「だるまのハンコ屋」渡辺真由さんに、年賀状に押すためにつくっていただいたアカスジカメムシのハンコ。
1月2日に虫探し開始。
森林公園の手すりに行ってきました。
すると、フユシャクのメス!短い翅には薄いブルーの鱗粉。
その姿が今読み返している『空色勾玉』の主人公「水の乙女」を連想させるイチモジフユナミシャク。
その年に初めて見る虫が初見で、かつこのように美しい虫だと、今年もきっといろんな虫に会えるぞ、という気になります。
今年もいくつかの虫関連の催しなどを予定しているので、現在決まっていることをお知らせしたいと思います。
まず、すでに2月2日に開催の告知をした「虫カフェ@原宿シーモァグラス」ですが、
諸々の事情により、延期することになりました。参加を予定してくださっていた方にはたいへん申し訳ありません。
絵本の読める小さな喫茶店シーモアグラスは、常時店内で展示の催しをしています。そこで、店主の坂本さんと話し合い、今後シーモアグラスでは、虫テーマの作品の展示と懇親カフェタイムという形での虫カフェをやっていこう、ということになりました。日時など決まりましたら、またお知らせします。
しかし、虫の好きな人達が集まって知識を深めたり情報を交換する会は引き続き催していきたい、と会場を探していたところ……すばらしい場所が!!!
池袋にある自由学園明日館(みょうにちかん)をご存知の方もいらっしゃると思います。帝国ホテルを設計した建築家 フランクロイド・ライトの設計による自由学園の元校舎(現在の自由学園は東京東久留米にある)で、今は国の動態重要文化財となっていますが、ここの教室を貸してくれるときき、さっそく行ってみました。
前庭に入ると、どこからか花の匂いが。カフェとなっているホールでおいしいクッキーとお茶を飲んでいるあいだも、館内を見学しているあいだも……ずっと花の香りがしていました。訊いてみると、柊の花が満開で、その香りだとのこと。そう、柊の花って、小さいけれど気品のあるとてもよい香りがするんです。
もちろん、この場所がすっかり気に入ってしまい、こんな建物で虫の話を気軽に聞いたり、交流できる会をしてみたいなあ、と。
なにしろとても人気があり、土日は結婚式なども多いので予約がびっしり。一番早いのが4月20日(日)、ということでこの日を予約しました!
さて、この素敵な教室で何をするか―虫カフェでは、毎回、虫探し旅行などの話をお聞きしてきましたが、明日館の教室では大きなモニターが使えるということなので、鮮明な虫の写真などもみんなでいっしょに見ることができる。
そこで、「むし塾」の名前のとおり、昆虫学者をお招きして、虫の基本について教えていただいたり、気楽に質問をできる場所にしたいと思っています。(講師が決まり次第、お知らせします)
「むし塾」は私個人の開催になるので、なんとか赤字が出ないように、つづけられたらと考えています。
講師の方への謝礼、スペースレンタル料、備品レンタル料、お茶とお茶菓子なんかを入れて、一人1500円くらいの参加費で30名くらい集まれば、やっていけるのではないかな。
また会場の備品の設置(机や椅子-これもライトがデザインしたもの)や当日のあれやこれやなど、お手伝いしてくださる方を募集します。みんなでやったほうが楽しいし。
4月20日お昼ごろから3時ごろまで、お手伝いいただける方は、下記アドレスにメールでご連絡お願いします。
mushimezuru@hotmail.co.jp
その他、文一総合出版刊雑誌『このは』の連載でも、今年はおふたりの昆虫学者にインタビューの予定。
まずは春号のために、明日、つくばの国立科学博物館へ、蛾の専門家でいらっしゃる神保宇嗣さんをお訪ねします。
2月13日には、岩手県葛巻にある江刈小学校へ、カメムシ図鑑シリーズの著者 石川忠さん、長島聖大さんとともに取材に行きます。雪深い山間の小学校を、今日本で最も熱いふたりのカメムシ研究家が訪ねます。
2月20日にはすでにお知らせしました通り、ジュンク堂池袋本店で、「昆虫記者」こと天野和利さんの『昆虫記者のなるほど探訪』出版記念のトークセッション。
8月には同じく、川邊透さんの「昆虫エクスプローラ」書籍版出版記念のトークセッションを予定しています。
3月22日は、「2014森林と市民を結ぶ全国の集い in 東京」という催しで講演。
近年「林業女子」が増加中だそうで、いろいろな形で林業に関わる女性たちに話をすることになっているのですが…「林業女子」たちのなかには虫が苦手な人も多いそうで、森のなかで出会う虫の魅力を少しでも伝えることが……できるかな?
上記の催し関係をまとめると、
○2月2日の『虫カフェ@原宿シーモアグラス』は中止。
○2月20日 池袋ジュンク堂本店で天野和利さんとトークセッション。
○3月22日 「2014森林と市民を結ぶ全国の集い in 東京」で講演。
○4月20日に池袋自由学園明日館で『むし塾』1回目。
○8月(日にち未定)池袋ジュンク堂本店で川邊透さんとトークセッション。
各催しの詳細については、またブログでお伝えしていきます。
あ、そうだ、発売されたばかりの福音館書店の『ちいさなかがくのとも』2月号折込小冊子の『みてみて、いいものひろったよ!』欄に寄稿しているので、幼稚園や小学校で見かけたら手にとってみてください。
……と、新しい年の虫関係の楽しみな予定がいろいろある一方、大晦日から夫と私は、
深い喪失感のなかにあります。
大晦日、外出していた夫からCメールで『大滝くんが、亡くなった』と。
『えっ』
あまりの急なことに、何も手につかず。
膝に力がはいらず、くずれてしまいそう。
年越しそばの用意をする気にもなれず、パスタにレトルトのソースですませました。
もう何十年か前、初めて大滝さんに会ったのは、六本木のワーナーのオフィス。当時、私が音楽雑誌の編集をしていた関係でお会いしたのですが、仕事というよりあこがれのアーティストについに会える、といういちファンのような気持ちだった。あまりに印象が強かったので、あの日大滝さんが来ていた服装―ブルーとグレーのチェックのウエスタンシャツにシーンズ―まで鮮明に覚えています。
その後、結婚した中山泰が、大滝さんのナイアガラ・レーベルのジャケットデザインをしていたことから、ときどきお会いする機会がありました。
『幸せな結末』(ラブ・ジェネレーション)100万枚突破記念に大滝詠一さんから贈られた額は宝物。
大滝さんは、新しいアルバムが出ることになると、福生のご自宅から一人で、渋谷にある中山の事務所まで打ち合わせにこられました。
「きょう、大滝くんが来るよ」と夫がうれしそうに言うと、私もオフィスに行ってお茶くみをしながら、ふたりの邪魔にならないように、ちょっと離れた椅子に座って耳をすませていました。
大滝さんはソロ活動をするようになってからは、あまり多くの人に会うことがないようでしたが、実はとても話し好き。旅の話や好きな機械の話など、いつも2、3時間は、あの独特の笑顔で楽しそうに話していました。この間、大滝さんと中山のあいだには何か目に見えないものが流れていたみたいで、具体的な打ち合わせなどなにもないまま、「じゃあ、よろしく!」といって、大滝さんはニコニコと帰って行くのでした。
グラフィック・デザイナーの夫 中山泰はもちろんふだんから、たくさんのデザインをしている(私の『虫目で歩けば』『虫目のススメ』も)わけで、デザイナーというのはいわばフィニッシュワークなので、一秒一分が勝負という、ぎりぎりの時間のなかでの仕事になることも多い。入稿前の修羅場にこちらがパニックになりそうな中でも、少なくとも外見は淡々とマックのモニターに向かってマウスを動かしている夫ですが、大滝さんのジャケットの仕事の場合だけは、なんか様子が違いました。
大滝さんのジャケットデザインを考えているときの中山は、大滝さんとの目に見えないやりとりの中から、次の作品にふさわしいジャケットデザインを生み出すべく、心のなかで「ウンウン」うなっているように見えました。たぶん最高に誇らしくうれしい、かつ最高にプレッシャーのかかる仕事だったのではないでしょうか。
そうそう、『ナイアガラ・ムーン』というアルバムでは、一曲だけ作詞もしています。
タイトルは『論寒牛男』(ロンサム カウボーイ)。あて字は大滝さんのアイディアだそう。
ここで聴けます。
(出来上がった曲を最初に聴いたとき、なんだかせっかくの歌詞がよく聞こえないけどなぁ・・・と作詞者の妻としては思いましたが)
大滝さんが、こんなに急にいなくなってしまったことは、ボディブローのように効いてきて、
『ご冥福をお祈りします』という言葉さえまだ言えない気持ちです。
『あなたがジンとくるときは、わたしもジン、とくるんです』
―もう少ししたら、アルバムを聴きなおしてみよう、と思うけど、今はムリ……