湯を浴びて 溶けて消えゆく 雪女郎 夢詩香
*「雪女郎」とは雪女のことです。日本の古い怪談ですね。
冬の山をさまよっていると、白い雪のような衣装をまとった美しい女が現れ、氷のような息を吐いて人を凍え死にさせるのです。殺されるのはたいてい男です。女性の怨念を感じます。
心の冷たい女性というのは、本当はいません。女性は男よりは、暖かい心を持っています。弱い者にはとても弱い。むごいことをしようにもできなくて、つい面倒を見てしまう。それがこのように、あまりにも冷たい雪の妖怪になるのは、男が、女性にそういう幻を見ているからです。
自分が女にあまりにも冷たい仕打ちをしているので、女からどういう仕打ちをせられるかわからないという恐怖が、こういう妖怪変化を産むのです。
馬鹿にしたことを馬鹿にされたら、当然こうなると思う。その恐怖の姿が、雪女郎なのです。
だが女性というのは優しい。男が考えた雪女郎という美しい存在を演じてもくれる。女性らしいやさしさで、物語の中に入ってきてくれるのです。
小泉八雲の怪談などでは、自分を裏切った男も、その男との間に生まれた子供も殺すことができず、雪女は消えていく。女性とはそういうものだ。
だが、男というのはいつも禁を破る。熱い湯を浴びせればはかなく消えてゆく雪女に、何の迷いもなく湯を浴びせることができるのだ。そして雪女は消えてゆく。男のために、雪女になったというのに。
なぜ男は雪女に湯を浴びせるのか。氷の吐息で男を殺すこともできるはずなのに、それをしなかったからです。
馬鹿なことをした男に、女が復讐をしなければ、女の方がずっと偉いことになる。
それが男は、嫌だったのです。
なお、ある地方には、雪女の正体は月の姫であるという説話があるそうです。