ぷっくりしたぬいぐるみみたいな愛さらしさ―去年5月に見たオオシマカラスヨトウの幼虫。
5月の光と緑が、春を待つ目に染みる。
去年、奥多摩でのライトトラップや横沢入の観察会でごいっしょさせていただいた
川上洋一さんの『庭のイモムシケムシ』につづく新刊は、
『東京 消える生き物 増える生き物』(メディアファクトリー新書 740円)
少年時代から生き物が大好きだった東京生まれの川上さんは、
自然観察のインストラクターを経て、自然科学を専門とする書き手として多数の著書を出版し、
日本昆虫協会、トウキョウサンショウウオ研究会などの要職もつとめている。
子どものころから、東京の生き物を見つづけてきた人なのだ。
『著者がいう「自然」とは、
「多くの生き物が生息し、捕食や共生関係など互いにつながり合って暮らしている状態』という箇所にまず共感。
特に東京では、一見緑が多く見えても、あれ?うそ、もっといてもいいのに、
というくらい生き物の影が薄い場所も多いから。
主に都内で虫さがしをしている私にとっては、
ふだん見ている虫や、現象のあれこれに感じていたことが、
「そうそう、私も感じている」と共感したり、
「そういう意味があったんだ」と納得したり、
「そういうワケがあったのね」と謎が解けたり、
たとえば、2011年秋に東京郊外の公園で撮ったこの写真。
白いチョウというと、まず浮かぶのがモンシロチョウの名前ですが、
実際には、ちょっと見が似ているスジグロシロチョウがほとんど。
写真のチョウもはじめスジグロかな?
あ、でもよく見ると、これモンシロチョウ。
考えてみると、モンシロチョウの写真撮ったのはじめてかも。
あらためて、薄い微妙な色合いがきれいなチョウだなあ、と。
考えてみるとモンシロチョウって、ほとんど見ていないような気がする、
と思っていたら、この本に、「昭和30年代モンシロチョウが消えた」というくだりが。
昭和30年代後半、東京オリンピックに向けた開発で、都内の環境は激変した。
それまで日当たりのいいキャベツや小松菜の畑にたくさんいた身近なモンシロチョウは、
増えていった住宅やビルの日陰を好み、道端のイヌガラシやオオアラセイトウを食べるスジグロシロチョウにとって代わられた、
とあります。
なるほど、そうだったんですね。
またアンタか、といいたくなるほど、年々たくさん見かけるようになったアオドウガネ。
アオドウガネは2000年代に、ドウガネブイブイという、形はそっくりだけれど鈍く光る銅色をしたコガネムシを追い出して
東京で増えている虫のひとつだという。
ドウガネブイブイの写真もあったはずなので、さがしたけど見つからない。
やっぱりアオドウガネに比べて出会った数が少ないのです。
こんなところにいるの?と不思議に思ったカワセミ。
清流の鳥、というイメージが強いけれど、けっこう思いがけない公園のなかの小川などでも見かける。
水質汚染でエサのタナゴなどが減るのにつれ、いったん都市から姿を消したカワセミは、
80年代以降、急激に東京に返り咲いた鳥なのだそうだ。
しかしこれは決して東京の河川の水質が改善されたからではなく
いなくなったタナゴの代わりに、汚れた水に強いモツゴや銀ブナといった魚を食べ、
都市の環境に合わせ、慣れてきたというのが理由らしい。
この夏、こんなところにも!?と思ったアオスジアゲハも、
都会の街路樹を利用することで、増えてきているチョウだという。
このひとも増えているように感じますよ、
オジロナガアシゾウムシ。今年はクズの茎などでよくお会いしました。
もともとはスミレなどを食べていたこのひとも、人間が栽培する園芸種のパンジーが増え、
加えて温暖化の影響もあって、すっかり関東地方に定着した感が。
ツマグロヒョウモン。
増えているものは目に付くけれど、もちろん減っている生き物はそれ以上に多いわけで
東京都が発表している「2010年版東京レッドリスト」によれば、
500種類を超える生き物たちが東京から姿を消そうとしているという。
生き物が増える、消える、もどってくる、といった現象はすぐ温暖化のせいされることが多いけれど、
その理由はじつにさまざまで、
環境が生き物たちに与える影響は複雑だ、
ということを教えてくれる本でもあります。
東京はもちろん、生き物を観察するのを楽しんでいる人に、
ぜひおすすめしたい一冊!
姉妹サイト『バニャーニャ物語』その12 「アーモンドの花さくころ」も、どうぞ!
気持ちのいい4月の草原で
白いクモが巣を張るようすに見入っていたカイサ。
「ちょっと、そこのアナタ!きこえないの?」
という声に振り向いてみると・・・・・・。
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