いらだちの 煙をかぎて 飛車角を ななつ並べて 花を睨みき
*花の美しさに、どうしようもなく惹かれてしまう、そのいらだちに耐えることができず、飛車角を七つほども並べて、花の駒一つを睨んだ。
というところですが、これはもう解説はほとんど不要でしょう。飛車角は、相手の駒もあわせて四つしかありませんから、もう七つも並べたら、馬鹿というほかはありません。相手はなにせ花の駒一つしかないのですから。卑怯ということばが、男らしく感じるほどだ。
こういうことを歌った歌は他にもあるのですが、この作者の切り口がおもしろいので、ここで使わせてもらいました。
まあそれはおいておいて、今回は、数量を表す言葉などについて語ってみましょう。
「ななつ」はここでは、具体的な数の「七つ」ではなく、単に「たくさん」という意味で使っています。文字数の制限で、ここでは三文字必要なので、「ななつ」にしただけです。「よろづ(万)」もありますが、それだと多すぎる感じがしますね。実情は「よろづ」に近かったらしいですが。
もし余裕が二文字しかないなら、「やつ(八つ)」や「やほ(八百)」がありますね。三文字ならほかに「ももち(百千)」があるし、四文字なら「ちよろづ(千万)」がある。文字数によって使い分けられるよう、たくさん覚えておくと便利です。
五文字になると、「やほよろづ(八百万)」とか「ほしのかず(星の数)」とかがありますね。「まさごのかず(真砂の数)」は六文字です。応用すれば、「海の魚の数」、「森の木の数」なんてのが考えられます。反対に、少ないとか、全くないとかいうなら、「坊主の毛の数」なんてのもいい。
おもしろいですね。いろいろと考えてみてください。
というところで、わたしも一つ思いつきました。
ゆふやけを 見る人の目の 数ほども 神はこの世に 悲しみを見む 夢詩香
数量という言葉をいじるだけでも、おもしろい歌や句が詠めます。一応俳句も考えてみましょうか。
一面の 花を数へて 日は落ちぬ 夢詩香
野原一面の、花の数を数えているうちに、日が暮れてしまった。花は菜の花でしょうか。だとしたら大変だ。そんなことをする人はいないでしょうが、もしする人がいれば、一日かかってもできることではない。数えるとしたら、なぜ数えるでしょう。その心を探るのも面白い。
いろいろと遊んでみましょう。