『毛虫のボロ』のパンフレットの後ろに、宮崎駿と養老孟司の「世界は人間だけのものじゃない」という対談があります。
そのなかで養老先生がとっても面白いことをおっしゃっているので、ちょっと長いけれど、以下書き写してみます。
『毛虫ってガとかチョウになると口がストロー状になりますよね。そんな風に成虫が幼虫とは全く違う形状に変化するものを完全変態っていうんです。
どういう仕組かというと、毛虫の中に将来成虫になるひとかたまりの細胞があって、サナギの段階で幼虫の細胞は全部死んで親になる細胞群の栄養分となり、チョウが誕生する。これって寄生虫と同じ原理なんです。ただし現在の寄生虫のように宿主を殺さない。
2種類の別な虫が「俺はチョウをやるから、お前は毛虫をやれ」と上手に折り合ってしまう。
普通生き物は古い旅館と同じで、建て増しを繰り返して変化していく。だから元の状態を完全には壊せないはずなんです。それがあれだけ新しく変わってしまうということは、進化の過程のどこかで遺伝子同士の話し合いがあったんじゃないかと思うんです』