鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

『昆虫交尾図鑑』騒ぎと、宇佐美朋子さんの展覧会

2013-12-13 10:31:28 | 日記

あら、いらっしゃい! 今、うちの廊下の壁に止まっているガ。1、2センチ。ブドウトリバかな?
 



 ここ数日、ネットを騒がしている『昆虫交尾図鑑』トレース問題。
 発売日に娘から「こんな虫本出てるけど・・・」と言ってきたので、検索してみると……
帯に「命を紡ぐ姿は、美しくて……バカっぽい。時に美しく、時に狂気、時に滑稽で、時に哀しい。現役美大生が描く、そんな虫たちの愛の営み25態」と。
「現役美大生(女子)」「下ネタ」そして飛鳥新社…とくればキワモノ本。
と、ここまではまあいいんです。
ヒトは「キワモノ」に惹かれるもの。
世はその心理を利用したビジネスであふれている。

 たまたまこの日、池袋のジュンク堂さんへ来年の打ち合わせにいったので、棚をのぞいてみると、
新刊だから面出し(表紙を見せて棚に並べること)で置いてある。
で、パラパラ見てみると予想どおり、というか載っている絵の虫が死んでる。
25種で「図鑑」と名乗るのは言葉の綾としても―と棚にもどした。

 で、帰ってみると、アマゾンのレビューがプチ・炎上してた。

 著者はネットのインタビューで、一年間野山を駆け巡り、ひとりでつくった(「無理、無理~品質120の最高級神速自在帯を装備して1年間野山を駆けても25種の交尾シーンには会えないよ~」←意味わかる人だけわかってネ―とロロナも言っている)と。
 そのあと、ツイッターで著者があくまで「自分ひとりでつくった」と言い張ったのに対し、
誰かが無断使用された「虫ナビ」の画像を探しだし、比較した実証画像を投稿すると一転、トレースを認め、印税も著作権も返上する、と。
 
 トレースと模写。これって、私はちょっと違うと思う。
でも、この本の絵は、模写すらしていないんじゃないかな。
 美術の勉強は模写からはじまる。著者は学生だから、模写はふだんの勉強でふつうにやっていることだろう。写真なんていくらでもシェアしたり、みんなしてるじゃん……なんで悪いことなのぉ???でも、これだけ言われたら、謝っちゃうのがいい、バッシング辛いし……という気持ちがツイートからにじみ出ていて、さらに炎をあおる結果に。
 学校の課題制作だったら許される範囲のことが、不特定多数の人にお金を払わせる書籍となると、事情は全く違うということがこの美大生には理解できていないよう。
 肝心の版元である飛鳥新社がこの後、弁護士にも相談したけどこれは著作権侵害ではない、こちらこそ誹謗・中傷をされて憤慨している」との、超厚顔無恥な声明を発表したので、ネットは再炎上。

 まだ数少ない女性の虫関連本著者のひとりとして、私はこの経過を他人ごとでなく注視している。せっかく書店でも売り面積が広がるほど虫の本が増えている―虫に興味を持つ人が増えている―というのに……というか、数が増えれば玉石混淆。こういったものを混じってくる。


 それにしても、不愉快な話。
アキノ隊員もモヤモヤ。
(でもこれだけ交尾写真があると、また利用されるかもしれないから、気をつけて~)
虫関連の創作をしている女性製作者たちが、「虫ガールとかさ、女性の虫好きとかって所詮キワモノだろ」と勘違されるような印象を世間一般に与えただろうことを考えると。

 そんな折も折、虫好きな人たちの怒りとモヤモヤを晴らしてくれるような展覧会が、きょう12月13日から自由が丘「もみの木画廊」で始まります!





 宇佐美朋子さんのグループ展「⑤展 いろとかたち」。
今年の夏、あこがれのヨナグニサンを見に与那国島まで行った宇佐美さん。
この展覧会では、ヨナグニサンテーマのものをはじめ、新作がたくさんあるそうです。
正真正銘、生息地へ足を運び、自分の目で実物に出会い、観察してその喜びや驚きを作品に昇華させた宇佐美さんの展覧会へ、「目と気持ちを洗いに」行こう、っと。


「⑤展 いろ と かたち」
於:自由が丘 もみの木画廊(世田谷区奥沢6-33-14 03-3705―6511)
2013年12月13日(金)~12月22日(日)
11:00~19:00(最終日 17:00まで)
オープニングパーティ:12月15日 16:00~19:00