拙著『虫目のススメ』の表紙や中ページのイラストを描いてくださった竹上妙さん、宇佐美朋子さんといっしょに、昨夜は小野路へホタルを観に。
18時過ぎに鶴川の駅で待ち合わせ、竹上さんの妹さんの運転する車で、
小野路にあるホタルが見られる場所へ。
こんな素敵なところ。
久しぶりに雨の落ちてこない一日で、空はまだ十分に明るい。
暗くなるまで虫を探そうと、4人でぶらぶら。
日暮れ時というのは、なんだかものがよく見えなくなる時間で、
こんなに虫がいそうな場所なのに、見つかったのはテントウムシやコガネムシくらい。
7時半ごろになると、暗くなってきた。
すると、池のあたりから、「ヴォ、ヴォ」というような、いかにも大きな共鳴器官を震わせて鳴くような
ウシガエルのバリトンの声が聴こえてきた。
鳴いているカエルの姿を見ようと、頭から池につっこむ竹上妙。
その時、向こうの道に、シャカシャカとした足取りでおばさんがひとり登場した。
Tシャツに前掛けをしめているので近所の住人らしい。
「なにしてんの?」と、いきなり大きな声で訊いてきた。
「カエル、探してんです」
「カエルぅ?そんなとこに、いないわよ」とおばさん。
声が大きいので、それまで虫やカエルや鳥の声でのどかだったあたりの雰囲気が一変。
あんまり関わりたくないなぁ~と、遠ざかるようにぶらぶらしていると、
「あんた、どっから来たの?」
「ん?えーと、わりと近く、むにゃむゃ・・・」と、竹上さん。
「あんたは?」と、次々と身元調べがはじまった。
みんな適当に、はぐらかす。
「ふーん」と、おばさん、おもしろくなさそう。
でも、すぐに態勢をたてなおすと、
「ホタルねぇ、きょうはねぇ、気温がひくいからどうかしらねぇ」
どうやら、おばさんはごく近くに住んでいて、毎日ここにホタルを観に来ているらしい。
ここのホタルに関しては、誰よりもアタシがよく知ってんのよ……っつうか、ほとんど「アタシのホタル」っていってもいいくらいぃ・・・・・・といったようなことを言いたいらしく、
今年のホタル情報をひとりでしゃべり続ける。
来訪者の身元調べも、遠くから観にくるくらい「アタシのホタル」はすごいのだ、
そんなすごいものをアタシは毎日観れちゃうんだ、クククッ、
ということを納得したいためと見える。
私たちはなんとなくおばさんを敬遠気味に、ぶらぶらしていると、
「いつもだと、もう光る時間だわよ」といいながら、
道の上のほうへ歩いていってしまった。
よかった!
やっと静かになった。
暗闇のなかから、いろんな生きもののたてる音が聴こえてくる。
しかし、水草がみっしり覆った池を見つめるも、ホタルの光は見えない。
「しょうがないから、あっちに行ってみようか、おばさん、いるけど」と、
私たちも、さらに道を奥に歩く。
そろそろ8時。しっかり暗くなってきた。
上の田んぼのふちに立っていた例の仕切りおばさんは、
私たちの姿を見るや元気づいて、「ほら、見てなさい、あのあたりで、もう光るから」
しばらくすると、おばさんが指す方向とは反対の、道の後ろ側の雑木林のなかで
あ、光った!
ホタルだー。
ちょうど頃あいなのか、おばさんの見ている方でも、光りだした。
「ほらほら、あそこぉ、いま光ったわよぉ。でも一番すごかった日は、100匹くらい見えたのよぉ。
でもそれを観れたのは3人くらいかしらねえ」
そのとき、カップルが一組登場。
街灯の下で1匹捕まえたらしく、掌に載せて鑑賞している。
妙に静かなカップルだ。
道の奥には、水を張った田んぼが広がっていて、その脇のあぜ道の奥あたりがいちばん数が多い。
「あそこに行ってみようか?」
「うーん、あの道はいちおう禁止の札がたってるから、アノヒトもいるし、ちょっと様子見てからにしようよ」
すると、仕切りおばさんが、すたすたと、そのいちばんホタルがいる地点に向かって、
あぜ道を歩き出した。
私たちも続く。
けっこう耳元でブーン、と翅音をたてて、上着の裾にもホタルが止まる。
写真を撮っていると、おばさんが「懐中電灯もってあげようか」
と寄ってきたので、「だいじょうぶです」と即、断る。
きょうは、初めてくる場所だし、真っ暗で足場も悪いだろうからと、コンデジだけで一眼レフはもってきていない。
どっちみち、飛んでいる写真は撮れないだろう、と最初からあきらめている。
せめて虫の姿を撮ろう。
「ホタルの光の軌跡を撮るには、三脚とかもないと・・・・」と言いかけると、
「そのカメラじゃダメよ!」とピシャリ。
そして仕切りおばさんは、あぜ道からもといた道にもどり、
「あんたたちも、そっから出なさいよー、これから人がどんどん来るんだからぁ、みんなマネするからぁ」
と、笛でも持っていたら「ピーッ!」と吹きそうな勢いで言う。
私はもういいかな、と思っていたので、道に戻った。
竹上さんと宇佐美さんはまだ、あぜ道の奥にいて、おばさんがなんど叫んでも、聞こえないふりをしている。
おばさんがあんまりカッカして、何度も叫ぶので、そのうちみんなもしぶしぶ道に戻ってきた。
夜光るホタル(昼行性のホタルもたくさんいる)っていうのは、虫を観るっていうより、
その環境がつくりだす風情を楽しむもの。
ホタルそのものは、虫のなかでそんなに美しいわけでもなく、
幼虫に至っては淡水の貝類であるカワニナなどをむしゃむしゃ食べるかなりグロテスクな姿。
暗いからこそのホタル人気。
今夜は蒸し暑くなるかと思いきや、かなり気温が低く、上着を着ていても肌寒い。
Tシャツ姿のおばさんは、「この気温じゃこんなものねー。明日の方がいいかもよ」
と、捨て台詞を残して、帰って行った。
わーい!やったー
やっと静かになったー。
みんなで、しばし暗い水田の上を見つめる。
すると、水をたたえた田んぼの上を、1匹、2匹・・・・。
ホタルの光が、驚くほど明るく田んぼの水に反射して・・・・・・その様、いと、をかし。
そろそろ引き上げることにして、叢にいた1匹を手にのせてみる。
ここのホタルはゲンジボタルで、このようにオシリの2節が青白く光るのはオスらしい。
ホタルも堪能したし、すっかり体が冷えてきたので、
「なんか、あったかいもの食べに行こう~」
「おなか、すごくすいちゃったー」
いい夜でした。
(おばさん以外は・・・)
18時過ぎに鶴川の駅で待ち合わせ、竹上さんの妹さんの運転する車で、
小野路にあるホタルが見られる場所へ。
こんな素敵なところ。
久しぶりに雨の落ちてこない一日で、空はまだ十分に明るい。
暗くなるまで虫を探そうと、4人でぶらぶら。
日暮れ時というのは、なんだかものがよく見えなくなる時間で、
こんなに虫がいそうな場所なのに、見つかったのはテントウムシやコガネムシくらい。
7時半ごろになると、暗くなってきた。
すると、池のあたりから、「ヴォ、ヴォ」というような、いかにも大きな共鳴器官を震わせて鳴くような
ウシガエルのバリトンの声が聴こえてきた。
鳴いているカエルの姿を見ようと、頭から池につっこむ竹上妙。
その時、向こうの道に、シャカシャカとした足取りでおばさんがひとり登場した。
Tシャツに前掛けをしめているので近所の住人らしい。
「なにしてんの?」と、いきなり大きな声で訊いてきた。
「カエル、探してんです」
「カエルぅ?そんなとこに、いないわよ」とおばさん。
声が大きいので、それまで虫やカエルや鳥の声でのどかだったあたりの雰囲気が一変。
あんまり関わりたくないなぁ~と、遠ざかるようにぶらぶらしていると、
「あんた、どっから来たの?」
「ん?えーと、わりと近く、むにゃむゃ・・・」と、竹上さん。
「あんたは?」と、次々と身元調べがはじまった。
みんな適当に、はぐらかす。
「ふーん」と、おばさん、おもしろくなさそう。
でも、すぐに態勢をたてなおすと、
「ホタルねぇ、きょうはねぇ、気温がひくいからどうかしらねぇ」
どうやら、おばさんはごく近くに住んでいて、毎日ここにホタルを観に来ているらしい。
ここのホタルに関しては、誰よりもアタシがよく知ってんのよ……っつうか、ほとんど「アタシのホタル」っていってもいいくらいぃ・・・・・・といったようなことを言いたいらしく、
今年のホタル情報をひとりでしゃべり続ける。
来訪者の身元調べも、遠くから観にくるくらい「アタシのホタル」はすごいのだ、
そんなすごいものをアタシは毎日観れちゃうんだ、クククッ、
ということを納得したいためと見える。
私たちはなんとなくおばさんを敬遠気味に、ぶらぶらしていると、
「いつもだと、もう光る時間だわよ」といいながら、
道の上のほうへ歩いていってしまった。
よかった!
やっと静かになった。
暗闇のなかから、いろんな生きもののたてる音が聴こえてくる。
しかし、水草がみっしり覆った池を見つめるも、ホタルの光は見えない。
「しょうがないから、あっちに行ってみようか、おばさん、いるけど」と、
私たちも、さらに道を奥に歩く。
そろそろ8時。しっかり暗くなってきた。
上の田んぼのふちに立っていた例の仕切りおばさんは、
私たちの姿を見るや元気づいて、「ほら、見てなさい、あのあたりで、もう光るから」
しばらくすると、おばさんが指す方向とは反対の、道の後ろ側の雑木林のなかで
あ、光った!
ホタルだー。
ちょうど頃あいなのか、おばさんの見ている方でも、光りだした。
「ほらほら、あそこぉ、いま光ったわよぉ。でも一番すごかった日は、100匹くらい見えたのよぉ。
でもそれを観れたのは3人くらいかしらねえ」
そのとき、カップルが一組登場。
街灯の下で1匹捕まえたらしく、掌に載せて鑑賞している。
妙に静かなカップルだ。
道の奥には、水を張った田んぼが広がっていて、その脇のあぜ道の奥あたりがいちばん数が多い。
「あそこに行ってみようか?」
「うーん、あの道はいちおう禁止の札がたってるから、アノヒトもいるし、ちょっと様子見てからにしようよ」
すると、仕切りおばさんが、すたすたと、そのいちばんホタルがいる地点に向かって、
あぜ道を歩き出した。
私たちも続く。
けっこう耳元でブーン、と翅音をたてて、上着の裾にもホタルが止まる。
写真を撮っていると、おばさんが「懐中電灯もってあげようか」
と寄ってきたので、「だいじょうぶです」と即、断る。
きょうは、初めてくる場所だし、真っ暗で足場も悪いだろうからと、コンデジだけで一眼レフはもってきていない。
どっちみち、飛んでいる写真は撮れないだろう、と最初からあきらめている。
せめて虫の姿を撮ろう。
「ホタルの光の軌跡を撮るには、三脚とかもないと・・・・」と言いかけると、
「そのカメラじゃダメよ!」とピシャリ。
そして仕切りおばさんは、あぜ道からもといた道にもどり、
「あんたたちも、そっから出なさいよー、これから人がどんどん来るんだからぁ、みんなマネするからぁ」
と、笛でも持っていたら「ピーッ!」と吹きそうな勢いで言う。
私はもういいかな、と思っていたので、道に戻った。
竹上さんと宇佐美さんはまだ、あぜ道の奥にいて、おばさんがなんど叫んでも、聞こえないふりをしている。
おばさんがあんまりカッカして、何度も叫ぶので、そのうちみんなもしぶしぶ道に戻ってきた。
夜光るホタル(昼行性のホタルもたくさんいる)っていうのは、虫を観るっていうより、
その環境がつくりだす風情を楽しむもの。
ホタルそのものは、虫のなかでそんなに美しいわけでもなく、
幼虫に至っては淡水の貝類であるカワニナなどをむしゃむしゃ食べるかなりグロテスクな姿。
暗いからこそのホタル人気。
今夜は蒸し暑くなるかと思いきや、かなり気温が低く、上着を着ていても肌寒い。
Tシャツ姿のおばさんは、「この気温じゃこんなものねー。明日の方がいいかもよ」
と、捨て台詞を残して、帰って行った。
わーい!やったー
やっと静かになったー。
みんなで、しばし暗い水田の上を見つめる。
すると、水をたたえた田んぼの上を、1匹、2匹・・・・。
ホタルの光が、驚くほど明るく田んぼの水に反射して・・・・・・その様、いと、をかし。
そろそろ引き上げることにして、叢にいた1匹を手にのせてみる。
ここのホタルはゲンジボタルで、このようにオシリの2節が青白く光るのはオスらしい。
ホタルも堪能したし、すっかり体が冷えてきたので、
「なんか、あったかいもの食べに行こう~」
「おなか、すごくすいちゃったー」
いい夜でした。
(おばさん以外は・・・)