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学術会議の独立性侵すな

2022年12月29日 | 社会・経済

「学問と表現の自由を守る会」声明 学者・文化人127人、政府方針撤回要求

「しんぶん赤旗」2022年12月28日

 幅広い学者や文化人、ジャーナリスト、宗教者ら127人による「学問と表現の自由を守る会」は27日、日本学術会議の独立性を侵害する政府の法改悪方針を即時撤回することを求める声明を発表しました。

 政府は今月、来年の通常国会に、日本学術会議の会員選考に第三者を関与させるとする改悪法案を提出すると表明。次期会員の改選は改定法のもとで行う方針を示しています。

 声明は、政府方針は憲法が定める学問の自由を侵害し、思想・良心、表現の自由を脅かすものだと強調。「世界のアカデミーの常識」である会員選考方法と活動の独立性の原則を蹂躙(じゅうりん)し、学術会議を「政府の御用機関」に改変すれば、国民の幸福と人類福祉、日本の国益に反することになりかねないと危惧しています。「方針」は首相による会員6人の任命拒否を合法化すると指摘。軍事優先の学術総動員体制に道を開く法改正に反対し、改めて任命拒否の理由の説明と速やかな任命を要求しています。

 同日、東京都内で同会の発起人らが会見しました。隠岐さや香・東京大学教授は「独裁的な方向に向かう時、学者の任命権や発言権が真っ先に攻撃の対象になる」と述べ、「民主主義の危機」を指摘。翻訳家の池田香代子氏は、19世紀にドイツの大学教授が国王に異議を唱え国外追放になった事件を紹介し、危機感を表明しました。

 大沢真理・東京大学名誉教授は、新型コロナによる死者数の増大は政府による「大人災」だと述べ、政府と距離をとる学術がなければ「国民の生命が危うい」と強調。医療制度研究会副理事長の本田宏氏は、医療界を例に異論の重要性を訴えました。

 元岩波書店社長の岡本厚氏は政府が次に介入してくるのはメディアだと警鐘を鳴らし、元「朝日」論説委員の藤森研氏は軍拡を急ぐ政府を批判。日本キリスト教協議会の金性済(キム・ソンジェ)総幹事は、日本のキリスト教が戦前、政府を翼賛した歴史を振り返り、いま抗議の声を上げる必要性を訴えました。

 佐藤学・東京大学名誉教授は、政府方針は「学術会議つぶし」だと抗議しました。

学術会議の説明文書 要旨

2022年12月29日

 日本学術会議が27日に公表した説明文書の要旨は以下の通り。(全文は日本学術会議のホームページで読めます)

 

 本会議は政府方針について6点の懸念事項を指摘しており、それについて詳しく説明する。

 (1)「方針」も内閣府の説明も、法改正を必要とする具体的な理由(立法事実)に触れていない。法改正を行う場合、合理的根拠となる立法事実の提示が必要で政府は説明責任を負う。立法事実が示されないまま、法改正が既定とされることに強い危惧をいだく。

 (2)現在の会員が主体となって、「優れた研究または業績のある科学者」の中から新会員を選ぶ選考方法(コオプテーション方式)は世界のアカデミーに共通したもので、本会議が独立して職務を行う大前提である。「方針」で示された会員選考に関する第三者委員会の設置は、その権限や拘束力によっては会員選考における本会議の独立性を損なう。

 独立性が重要なのは、学術が政治や経済などと異なる学術固有の価値基準で行動することで、政策決定や学術の発展、人類の福祉に貢献することを目的とするからである。独立性が損なわれれば結果的に国民や人類の福利に影響する。

 コオプテーションの本旨に立ち返り第三者委員会の設置方針自体が見直されるべきだ。内閣府は「方針」策定にあたり国費で各国のナショナル・アカデミーのあり方を調査している。調査結果を公表し、諸外国の事例が参照されるべきである。

 (3)政府は理由も示さず6人の会員の任命拒否を続けている。透明性を欠いた任命拒否が繰り返されないことは、本会議の独立性にとり根幹となる条件である。「方針」では会員選考過程で第三者委員会の意見の尊重義務が想定されている。そうなれば、それを理由に任命権者(首相)が任命を拒否する道が開かれ任命拒否が「正統化」され繰り返されることに強い危惧を抱く。

 仮に会員定数を上回る候補者から首相が任命することになれば、首相の政治的判断で選別することとなる。

 (4)本会議がすでに、現行法の下で説明責任を果たしつつ、新たな方式による会員選考を進めているにもかかわらず、「方針」が現会員の任期を延長し改定法の下で新会員選考を行うとしていることに驚きを禁じ得ない。

 本会議は現行法の下で会員選考を行う責務を負っているが、法改正されれば、選考結果が覆されることになる。それ自体が、会員選考への重大な介入になりうるもので、本会議の職務の遂行に深刻な影響を与える。

 政府の判断で一方的に任期を変更することはご都合主義との非難を免れない。

 (5)現行の3部制に代えて4部制が唐突に提案された。これは学問体系に即した内発的論理によらない政治的・行政的判断による組織編成の提案である。本会議の構成を変える可能性自体は否定されないが、学術コミュニティーを代表する機関として、どのような組織構成をとるかは自律的に判断するもので政府や外部諸団体が決めることではない。本会議の独立性の根幹にかかわり、政治や行政側から一方的に組織改変を行うような法改正は独立性を大きく損なう。

 (6)「方針」では、「政府等と問題意識や時間軸等を共用」することが再三言及されているが、それには建設的な対話ができる環境が必要である。

 学術には一国に限定されない普遍的な価値と真理の追求という独自の役割があり、一国の利害に左右されず知の探究を通じて人類全体に奉仕する意味が含まれる。

 政策決定における重要な学術的知見は、政府と問題意識を共有しないところからも得られる。中長期的観点から物事を考える学術と短期的な判断を迫られる政治的意思決定の間で時間軸を共有できない場面があるのは当然である。政府とは異なる「問題意識や時間軸」で課題を提起し社会に問うことも学術の役割であると強調したい。

 

学問と表現の自由を守る会 会見詳報

2022年12月29日

 幅広い学者や文化人、ジャーナリスト、宗教者ら127人による「学問と表現の自由を守る会」は27日、日本学術会議の会員選考に第三者を関与させる政府の法改悪方針は学術会議の独立性を侵害するとして、即時撤回を求める声明を発表しました(28日既報)。同日、発起人らが東京都内で開いた会見から、発言の一部を紹介します。

学者攻撃 独裁に向かう

東京大学教授 隠岐さや香さん

 私はアカデミー(学術団体)という組織を研究していますが、アカデミーの一つである日本学術会議の行く末を不安に思い、民主主義の危機が来ていると感じています。政治が独裁的な方向に向かう時、学者の任命権や発言権が真っ先に攻撃対象になります。ロシアのプーチン大統領は2010年代に科学アカデミーを改革し、それに追随してメディアがアカデミーをたたきました。憲法の解釈を根底から変える今の政府の動きを、先例として未来に残してはならないと思っています。

学問への圧力 総仕上げ

翻訳家 池田香代子さん

 外国に向け日本の学者コミュニティーを代表する組織である学術会議が、法改正され政府の言いなりになれば、アカデミーでなくなってしまう。学者の皆さんは国際会議などですごく恥ずかしい思いをする。「小泉構造改革」の頃から学問や大学への圧力が強まり、今の学術会議への介入はその総仕上げでもあるのではないか。19世紀のドイツでは国王に忠誠を誓わなかった学者7人が国外追放されました。2022年の私たちは今後何を見るのか。恐ろしい気がしています。

国民の幸福 真っ向否定

東京大学名誉教授 大沢真理さん

 学術会議は人類社会の福祉への貢献を使命とし、中長期の時間軸で国民の幸福や国益を考える組織です。それを政府は真っ向から否定している。「所得倍増」と言っていたのがいつの間にか「資産所得倍増」になっているような岸田政権と問題意識や時間軸を共有していては、国民の福祉や国益、人類社会の福祉への貢献などできようはずがない。コロナ関連死の多さも政府による大人災。政府と距離をとり批判する学術がなければ国民の生命が危ういと思います。

次はメディアへの介入

元岩波書店社長 岡本厚さん

 軍事優先に資源を投入しないのが憲法9条の成果です。政府方針はそれを変え、学問を軍事研究に道を開く強い意見を示しています。その次に必ずくるのがメディアへの介入です。1940年に皇室の尊厳を犯したとして歴史家の津田左右吉と著書の発行元の岩波書店社長が起訴され、有罪判決を受けました。右翼が訴訟を提起して国家権力が加担し、学問と出版の世界を抑え込もうとしたのです。そういう社会にすることを決して許してはならないと思います。

排外主義生み 社会退廃

日本キリスト教協議会総幹事 金性済(キム・ソンジェ)さん

 戦前、キリスト教を保全するから国家政策を翼賛しろという内務省の取引に応じ、キリスト教は敗戦に至るまで侵略戦争・植民地支配を黙認する宗教に転落しました。政府の敵基地攻撃能力の考え方は「日本の敵は誰か」という排外主義を生み、社会を退廃させます。それは日本の歴史が通ってきた道です。平和主義に立ち警告を発する知識人が学術会議から排除されれば、危険な方向に大きく転換してしまう。この現実をしっかり認識しなければなりません。

日本の民主主義の損失

元「朝日」論説委員 藤森研さん

 政府の介入の底にあるのは、学術会議が70年以上貫いてきた軍事研究反対の基本姿勢に対する嫌悪感、ないし「じゃま者感」だと思います。短期・中期・長期的にさまざまな意見を立体的にたたかわせ考え合うことが、民主主義を安定的に成熟させていくこと。国民的な議論が全くないまま軍拡を急ぐ政権と時間軸や問題意識を一緒にしていては、人類の長い歴史を踏まえ地球的視点で考える学術会議の存在価値はなくなり、日本の民主主義にとっても損失です。

国策への奉仕は危ない

医療制度研究会副理事長 本田宏さん

 「医療および医療従事者が国策に奉仕させられるということは、国民の命が国策に奉仕させられること」。患者の権利にかかわって、内田博文・九州大学名誉教授が語っている言葉です。学術会議にも同じことが言えるのではないでしょうか。おかしいことをおかしいと言う人を排除したいというのが、政府による学術会議への介入です。医療の世界に置き換えて考えれば、これでは医療事故が起きやすくなります。これほど危ないことはありません。

経済・社会が破たんする

東京大学名誉教授 佐藤学さん

 一言で言えば「日本学術会議つぶし」です。法改正がなされれば、学術会議は独立性を失い、アカデミーではなくなります。日本の経済成長率は世界157位、公教育費(国内総生産比)は138位なのに、なぜ軍事費だけ世界第3位に躍り出ようとしているのか。安保3文書でも科学研究を戦力とすることが狙われており、こうした一連の動きの中に学術会議法改正の方針があります。このままでは日本の経済も社会もみな破たんすることを、多くの人に理解してほしいと思います。


 どんどんと「危ない」方向へと進んでいる。
「憲法」解釈も変えた。
軍事予算も突出させた。
今、食い止めなければ「独裁」へ「進」道。
「学問と表現の自由」が奪われれば、半ば奪われたマスコミの中で「決定的」になるだろう。
それほどこの問題は重大な局面にある。

カランエコ

今どき咲いている貴重な花。



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (nerotch9055)
2022-12-30 19:29:46
こんばんは!
政府や国は、そこまでこの国を自らの手で「服従」させたいのでしょうか。
中立性を保てないのであれば、政府や国の傀儡集団になりかねないですね。
もっと、みなさんにも事の重大さを知ってもらい、危機感を持ってほしいものです。
返信する
こちらこそ、お世話になりました。 (mooru)
2022-12-30 17:25:13
 なんか今年の年末は、年末という感じがしないのです。まだまだ、何かやり残したことがたくさんあるような氣がいたします。
これからも宜しくお願い致します。
返信する
ありがとう ()
2022-12-30 11:00:19
日々、ご訪問ありがとうございます。
グロブ投函の日替わりメニューにより素晴らしい記事に勉強させていただいたり、時には厳しい批判記事に精神的な満足感をいただいたりの変化に変わる記事掲載には脱帽です。
継続は力なりと申します、グロブ掲載で勉強と称賛させていただける記事投函を
願っております。
ご家族様には良きお年をお迎えください・・・・ありがとうございました。
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