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ワクチンとはそもそもどんなもの

2021年03月19日 | 健康・病気

~基礎知識と、新型コロナワクチンが体を守る仕組みを徹底解説!

河岡義裕(東京大学医科学研究所教授)

(構成・文/浅野恵子)

imidasオピニオン 2021/03/19

 新型コロナウイルスワクチンの接種が世界で、そして日本でも始まった。しかし、主なワクチンだけでも、接種回数、持続期間、取り扱い方法がずいぶん異なる。
「mRNAワクチン」「ウイルスベクターワクチン」という言葉ばかりはよく聞くが、どんなものなのか説明しようとすると詰まってしまう人も多いのではないだろうか。
 体内に接種するものなのに、その仕組みや作用、正体を知らないままでいるわけにはいかない。そこで、「ワクチンとはそもそも何なのか」「どんな種類があるのか」「新型コロナワクチンの種類と違い」などについて、ウイルス研究の世界的権威である河岡義裕・東京大学医科学研究所教授に解説していただいた。

 

 WHO(世界保健機関)が2020年3月11日に新型コロナウイルスのパンデミックを宣言してから、1年が経ちました。この間、各国の研究機関や製薬会社がワクチンの開発に挑み、かつてないスピードで数種類のワクチンが完成に至りました。
 日本政府は国外の製薬会社3社と契約を結び、すべての日本人が接種できる数のワクチンを確保して、すでに医療従事者への先行接種を始めています。日本に供給されるワクチンはどういうものか、国内ワクチンの開発はどこまで進んでいるのか。今回はそれについてお話ししますが、その前に、そもそもワクチンとはどういうものなのか、そこから始めたいと思います。

そもそもワクチンとはどんなものか

 ワクチンとは、感染症の発症や悪化を防ぐ医薬品です。我々の体には、病原体となるウイルスや細菌などの異物(抗原)の侵入を防ぐ「自然免疫」という先天的な防御システムが組み込まれています。自然免疫をすり抜けて病原体が体内に入ってきた場合、それを異物として記憶することで、次に同じ異物が入ろうとするとき、「獲得免疫」という後天的な防御システムが作動し、異物を排除する物質(抗体)をつくるなどして侵入を阻止します。この働きを利用し、毒性を弱めたり失わせたりした病原体をワクチン(免疫原。免疫をつくるもと)として体内に入れ、防御システムをつくらせるのが、ワクチンによる感染症予防の基本です。
 ワクチンの第1号は致死率の高い天然痘を予防する「種痘」で、1796年に英国の医師、エドワード・ジェンナーが開発しました。ジェンナーによるワクチンは、ヒトの天然痘によく似た病気をウシにもたらす牛痘ウイルスを弱毒化したものです。
 その後、ジェンナーの手法が発展し、コレラ、ペスト、狂犬病など、細菌やウイルスによる感染症に対抗するワクチンがつぎつぎと開発されました。現在は、病原体となる細菌やウイルスを使用する従来型のワクチンだけではなく、さらに進歩した新しいワクチンも開発されています。

ワクチンの種類

 2020年まで、世界中で利用されているワクチンは大きく3つに分類されていました。新しいワクチンについても以前から研究されていましたが、新型コロナウイルスの出現で開発が一気に進み、ワクチンの種類がさらに追加されたのです。新しいものを含めて、現在実際に活用されているワクチンをごく簡単に説明します。

【生ワクチン】
 生ワクチンとは細菌やウイルスを「生かしたまま」、病原性 を弱めてワクチンとして利用するものです。ワクチンとして投与された病原体はまだ生きているので体内で増殖し、これに反応して抗体などがつくられます。言わばワクチンの原型で、結核を予防するBCGワクチンや風疹ワクチン、ロタワクチンなどがあります。

【不活化ワクチン】
「不活化」とは本来の働きを失わせる作用です。細菌やウイルスから毒性や感染性を除いてワクチンにします。生ワクチンと違い、投与された病原体は生きていないので増殖しません。インフルエンザや肝炎、日本脳炎などの予防に、不活化ワクチンが活用されています。

【サブユニットワクチン】
 生ワクチン、不活化ワクチンの技術をさらに発展させたのが、サブユニットワクチンです。細菌やウイルスの一部を酵母などで人工的に合成して投与するもので、帯状疱疹などの予防に使われています。

【mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン】
 新型コロナウイルスのワクチンとして新たに開発されたのが、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンです。mRNAとは、細胞内のDNAが持つ遺伝情報をコピーしてタンパク質をつくる物質で、いわばタンパク質の「設計図」です。ウイルスのタンパク質の一部だけをつくる設計図として加工したmRNAを投与すると、体内で目的のタンパク質がつくられ、それに反応した免疫システムが抗体をつくるという仕組みです。

【ウイルスベクターワクチン】
 ウイルスベクターワクチンとは、ウイルス感染症を別のウイルスで防ごうというものです。ベクター(運び屋)として使われるウイルス(ウイルスベクター)は、予防対象とは別のウイルスです。このウイルスを無毒化したうえで、予防対象となるウイルスのタンパク質の一部をつくる遺伝情報を組み入れて運ばせます。ベクターとなったウイルスに感染した細胞は、目的のタンパク質を合成し、体内ではそれに対する抗体がつくられます。新型コロナ用のワクチンが登場する少し前、エボラのウイルスベクターワクチンが開発され、承認されました。

日本で接種できる3種類の新型コロナワクチン

 21年3月現在、日本政府が契約したワクチンは、ファイザー社(米国)、モデルナ社(米国)、アストラゼネカ社(英国)製の3製品で、前者2つはmRNAワクチン、後者はウイルスベクターワクチンです。いずれも、従来のように免疫原を体の外でつくって投与するのではなく、体内でつくらせようというコンセプトで開発されています。mRNAワクチンは人類が初めて接種するワクチンで、ウイルスベクターワクチンも新しいタイプのワクチンですので、その仕組みについて少し詳しくお話ししましょう。
 体内に入ったウイルスは細胞内に侵入して増殖し、病気を発症させます。これが「感染」ですから、細胞内へのウイルス侵入を防御できれば、感染が避けられるわけです。
 新型コロナウイルスの場合、スパイクと呼ばれる外側の突起を利用して細胞内に入ります。スパイクを構成する「S(spike)タンパク質」が、細胞の表面にある「受容体」に結合することで、ウイルス本体が細胞内に侵入するのです。Sタンパク質が「鍵」、受容体が「鍵穴」と考えると分かりやすいと思います。なお、Sタンパク質単体には、毒性や感染性はありません。

 先ほどお伝えしたようにmRNAはタンパク質をつくる物質です。その性質を利用して、Sタンパク質だけを合成するように加工したmRNAを使っているのがmRNAワクチンです。これを接種すると細胞内でmRNAがSタンパク質を合成しはじめ、それに呼応して体がSタンパク質を排除する抗体をつくります。抗体はSタンパク質に作用して、受容体との結合を妨害します。いつか本物の新型コロナウイルスが体内に入ってきたとしても、抗体はウイルス表面のSタンパク質に同じように作用するので、ウイルス本体は細胞に侵入できなくなり、感染を阻止できるのです。

mRNA自体は1950年代に発見され、1980年代に人工合成ができるようになりました。ワクチンや病気の治療に使う研究は2010年代から行われ、それを完成させたのがモデルナ社とファイザー社です。mRNAはひじょうに壊れやすく、それだけを体内に入れるとすぐ壊れてしまうため、脂質の膜内に閉じ込めて体内投与します。モデルナ、ファイザー両社のワクチンはどちらも超低温管理が必要ですが、その管理温度が異なるのは、脂質の膜の違いによるものです。副反応も、脂質によって変わります。逆に言えば、人体への負担が少なく、管理しやすい適切な脂質の膜を探しだし、それをうまく加工することがmRNAワクチン開発のキーポイントと言えます。

 一方、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンは、アデノウイルスをベクターとして開発されました。アデノウイルスは一般的な風邪を引き起こすウイルスですが、それを細胞内で複製できないように加工し、新型コロナウイルスのSタンパク質をつくる遺伝情報を組み込んで体内に運ばせます。するとアデノウイルスに感染した細胞内でSタンパク質がつくられ、それに対する抗体もできるので、本物の新型コロナウイルスが侵入しようとしても防御できるのです。
 ウイルスベクターワクチンにおいては、ベクターに使うウイルスに「感染」する必要があるので、そのウイルスに対する抗体を持っている人には効果を発揮できません。ベクターとなるウイルスに何を選ぶかがキーポイントとなるでしょう。
 ヒトに感染するアデノウイルスはすでに多くの人が感染を体験し、抗体をもっています。そこでアストラゼネカ社はチンパンジーに風邪症状を起こすアデノウイルスをベクターに選び、ワクチンを完成させました。



 ちなみにロシアの国立研究機関が開発し、多くの国で使われはじめているワクチン(スプートニクV)もウイルスベクターワクチンですが、こちらはヒトのアデノウイルスを2種類組み合わせており、そのうちの1種類は、今まであまり流行を起こしていないものを用いています。

ワクチン接種の効果と注意点 

 新型コロナワクチンを接種すべきかどうか、迷っている方も大勢おられることでしょう。私は、すでに接種しました。モデルナ、ファイザー、アストラゼネカのワクチンは、現状ではいずれも新型コロナ感染症の発生予防や重篤化予防に高い効果が得られています。人類にとって未知のワクチンなので、接種から数年後の影響は未知数としか言えないのですが、自分の年齢を考慮すると、「ワクチンを打たない選択肢はない」、というのが私の結論です。
 しかし、注意すべき点はいくつかあります。ワクチン接種には副反応が必ずついてくるからです。治療薬にも効果とともに何らかの副作用があるのと同じで、副反応がまったくないワクチンはないというのが大前提です。ただし、日本社会はワクチン接種に対してひじょうに警戒心が強く、副反応が現れるとメディアが一斉にクローズアップする傾向があります。近年で言えば子宮頸がんワクチンが典型例で、日本はこのワクチン接種勧奨をやめてしまいましたが、先進国で子宮頸がんワクチンの接種を勧奨していないのは日本だけです。

 新型コロナウイルスのワクチン接種では、アナフィラキシーショックの例が国外から数件報告されています。アナフィラキシーショックとは極度のアレルギー反応ですが、発生頻度は数万人に1人ほどの割合です。

 アナフィラキシーショックの発生はワクチン接種後30分以内であることが多いため、接種者は30分程度その場所に留まること。また接種を行う側は、エピネフリン(交感神経を刺激し、アナフィラキシーの症状を緩和する薬)など、数種の対応薬を揃えておくことで対処できます。
 過去に強度のアレルギーを経験している方は医師に相談するなど注意が必要ですが、軽度のアレルギーがある方や花粉症の方はほとんど心配いりません。

 若い方のなかには、感染しても重症化しないので接種しない、と考える方が一定数いるようです。しかし、ウイルス感染による症状がすぐにでなくても、のちにさまざまな後遺症がでるケースがありますので、それを踏まえてワクチン接種を考えてほしいと思います。

 米国在住の研究仲間や友人たちの話では、mRNAワクチンを接種したあと、注射の箇所が腫れる、倦怠感に襲われるなどの副反応もあるようです。実際に接種日が決まったら、念のため翌日はゆっくり休める態勢を整えておくことをお勧めします。

国内ワクチンの開発状況~東大医科研 河岡ラボのワクチン開発~

 東大医科学研究所(東大医科研)内にある私たちのラボでも新型コロナウイルスに対する数種類のワクチン開発を行っていますので、現時点(2021年2月現在)の進展状況をお伝えします。
 私たちが開発しているワクチンの種類は、不活化ワクチン、サブユニットワクチン、mRNAワクチン、生ワクチンです。
 感染性を失わせたウイルスを利用する不活化ワクチンは、KMバイオロジクス社と一緒に開発を進めています。私たちのラボではすでにインフルエンザとエボラの不活化ワクチンを開発していますので、不活化ワクチンには副反応が少なく、安全性が高いことは確認済みです。製造工場も既存の施設が使えます。
 不活化ワクチンの開発では、生きたウイルスを大量に増やし、薬で不活化させたものを動物に打ち、抗体ができたことを確認しました。新型コロナウイルスに感染しても、ワクチンを接種した動物ではウイルスがほとんど増えません。現在、メーカーと共同研究をしており、近々臨床試験を開始する予定です。

 mRNAワクチンは東大医科研の石井健教授、第一三共社とともに進めています。このワクチンはmRNAワクチンを包む脂質の膜がポイントと先ほど述べましたが、第一三共が条件のよい膜を見つけました。
 サブユニットワクチンは、哺乳動物の細胞を利用して新型コロナウイルスのSタンパク質をつくる研究を、日本の企業と共同で行っているところです。

 生ワクチンは、培養細胞で増殖を続けることによって、ウイルスの病原性をなくすという従来から行われている方法を用いて開発しています。生ワクチンの場合、完全に弱毒化できているか、二度と強い毒性が戻らないか、厳密な検証が必要です。しかし完成すれば、毒性を弱めたとはいえ生きたウイルスを体内に入れるため、自然感染に近い免疫応答がおき、高い免疫力が期待できます。

 国内では私たちのラボのほか、多くの研究機関やワクチンメーカーが開発を進めています。いくつかのワクチンは臨床試験が始まる段階まで進んでいますが、承認を得て実際に供給されるまでには1年半ぐらいの期間が必要です。臨床試験は「フェイズ1」から「フェイズ3」まで、被験者の人数を増やしながら3段階に分けて慎重に行わなければなりません。そのため時間はかかりますが、私たち日本の研究者も必死で取り組んでいます。

「国防」としてのワクチン開発の重要性

「日本のワクチン開発はなぜ遅れているのか?」
 最後は、メディアでよく取りあげられるこの問いにお答えします。日本では安全性を重視し、ワクチン開発も慎重に進めています。
 ただ、それよりももっと大きな原因は、ワクチン開発に欠かせないウイルスや遺伝子などの基礎研究に、これまで十分な投資がなされていなかったことです。従って最新の設備や優秀な人材の確保も充分ではなく、基礎研究に力を入れてきた国から遅れてしまいました。
 たとえば中国は2005年に高病原性鳥インフルエンザが大勢の人に感染したことが契機となって、基礎科学研究に多大な予算を投じるようになりました。その額は同じ分野でトップを走る米国に劣らないと言われます。結果、新型コロナの流行が起きて1年足らずで、国産の不活化ワクチンを2種類完成させる成果をあげたのです。
 新型コロナウイルスのパンデミックで、日本でもにわかにワクチン開発の予算が組まれました。しかし、たとえ莫大な資金が提供されても、基礎研究の遅れは簡単にとり戻せません。世界中で新型コロナウイルスのためのワクチン開発が一斉にスタートした時点で、日本は米国や中国から周回遅れになっていたのです。
 ウイルスによるパンデミックは、新型コロナウイルスが決して最後ではありません。地球上には、我々人類にとって脅威となり得るウイルスが数多く存在しています。今回のパンデミックで明らかになったように、自国製ワクチンの開発は国防にも外交にもつながるのです。
 次のパンデミックに備えるためには、長期的なワクチン戦略を立て、国内でタイプの違う数種のワクチンをいち早く開発、生産できる体制づくりが急務だと考えています。

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 今日、役場にワクチン接種を希望しないとハガキを出してしまった。
こんな田舎にいたら必要ないのではないかと考えてのことだ。仕事は風の吹き抜ける畑だ。ハウス内にはやたら人は入れないし、換気もよい。不特定多数の人と会う機会もない。ほとんど可能性はないと思うのだが…



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