが、斎藤さん側の言い分が正しいのなら、PR会社の社長は妄想と自己顕示欲が激しいおかしな人……となってしまう。気の毒である。
それにしても一体……2024年ももう少しで終わるというのに、この半年間、私たちはどれだけ兵庫県知事問題にひきずられているのだろう。そしてなぜ、こんなにも斎藤さんを巡る「物語」は、これほどまでに「現代社会」の上澄みをきれいにすくいとって表象してくれるのだろう。
テレビや新聞が斎藤さんをたたけばたたくほど、「斎藤さんが被害者になっていく」方程式。「何が真実かは本当にはわからない=報道は事実ではない」という社会的な空気。今回初めて政治に興味関心を持った(とご本人が記している)高学歴で優秀なPR会社の若い経営者が、政治的な信念ではなく、仕事として広報を引き受ける(とご本人が記している)ことへの軽々しさ。そして選挙のプロであるべき人たちが、ルールを知らずに闘っているらしいこと……そのくらいに、私たちの社会を動かしているのが「よくわからない空気」のようなものであること。
ここまで書いた段階で、斎藤さんの記者会見を見た。記者たちはかなり斎藤さんを追いつめる質問をしていたが、斎藤さんは全ての質問にAIのように「代理人弁護士に一任している」だけを繰り返した。「知事にしか、答えられない質問だから聞く、今、どう思うか?」とった質問にも明解に答えられず、「公職選挙法に違反していないと思う根拠はなにか」という質問にも歯切れがとても悪かった。つまりは、「自分が公職選挙法に違反している認識はないから違反していない」とつぶやき続けているような記者会見だった。
斎藤さんの目は、少しだけ、私には怖い。目がほとんど動かず、人と目をあわせている感じがなく、どんな質問にも同じ声のトーンで答える。何を考えているのかが全くつかめないのに、「高校生からやめないでという手紙が来た」という「感動話」を淡々と語る。今、どういう状況にご自身がいるのかわかっているのだろうか。
今、斎藤さんが語るべきは、「本当のこと」だ。「言えないこと」が積み重なり、「推測すること」が積み重なり、「何が事実かわからない」空気のなかで、政治家に求められるのは、嘘をつかず、責任を果たし、懐の深さを見せ、感情を出し、人々に本当の言葉を届ける人だ。斎藤さんの心のない、責任のない、意味のない記者会見を聞いて強くそう思う。そして全方向で叩かれているPR会社社長の折田楓さん、怖いかもしれないけれど、本当のことを堂々と言ってほしい。#折田さん頑張れ! である。
なんともいやはや!!
園のようす。
明朝から雪の予報。
これが根雪になるかもしれない。
最後の収穫、小さなサイズの赤大根、ウサギにおおかた掘られ、残った小さな人参。
菊芋は全部掘らずバケツ1杯だけ収穫。
あと残るは雪囲いとネズミ対策の茎に網を張る仕事。
菊芋