札幌の弁護士「貸し出し履歴、思想・信条に直結」
「しんぶん赤旗」2021年2月8日【社会】
令状なし 全国で
「図書館は利用者の秘密を守る」―。日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」です。それにもかかわらず、警察が裁判所の発行する令状によらない、捜査関係事項照会で特定の利用者の情報を図書館に求めた事例が全国で多発しています。(矢野昌弘)
苫小牧市立中央図書館が北海道警の求めに応じて、特定の利用者の貸し出し履歴や予約状況などを提供したことが2018年に発覚しました。
提供を求める際、北海道警は裁判所が発行する令状ではなく、捜査関係事項照会書を図書館に提示するのみでした。
札幌弁護士会では昨年、管内61市町村にある102の図書館にアンケート調査をしました。
その結果、回答した43館のうち10館が捜査機関から捜査関係事項照会をうけたと答えました。そのうち5館が照会事項に回答したとのべました。
権力肥大化
アンケートに取り組んだ札幌弁護士会の齋藤耕弁護士は「捜査関係事項照会書は警察の内部決裁だけで第三者のチェックがない。図書館の貸し出し履歴などは個人のプライバシーや思想・信条に直結する情報だ。裁判所に『こうした理由で必要だ』と令状請求して、裁判所が認める範囲で開示してもらうのが本来のやり方だ。事項照会書だけですますやり方は捜査権力の肥大化を招く」と批判します。
「図書館の自由に関する宣言」は、「図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく、自らの責任にもとづき、図書館間の相互協力をふくむ図書館の総力をあげて、収集した資料と整備された施設を国民の利用に供するものである」とうたっています。
しかし、ここ数年の各地の報道でも、全国で捜査機関による「令状なし」での利用者に関する情報照会が発覚した事例は3件となっています。
齋藤弁護士は「図書館は誰でも自分の関心に基づいて本を自由に借りられます。何に関心を持つ人間なのか警察に自分の知らぬ間に知られるところに気味の悪さ、危機感があります」といいます。
基準明確に
札幌弁護士会は昨年12月の会長意見書で「捜査機関が犯罪捜査のために利用者の同意なく図書館利用情報の開示を求めることは、強制処分として令状主義に服するものというべき」としています。
齋藤弁護士は「アンケートには『どのように対応すればいいのか、基準がほしい』という声も多かった。各地でこれだけ発覚しているのだから、あらためて基準を明確にすべき。全国の弁護士会で取り組んでほしい」とのべています。
近年に判明した令状なしの利用者情報照会
◆鹿児島県内の鹿児島、鹿屋、指宿(いぶすき)、薩摩川内市の4公立図書館が県警に利用者情報を求められ、カード発行の有無や、書名を黒塗りして貸し出し日時だけなどを情報提供。
◆沖縄県の那覇市立中央図書館が特定日の特定時間帯利用者の氏名や住所、生年月日の情報を提供。名護市立中央図書館は特定人物の図書カードが有効か、警察に回答。
◆富山県の高岡市立中央図書館が2007年以降、県警からの利用者情報の照会に4回提供。登録情報には、氏名や住所、電話番号、最後に利用した日などが含まれます。
これは危ない!できるなら、匿名でも図書館にくぎを刺しておいたほうが良いかもしれません。
今朝も大いに冷えました。
しかも、雪も降り続いています。雪は、明日いっぱい続くようです。