「東京新聞」2023年1月3日
<コロナ8つの波~あれはどうなった?~第2波>
2020年1月に始まった日本での新型コロナウイルス感染流行。まもなく丸3年というこのコロナ禍は、現在を含め大きく8つの感染大流行期、すなわち「波」となって日本社会を襲い、人命や健康を損なわせ、生活や人々の意識を大きく変えた。それぞれの波を振り返り、当時騒がれたことの実相と今に残る課題を探ってみた。(文中敬称略、山田祐一郎)
第2波 2020年7〜10月。全国の感染者数のピークは8月7日の1597人。大阪府知事の吉村洋文は会見で市販のうがい薬を示し、新型コロナ感染拡大防止に効果があるとして、発熱症状のある人らにうがいを呼びかけた。これを受け、商品は店頭から消えた。感染症の専門家からは「エビデンスがない」との批判が上がった。
◆「われわれも被害者。なぜ昼カラだけが…」
昨年12月上旬の昼下がり、千葉県佐倉市内のカラオケ喫茶では、換気のため半開きになったドアからわずかに音楽が漏れ聞こえていた。店内では、10人近い中高年がカラオケを楽しんでいた。いわゆる「昼カラオケ(昼カラ)」だ。客同士が間隔を空けてソファに座り、順番に奥のステージでマイクを握った。
2020年8月、県はこの店を含む昼カラ5店舗でクラスター(感染者集団)が発生したと店名入りで公表。40人近い感染が判明した。感染者で複数の店に通う愛好家がおり、感染が拡大したとみられている。
同店では、ステージにビニール製シートを張り、他の客は数メートル離れた場所から拍手する。2年前から変わっていない。「感染対策はしていた。別の店で感染した人に持ち込まれた」と経営者の女性(74)が話す。だが、同店でのクラスターが報じられると、付近の飲食店では同店の利用客の出入りを禁じる張り紙をされた。「張り紙をした飲食店でも感染者が出ていたのに」と女性は漏らす。
昼カラが取り沙汰されるようになったのは、同年6月に北海道小樽市が昼カラ店を名指しして休業を求めたのがきっかけだ。昼カラは、スナックや喫茶店が日中にカラオケを提供するのが一般的で、飲食と歌い放題が付いて1000〜2000円と安価で楽しめる。地域の高齢者らの憩いの場となってきた。
「地域のためにやってきたが、いまも客はコロナ前の3分の1程度。毎月20万円の赤字でどこまで続ける必要があるのか」と話すのは、クラスターが発生した佐倉市の5店舗のうち別の店の男性経営者(78)。この店でも当時からステージをシートで囲い、空気清浄機4台を稼働させていた。
5店舗のうち2店舗は廃業した。男性は「われわれも被害者。感染やクラスターはほかにもあるのになぜ昼カラだけ注目されたのか」と話す。
特定業種へのバッシングは第1波でも目立った。最たる例がパチンコ業界だ。
◆クラスターもリスクもほぼなかったのに
20年4月、大阪府知事の吉村洋文は、緊急事態宣言に基づき、休業要請に応じないパチンコ店の名前を全国で初めて公表した。各業種への休業要請後、営業中の店についての通報が府に寄せられたが、7割はパチンコ関連だったためといい、「人命を優先する結果だ」と説明した。その後、多くの自治体が追随した。
横浜市内のパチンコ店も神奈川県に店名を公表された。経営者の50代男性は「なぜ休業しなければならないのか、理由を聞いても納得できる答えがなかった」と振り返る。
「営業してますか」。同県内で緊急事態宣言が出された後も営業を続けていると、まず警察から連絡があった。住民からの通報が寄せられたためという。同年4月下旬、訪れた県職員に休業を求められた。最終的に休業に応じたが、全ての日で休業したわけではないとして店名公表になった。
当時、パチンコ店でクラスターが発生したという情報はなかった。店内では客同士は話さず、飲食もしない。同店では空気は4分間に入れ替わるよう換気されている。「そもそも感染のリスクがほとんどない。カラオケや飲食店とは違う」と強調する。
◆「根底に業界への偏見」一つの正義が暴走
帝国データバンクの調査によると、20年はパチンコ店を運営する全国約1700社の約8割が、コロナ禍前の19年から減収となった。男性の店も売り上げは現在も19年の半分ほどまでしか回復しておらず、業種転換も検討している。
「パチンコ店がやり玉に挙がるのは毎度のこと」と男性。東日本大震災の際、節電を巡って当時、東京都知事だった石原慎太郎は大量消費業種としてパチンコ業界を名指しで批判した。男性は「根底には業界への偏見がある。休業要請と店名公表に科学的根拠はなく、その後の補償も検証も全くない」と語気を強める。
コロナ感染拡大の最初期、特定業種や感染患者に批判的な視線が投げかけられた。これらのバッシングにお墨付きを与えたのが行政の判断だろう。当時、各地の知事がこぞって強力なコロナ対策を打ち出した。市長が営業中のパチンコ店を訪れて直接、休業を求めるパフォーマンスもあった。
「何の落ち度もなく、突然、休業を求められた店舗は本来、被害者であるにもかかわらず、加害者にされてしまった」と話すのは、元千葉県我孫子市長で中央学院大教授(地方自治)の福嶋浩彦だ。「当時は、科学的な知見が十分でなく、疑わしいものを規制すること自体は必要だった」とする一方、「コロナ感染防止が社会の唯一の正義になり、自粛競争、相互監視社会の中、同調圧力と排除が生まれた」と指摘する。
行政を監視するべき議会が機能したとも言い難い。「地方議会は『もっとやれ』というだけで、行き過ぎによって困っている人の声を届けることができたのか」と反省を促す。
◆危機の名の下に人権が押しつぶされる
批判のターゲットとなったのは夜の街も同様だ。20年7月、官房長官だった菅義偉はテレビ番組でコロナの感染源として接待を伴う飲食店を挙げて「警察が足を踏み入れ、根源を一つ一つつぶしていく」と発言。その後、東京都が風営法に基づく調査を実施した。
九州工業大名誉教授(世間学)の佐藤直樹は「みんな同じという意識が一気に噴き出して凶暴化し、もともと根底にある差別意識が特定業種へのバッシングにつながった」と説明する。不要不急の外出が制限される中、娯楽であるパチンコや昼カラ、夜の街が標的になったとみる。
背景にあるのは日本人特有の気質だ。「日本には1200年の歴史がある『世間』という人間関係があり、目に見えない守るべきルールがある。その中で一番重要なこととして『人に迷惑を掛けるな』というのがすり込まれている」。欧米が命令と罰則でコロナに対処したのに対し、日本は世間の目による自粛と要請に頼った。「行政のやり方は無責任だ」と批判する。
同調圧力が強まる状況を精神科医の和田秀樹は「危機の名の下に人権が押しつぶされることへの危機感が足りない」と危ぶむ。営業や移動の自由は誰にでも認められた基本的な権利だ。「一人も死なせてはならないという幻想が、パチンコや飲食店、劇場など特定の文化を壊してもいいという過剰な反応につながった」
日本では、ハンセン病など感染症への差別がもともと強いという。「建前では差別を否定していても一度、たたいていいと認定された場合のたたき方が尋常じゃない。それだけ多くの人に未知のウイルスへのストレスがあったのだろう」と説明する。
不安をあおって国民感情を一方向に向けるのは、政府が軍事危機を強調して防衛費増額に突き進む現状とも合致するとし、こう指摘する。「不安によって妥当でない判断をしてしまうことを多くの人が自覚していない。冷静な結果予測や統計に基づく判断が求められる」
◆デスクメモ
元日、近くの寺に初詣に行った。境内には露店が軒を連ねていた。焼き鳥の店のテントはほぼ満席。10人ほどがさほど離れずに酒食を楽しんでいた。季節は違えど、第2波なら「不要不急」と非難される状況かも。適度な対策とは。首長らの言動を含め、検証が不足していないか。(北)
政府の「無策」と「不安をあおって国民感情を一方向に向ける」これが「科学」を軽視する「自公」政権である。入院もさせず、適切な医療も受けさせず、自室で孤独になくなられた方も多いという。もう8波にもなるのに、何も変わっていない。それどころか医療設備・人員の削減である。
話は変わるが、初詣&お賽銭について・・・
今、いろいろな宗教団体が話題になっている。
その中に神社本庁、神道政治連盟や日本会議もある。
「ご縁」がないよう1円玉にしておいてくださいね!
過去記事ですが参考にしていただければと・・・
今朝の積雪。
それでも午前中は青空が。でもまた吹雪です。