われを捨て ひとのおのれを かすめては まぼろしに見る とこしへの国
*「かすむ」は「掠む」、盗むとか奪い取るとかいう意味のことばですね。
自分というものを捨て、他人の自分を盗んでは、それが永遠に通用する幻の国を夢見たことですよ。
とまあこんな感じですね。馬鹿は嘘で自分を美しくして、それが本当になる世界を夢見ているのです。そんなことになるわけがないのに、いつまでも自分の嘘にこだわっている。
馬鹿は人まねだけは上手ですから、それはうまく人の真似をするのです。天使のはかなげな微笑みも、悲しそうな瞳も、いやらしいほど上手に真似をする。それで一見天使にそっくりに自分を装うわけですが。
実際馬鹿には天使と同じことができるわけがない。心とその力までは盗むことはできないからです。天使は人類を愛し、人類を救済するためにあらゆる努力をしていた。その本当の心こそが永遠なのだ。神は露を繰り返しともすように、かのじょの神話を永遠に語り続けてくださるだろう。
馬鹿はそんな神話さえ欲しがるのです。自分がその永遠になりたい。何もかもを盗んで、自分が本当の天使になりたい。
それは醜い大嘘なのだと、何度言い聞かせてもわかろうとしない。
嘘でも美しくなりたい馬鹿は、その大嘘を平気でついて、自分が天使になりたいのです。人類を救った天使の、その本当の愛さえ、盗みたいと願っているのです。
本当の自分がいやでたまらないからです。嘘で自分を美しくしようとしている、こんな自分など全部捨てて、天使を盗んで、自分が天使になりたいのです。
そんなことをしようとしている限り、馬鹿は永遠に苦しみ続けるのです。