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ファミマ「お母さん食堂」抗議、高校生の声を封じ込める感情的な大人たち

2021年01月09日 | 生活

鎌田和歌:フリーライター

DIAMONDonlin 2021.1.8 3:25

ファミリーマートのプライベートブランド商品である「お母さん食堂」の名称に、高校生たちが変更を求める署名を始めた。性的役割分担の固定化につながることを懸念しての取り組みだ。しかし、この署名には、ネット上で「大人」たちから感情的なバッシングが巻き起こっている。(フリーライター 鎌田和歌)

 

ファミマ「お母さん食堂」への抗議とは

 高校生が行った署名活動がネット上で大きな物議を醸している。いや、高校生の問題提起を大人たちが寄ってたかってたたいているというのが正しい表現かもしれない。

 署名サイトで賛同が呼びかけられたのは、「ファミリーマートの『お母さん食堂』の名前を変えたい!!!〜一人ひとりが輝ける社会に〜」というキャンペーンだ。2020年末までの期間限定で集められ、1万筆の目標には届かなかったものの、締め切りまでに7268筆が集まったことが報告されている(2021年1月4日現在)。

 署名の内容は、タイトルの通りで、大手コンビニチェーン・ファミリーマートのプライベートブランドである「お母さん食堂」の名称を変えてほしいというものだ。

 ファミリーマートは、総菜から冷凍食品、カット野菜や「サラダチキン」に至るまで、自社ブランドの食材に「お母さん食堂」のロゴを入れて販売している。売り場で「お母さん食堂」商品が占める割合はかなり多く、イチオシであることがうかがえる。イメージキャラクターは、かっぽう着姿の香取慎吾だ。

 ホームページには「お母さん食堂は、『家族の健やかな生活』を想って作った、美味しくて安全・安心な食事と食材を提供するブランドです」とあり、孤食の時代においても温かな家庭の味を思い出してほしいという意図なのだろう。

日本は性的役割分担の意識が強いという高校生の気づき

 一方、高校生たちが名称変更を求めた理由は、署名募集サイトで詳しく説明されている。

「先日、ジェンダーや男女平等について学ぶ機会がありました。『男性は仕事、女性が家事』という考えが日本には、まだ多く残っていることを知りました」

 高校生らが訴えていることを要約すると、大手企業が全国で展開する商品名には影響力があり、性的役割分担の考え方をそのまま再生産することにつながってしまいかねず、それを見た子どもたちが「お父さんは仕事、お母さんは家事」の意識を内面化することに危機感を覚える、ということだろう。

 説明の中では、数字によるエビデンスも挙げられている。たとえば、小学校5〜6年の女子と男子では、料理の手伝いを「いつもしている」「時々している」と回答した割合が、女子(76%)と男子(53%)で差があるという調査(独立行政法人国立青少年教育振興機構による「青少年の体験活動等に関する意識調査」平成28年度調査)が引用されている。

 女性が社会進出してもなお、家事・育児の負担は女性に任される現実があり、「無償労働時間」を男女で比較してみると、国際的にも日本の女性が担う割合は大きい(参考:内閣府男女共同参画局 コラム1『生活時間の国際比較』)。日本は男性が外で働き、女性は家庭で働くという性的役割分担の意識が強い国だ。

男女不平等はキャリア形成で感じやすい

10代半ばで問題提起した高校生たち

 今の世の中は男女平等かのようにうたわれるが、実際は「性的役割分担」の意識は根強い。女の子は家事や料理など、いつか「お母さん」になるための準備の方が必要だという考え方は、社会の隅々に行き渡っている。逆に男の子には「妻子を養う男らしさ」が求められがちであり、男女双方の生き方の幅を狭めている。

 このことが、女性がいざ就職活動をするときに、「結婚・出産した後に仕事を続けるつもりはあるか」と聞かれるなど就職差別につながることがある。男女間の賃金格差や、非正規雇用に就く人の割合は言わずもがなである。

 たとえ男性と同じように真面目に勉強して就職活動に成功しても、結婚・出産後にキャリアを閉ざされる女性はいまだに少なくない。

 そして、このような男女間の不平等は、就職を考える時期までは気付きづらいのも事実だ。高校生たちが10代半ばの時点でこの事実に行き当たり、性的役割分担を内面化させる社会の刷り込みに問題提起したことは素晴らしいと感じる。

 しかし高校生たちの問題提起は、ネット上では「大人」たちから寄ってたかってバッシングされた。

高校生たちに寄せられた「言葉狩り」「反社だ」

大人たちによる中傷

 ツイッターなどで見られる批判的な意見は、「営業妨害」「表現の自由の侵害」「暴力」「言葉狩り」など。「反社だ」という指摘さえある。非常に強い言葉で署名をなじったり、「(署名数が)7500人の惨めな結果で本当に良かったです」「署名がヘボい人数で終わってて草 フェミはもうキモい存在になったんだよ」など、結果をあざ笑い、中傷するようなコメントも少なくない。

 署名を集めるのは本来、弱い立場の人たちが影響力のある事象に向けて抗議の声を上げるときに使われる手法であり、「営業妨害」や「暴力」ではないし、ましてや「反社」ではない。むしろ高校生の活動をこのように大人たちが中傷することの方が自由の侵害であり「言葉狩り」だ。

 高校生たちの作成した署名を呼びかける文章と、こういったネット上の反応のどちらが感情的かと言ったら間違いなく後者だろう。

 手が込んでいるのは、フェミニストを自称する女性イラストのアイコンが「私、8回署名した!」「スマホを借りて、8人分の投票をしただけです」などと書いたツイートがスクショされ、「絶対に笑ってはいけないお母さん食堂署名サイト」とさらされて2万回以上リツイートされていること。

「私、8回署名した!」とツイートしているアカウントは、フェミニストを揶揄(やゆ)するために作られた偽装アカウントの可能性も高い。真偽が不明にもかかわらず、「一人で8回署名した宣言している人がいる」という情報だけが独り歩きし、ファミマに「通報」を呼びかける人まで現れている。

 ちなみにツイッター上では、おとしめたい陣営の一員であるふりをして隙のあるツイートを連投し、その属性の人たちの発言力を弱めようとする悪質なアカウントがある。まるでトロイの木馬戦法だ。

なぜ高校生たちへの攻撃は黙認されるのか

 もはや高校生たちへの中傷を超え、署名の信用性をおとしめようとする名誉毀損と言っても過言ではない。

 ツイッター上での誹謗中傷やネットリンチは、2020年に大きな社会問題となった。しかし、そんなことはまるでなかったかのように、ネットユーザーたちは面白おかしく高校生や署名に賛同する人たちをたたいている。コンビニの冷凍庫に入って遊んだ未成年が「炎上」したときよりも、よっぽどたたかれているように見える。

 署名を集めるのが、そんなに悪いことなのか。

 さらに言えば、署名発案者らに寄せられるこのような攻撃は黙殺されている。

 たとえば、この問題を取り上げたネット番組「AbemaPrime」に出演したお笑いジャーナリストのたかまつなな氏は、「問題提起のための運動なのだとしたら、ファミマにかみ付くのが有効だったのか、そこは疑問だ」と発言したが、匿名・実名ユーザーたちからの高校生への過激なバッシングではなく、認められた仕組みを使って署名を集めることの方を「かみ付く」と表現すること自体にバイアスがかかっていることを自覚したほうがいい(参考: ABEMA TIMES)。

便利でありがたい商品だが、透けて見える社会の刷り込み

 「お母さん食堂」の名称はともかく、そのラインアップは個人的には嫌いではない。

 コンビニの総菜といえば少し前までは「おいしくない」というイメージが強かったが、そのような印象を払拭しようと商品開発に力を注ぎ、「まるで実家で食べているような、温かみのある食事」を味わってもらおうと「お母さん食堂」と名付けたのだろう。企業側の営業努力は推察するし、料理の苦手な人や忙しい人にとって便利でありがたい商品だと思う。

 コンビニのメインターゲットは20〜40代の単身者であろうことを考えると「お母さん食堂」が「お母さんの作るような食事を食べたい人」に向けてマーケティングされたことはわかる。ただ、そこにはやはり「私作る人、僕食べる人」と同じような役割分担を感じてしまう。

 昨年は、スーパーで「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」と言われた女性を目にしたというツイートが大拡散され、大きな話題となった。実際に、「母親なら手抜きをするな」「愛情のこもった手作り料理を作れ」という風潮はまだ強い。また、母親自身がその価値観を内面化し「出来合いの総菜ばかりでは、子どもがかわいそう」と思っていることも多い。「お母さん食堂」が、お母さんのための食堂と思える世の中ならよかったと思う。

 ツイッター上でも指摘されているが、女性と料理が「お母さん」というイメージで結びつけられるのに対し、ラーメンやカレーなどのパッケージに印刷されるのは料理人の男性たちである。女性の料理=無償労働、男性の料理=有償労働であるという社会の刷り込みはあるのだ。

嘲笑や冷笑では何も変わらない

 高校生らは、12月28日の加筆で再度「『お母さん食堂』という名称があることで、お母さん=料理・食事というイメージがますます定着し、母親の負担が増えることになると考えています」「今後も性別によって役割が決まったり、何かを諦めたりする世の中になる可能性が強くなることはとても問題だと思います」「この提案は、決してファミリーマート一社だけを批判するものではありません」と書いている。

 つまり、社会の認識や構造自体を変えていきたいという問題提起であり、単にファミマ一社をやり玉にあげたいわけではないということだろう。そのような構造自体への指摘をあえて無視し、大人たちが高校生の活動を「暴力的だ」と集団で封じようとする。その暴力性を大人が自覚してほしい。

 もちろん、ネット上では高校生たちの取り組みに賛同し、励ました大人たちもいた。

 批評家の北村紗衣氏は、署名サイトで

「2015年に国会前安保法制反対抗議で行われたSEALDSの「帰ったらご飯をつくって待ってくれているお母さん」演説を批判して強い攻撃を受けた者です」(原文ママ)

 と名乗り、下記のように書き込んだ。

「偉そうで恐縮ですが、経験者として申し上げます。あなた方がやっていることはひどい攻撃を受けると思いますが、ほとんどは女性や若者が意見を言うだけで文句をつけてくる、重みのない言葉を発するだけの人たちですから、気にすることはありません。あなた方の目的が今達成されなくても、あなた方がやったことは誰かが世の中を良くするための足がかりになります」

 日本語学者の飯間浩明氏は、言語のジェンダー性を研究しておらず、これまでのこの名称に問題意識を持っていなかったとしながらも、下記のようにTwitterで言及している。

「『こういった商品名は、少なくとも今後は避けたほうがいいだろう』という意見を持ちます。理由は、程度の大小はともかく、性役割の固定化に貢献することになるからです」

「『お母さん食堂』という商品名が、ただちに大きな問題を引き起こすとは言えません。むしろこの名称は、料理する母への懐かしい気持ち、親愛の気持ちを呼び起こします。その一方で、『母=料理する人』という鮮明なイメージを与えています。この点で、確かに性役割の固定化に貢献しています」(参照ツイート)

 声を上げた人を集団でたたく行動は、その後に声を上げようとする人に対しても影響力を持つ。「声を上げたらたたかれる」とわかっていて声を上げられる人は多くはないだろう。しかし、中には真摯に受け止める人もいて、世の中は少しずつ変わっていく。

 嘲笑や冷笑は現状の追認であり思考停止だ。高校生に声を上げる役を担わせている世の中であることを、大人は自覚すべきだ。


 そんな世の中でも「声」を上げ始めている。Me too!With you!  と、その波は広がりつつある。「声」を上げる人々に寄り添う社会に…!

 



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