鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

今年もナショナル・モス・ウィーク

2015-04-27 08:20:21 | 日記

去年,初めて日本からの参加が実現したナショナル・モス・ウィーク。

(立体刺繍作家 ながふちなほみさん作 ヨナグニサン 開帳30センチの大作←販売品ではありません)

 

今年も世界40か国以上の参加が予想されています。

7月18日から26日までの9日間、世界各地で蛾の観察を楽しもうというこの催しは

十数年前にアメリカのニュージャージーのある町の小さな観察会から始まりました。

私も年々、蛾の多様さ、美しさ、びっくりするような形態などに魅せられて、

去年は山梨県オオムラサキセンターの協力を得て、『夏のむし塾 ナショナル・モス・ウィークに参加』と題し、40名の参加者と、日本の蛾の研究の第一人者 神保宇嗣先生の『蛾入門』講座、

フィールドでの昼蛾観察会、夜の灯火観察と、めいっぱい蛾の観察を楽しみました。

去年の様子はこちらでご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=80ef9fcb98c8edf0fd5a58480ab7ef55&p=4&disp=10

 

 今年は、どこか東京近辺で、という声が多々あり、夏のむし塾として、高尾駅から徒歩10分の多摩森林科学園森の科学館で、神保先生の講演会と昼蛾の観察会を行うことにしました。

(夜間灯火観察については検討中です。なおこの催しへの参加募集は6月に行います)

 蛾の魅力を多くの人に楽しみながら知ってもらいたい、という市民参加型の科学プロジェクトである「ナショナル・モス・ウィーク」の催しは、今年も盛り上がりそうな予感がします。

そこで、先にお知らせしましたジュンク堂池袋本店7Fでの大昆虫展でも、ナショナル・モス・ウィークのコーナーをつくり、蛾関係本フェア、展示、モスグッズ販売などを予定しています。

 『モスフィリア』の著書がある漫画家の氷堂涼二さん

  

  

 

上記立体刺繍のながふちなほみさん、

 

「蛾まぐちシリーズ」作家 森田珠生さんなどなど、

   

いやでも(笑)蛾の玄妙な美しさに目覚めてしまいそうな作品を厳選して展示、販売予定です。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 


7月のジュンク堂7Fは『鈴木海花プロデュース・大昆虫展』

2015-04-27 07:04:12 | 日記

 夏に向けていくつかお知らせがあります。

 まずはジュンク堂池袋店での催しから。

 

 7月11日(土)~8月10日(月)まで

池袋ジュンク堂本店7Fで『鈴木海花プロデュース・大昆虫展2015』

テングビワハゴロモ17

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(展示予定の立体刺繍作家 ながふちなほみさん作・ビワハゴロモ)

えっ?!「昆虫展」って・・・・・・か、かんばんが重すぎる。

「大昆虫展」というのは、博物館で著名な昆虫館の標本を一挙展示とか、そういうのだったらふさわしいけど、せめてこの「大」取ってください、と相談したのですが、ジュンク堂さんでは、毎年夏はこのタイトルなんだそうで、これでいきたい、と。

 7Fはご存じのように理工の売り場。7月1日からはじまる昆虫写真家 森上信夫さんの写真展も同時期開催、また7月18日から今年もはじまる『ナショナル・モス・ウィーク』の催しもからめて、7Fは虫尽くしに。

 

 まだポスターもできていないので、下記ざっくりですが、

●昆虫ブックフェア、虫関連展示、虫グッズ展示&販売(選者、作家については追って詳しくお知らせします)

●ナショナル・モス・ウィーク展示、蛾関連本フェア、氷堂涼二さん、森田珠さん他モス・グッズ展示販売。

●期間中のトークセッション:7月22日丸山宗利さん、7月28日森上信夫さん

 

 お知らせ、次につづきます~

 

 

 

 

 

 

 


たくさんのふしぎ「わたしたちのカメムシずかん」制作いよいよ後半へ!

2015-04-25 07:18:33 | 日記

 福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」シリーズの1冊として制作中の「わたしたちのカメムシずかん」(仮題)。きのうは絵を担当してくださる人気の絵本作家はたこうしろうさんのお宅で、打ち合わせをした。わたしは初対面。

 はたさん、この間の葛巻取材に同行するはずだったが、直前に鎖骨を骨折され、残念ながらいっしょに行けなかったので、この日はその報告に。

 でも、なんとすでに本の半分まで、ラフを描いてくださっていた!

しかも、私が原稿を書きながらイメージしていたヴィジュアルとぴったり、というより

そこにはたさんらしい楽しいテイストも加わり、私はもちろん担当編集者Kさん(右)の顔もうれしさでゆるみっぱなし。

 

 虫をテーマにした絵本も多いはたさん、当然カメムシをはじめとする虫話で盛り上がる。

 すると、はたさんが全治1か月の右手で、表紙のラフをさらさらと描きだした!

本の制作はチーム仕事。

みんなの気持ちと能力、労力と、いろんなものが合わさってできる。

でもなんといってもテーマへの愛が原動力―画家も編集者も作者も、みんな虫が好き。

 6月にははたさんもいっしょに葛巻へ行く予定です。

江刈のみんな、楽しみにしていてね!

 

 


フィールド始動!

2015-04-21 13:44:34 | 日記

 

 4月の中旬までは、ぽっと暖かい日があっても、人間が感じるほど虫はほいほいと出てくるわけではなく、がっかりがつづいたけれど、4月も後半となれば、もう大丈夫!

先週末は虫友とフィールドへ。

歩きはじめる前にまず里山施設で朝掘りのタケノコとか野菜とか、お弁当とかを確保。

行くぞー。

新葉が伸び始めている柳の枝にチョウセンカマキリの卵鞘。

 

キバネホソコメツキ。ほっそりと小さくて華奢なコメツキ。

 

 

ちょっと珍しいマルクビツチハンミョウ。

 

ミツボシツチカメムシの交尾ははじめてみた。

 

ワカバグモのオス。

ワカバグモって、8つの目がこちょこちょってまとまってあるのがおかしい。

 

ベニボタルの一種

 

去年もいまごろ、同じ場所でさがしたけれど、見つからなかったアリ(ノ)スアブの幼虫が見つかった!

そばの穴から、幼虫を運び出すアリ。

 

こんなのも。朽木の下にはいろんなものが生きている。

 

 

すぐそばにいたヒロズコガの幼虫。

 

 

 

オドリコソウで花粉を集めているミツバチ。集めすぎちゃって、体が重くて飛べないらしく、

それでもさらによろよろと花に向かっていた。飛べなかったらどうするんだろう?と心配に。

 

 お弁当タイムにしようと、いつもの場所に向かうと、コブシが新葉をつけている。

昆虫写真家 森上信夫さんが、

「コブシには今頃、オオアヤシャクの幼虫が新芽に擬態しているんですよね」と。

オオアヤシャク……はじめてきいた名前。

しばらく新葉をみてまわった森上さんが

「いたいた、ほらこれですよ!」

みんなは、「どこどこぉ?ええ、これほんとに幼虫ですか?」

「ちがうんじゃない?」

「どう見てもこれただの葉っぱに見える」

みんながあまりにいうので、森上さんも自信がゆらいだみたいで

「あれ、確かだと思うんだけどな、違ったらどうしよう・・・・・」と弱気になってる。

写真が撮りにくいちょっと高い枝を、みんなが順番に写真を撮ってみると、

おお、やっぱり幼虫だ!

顔のさきっぽまで、ぴんと伸ばして、新芽になりきっている!

でも、写真を撮って拡大してみると、

ほらね!

胸脚を目立たないようにぎゅっと縮めているけなげな擬態。

「ああ、よかった~」と胸をなでおろす森上さんに、

「すごーい、こんなの教えてもらわなければ絶対わからないよ」とみんなのまなざしが「疑惑」から「尊敬」に、一気に変わる。

 

動き出したらばればれだね。(後はほっとした顔の森上さん)

 

 お弁当のあとは、また虫目に。

セイボウに寄生されているらしいイラガの卵発見。

 

 森上さんが、急な斜面を指さして、「先週、あの上にミイデラゴミムシがいたんですよ」という。

え、見たいなあ……でも斜面は見るからに急で、雨のあとだし登るのがたいへんそう。

みんながあきらめて、歩き出してしばらくすると、「あれ?昆虫記者、どこ行っちゃったの?」

見回すと……いた!あんなところに昆虫記者が。

ミイデラゴミムシをやっぱり探しに登ったらしい。

あの顔は、見つけた顔だね。

 

ベニシジミが産卵中。

すごく普通にいるので慣れてしまっているけれど、ベニシジミはきれいなチョウだとみんなで再認識した。

ジョウカイの仲間?

 

まだ羽化していないジャコウアゲハの蛹もいた。

 

真っ赤なダニブローチをつけているのはキンイロエビグモかな。

 

ミズキの葉にヒメヤママユの幼虫。3齢くらいかな?

 

 きょうはいろいろ見られて、みんなの顔も満足げ。

こういうふうにいいスタートを切れると、「虫見たい欲」増進。

GWに期待がふくらむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


『春爆発寸前の葛巻で』

2015-04-18 16:11:00 | 日記

 

  4月15日、東京駅から2時間半、11時半にいわて沼宮内駅に到着。5回目となる訪問を洗いたてのように輝く青空が迎えてくれた。1時間前まで激しく降っていたそうで、雨があがったところだったらしい。

 

 今回の目的は、去年からつづけている岩手県葛巻町のカメムシ調査で越冬のために集まったカメムシがそろそろ動き出す様子を見ることと、早春の葛巻の風景の取材。

 福音館書店刊「たくさんのふしぎ」シリーズの1冊として出版される『わたしたちのカメムシずかん』(仮題)の原稿もできあがり、今回は直前の怪我のため同行できなくなってしまったのが残念だが、絵本作家はたこうしろうさんが絵を描いてくださることも決まった。

 

 北陸新幹線最寄駅から、江刈小学校へ。車で約1時間。

この日は保護者参観日ということで、保護者面談が済むまで子どもたちが校庭に出ていた。

ブランコで遊んでいた子どもたちが、私たちに気が付いて駆けてきた。

「ひさしぶり~、また来ちゃった」

当たり前だけれど、1年生は2年生に、6年生は卒業していない、異動した先生もいらっしゃるし、新しい校長先生もいらっしゃった……新陳代謝していくのが学校。江刈小学校の今年の新入生は7名で卒業生が3名だから差引―4名増えて全校生徒数30名を超えた。

校舎の入り口にくっついていたのはカワゲラの仲間かな?

 

 『江刈カメムシ図鑑 2巻』ができたときいていたので、江刈小カメムシはかせ1号S君(左)と2号T君(右)に見せてもらう。

分厚い!

この巻は科ごとに分類掲載されていて、1巻に出ていた種も全部載っている。うん、これは便利。

写真も驚くほど鮮明できれい!先生たちの熱意が結晶している。

 

 S君のお母さんの面談が終わるまで、校庭の裏の川岸でさっそく虫さがそう~

 

さっきまでの雨で川が増水して勢いよく流れている。

芽吹きははじまっているものの、ここではサクラのつぼみもまだ硬い。

でも遅い春が今にも爆発する気配が。

 

足元で枯れている草をかき分けていたS君がなにか見つけた。

 

はじめて見るヨツボシテントウムシダマシだった。

 

きょうは校内に入れないので、ちょっと時間ができた―じゃあ、中学校行こうよ!

 江刈小学校から徒歩20分くらいのところにある江刈中学校は、山を背負っているせいか、めっちゃ虫が多い。秋、文化祭のころになるとごみ袋4袋分もカメムシが捕れる(笑)。

 正面入り口の両サイドの壁に、いたいた!いろいろ蛾がついている。

もしや・・・・

 実は私は早春の蛾の花形ともいえるイボタガの成虫をまだ見たことがない。去年もダメだったし、今年もそろそろ関東では時期が終わり。もしかして標高の高い葛巻なら……とひそかに期待していたのだが。

トビモンオオエダシャク

 

 マツキリガ

 

 スギタニキリガ

 

 ヒゲマダラエダシャク

 

トギレフユエダシャク(オス)

 

ウストビスジエダシャク、あるいはその近縁種

 

 

ヒゲマダラエダシャク

(*以上の蛾の種名は一寸野虫さんから教えていただきました)

 

ヨツモンカメムシも。

 

 左側の壁にはりついている蛾をまず撮影。すると、先に右側を見に行った同行のOさんが

「あら、なんだかおっきいのがいますよ~」

ドッキン!

「おっきいのって、なんでしょうねえ・・・」などと平静を装いつつ、近づくと……

 

羽化したてなのか、傷一つないイボタガだーーーー。

 

灯火などに来ることが多いイボタガは昼間は見つかりにくい。

それがこんな真昼に。

 

 

うれしさのあまり、青空に差し上げる。

初めてのイボタガを葛巻で見つけることができた、というのがなんともうれしい。

 

 もっとゆっくり校舎のまわりを探したかったが、さすがに仕事で来ているのだから、

もうそろそろ行かねばね。 

 ホテルにチェックイン後、担当編集者のKさんと台割りの変更点を打ち合わせる。

 

 今夜は、去年異動になった元江刈小学校校長、カメムシ調べのそもそものきっかけをつくられた小野先生がご主人といっしょに異動先の八幡平から来てくださることになっている。

 夕食をいっしょにしながら、これからのカメムシ調査の方針などをいろいろ話し合い、今後続けていくためのアイディアや情報を交換。

 そのうち、小野先生のご主人である小野國彦さんが取り出した1冊のアルバム。

小野國彦、公代ご夫妻は校長先生カップル。先に退職されたご主人は地域の教育活動をつづけるかたわら、いろいろな形でカメムシ調査に協力してくださっている。

こんな優しい校長先生、いいよね~

 

 江刈小学校のカメムシ調査をきっかけにアカスジキンカメムシの飼育をはじめられた小野ご夫妻は、なんとカメムシ飼育の名人でもあったのだ。去年秋に岩手で見つけた5齢幼虫を、観葉植物として育てていたコーヒーの木の葉でみごとに累代飼育、その記録を40ページものアルバムにまとめられた。一部をお見せしましょう。

 ご夫妻はともに理科の先生。

「アカスジキンカメを飼育してみて、長年生徒に教えてきたことに、今更ですが、ああ、これか!と納得がいくことがたくさんありました(笑)」

 

 話はかわるが、今年7月11日から8月10日までの1か月間、ジュンク堂池袋本店7Fフロアで『鈴木海花プロデュース ・大昆虫展2015』(この催しの詳細は追ってお知らせします)というのを催します。このアルバム、ぜひこの期間に展示して、たくさんの方に見ていただきたいです。

 

 

 

 翌4月16日。

 午前中は葛巻町役場で、教育長さんと江刈小学校PTA会長さんと面談。カメムシ調査を継続していくためのご支援と助成金獲得へ向けてのご協力などのお願い。

  江刈小学校へ行くまでちょっと時間があるので、また中学校へ虫探しに。いつも時間がなくて行けなかったが気になっていた裏山に行ってみたい。

 

こんな環境。地面にはフキノトウとかカタクリの花が咲いている。

 

あ、これがS君が言っていた赤いお堂かな。

ここはS君がお父さんと虫探しにくるというフィールドらしい。

「葛巻のカメムシをどうぞ、守ってください、調査がうまくいくようお願いします。あと、虫がいっぱい見つかりますように…・」と手を合わせていろいろお願いしまくる。

 

と、カタクリの花に吸蜜に来た白っぽいチョウ。

もしかして、ヤマキチョウ?

あとでFBを通して詳しい方から、似ているスジボソヤマキチョウだと教えていただいた。

体を横に倒しているものも。枯葉に擬態しているのだろう。

 

 

 給食が終わるころ、江刈小学校へ。

主目的である越冬後動き出したカメムシたちを見に、教室へ。

「みんな、カメムシ探してね」とお願いすると、あちこちの教室から

「クサギカメムシいましたー」と子どもたちが呼びに来る。

そう、江刈の子どもたちは単にカメムシじゃなくて、種名で呼ぶ。

教室の天井から降りてきて植木にとまるクサギカメムシ。

掃除をしていると床にスコットカメムシ。

 

陽がさすと、窓際の隙間からわらわらと出てくる。

テントウムシもいっしょに越冬しているようだ。

 

11月上旬に越冬のために家屋に入って冬を越したカメムシたちは、春にどんな動きをするのか―どの教室でも南側の窓の上に、陽が差すとカメムシがわいてくる。暗がりから、目覚めのスイッチがはいって出てくるのだ。

 この日見たカメムシはクサギカメムシとスコットカメムシの2種だった。

越冬後すぐは動きが鈍いのでは、との予想に反して、写真を撮るのに苦労するほど元気がいい。

たくさん出てくると、窓を開けて外に逃がしてあげるという。

 

 授業がはじまった子どもたちに再会を約束してさよなら。

T先生にいただいた「だんご三姉妹」。そば粉をつかった素朴なおまんじゅうだけど、

中にはいっている葛巻産のあんこがすごく美味しいのだ!

 

帰り道、道の駅といわて沼宮内駅で、地元の産物―ギョウジャニンニクとかヤマブドウとかシイタケとか―を買い込むのも恒例になった。

 今年は6月と11月に再訪の予定です。

 

透かしだわら付きのサクラの小枝。葛巻のサクラが家で咲いたらうれしい。