「ひとりでいいんです」このタイトルを見たとき加藤周一氏自身が「ひとりでいいんです」と言うのか、おかしいなあ、とおもったのですが、そうではなく、世界を知るには、「外国の友人をひとりもちなさい」と言うことでした。
加藤周一さんは、次々と新しい問題意識を持たせてくれる方で、視野を広げてくれました。
今回も、日本人の「強い者にまかれろ」「全会一致」「集団主義」に対して、ヨーロッパなど「個人主義がなぜ強いかというと、そこに信仰があるから・・・キリスト教」と指摘しています。
わたしは、もうひとつ、歴史的な資本主義制度による個人主義の発展と思いますが。
この本は、西荻窪の市民サークルとの勉強会をまとめたものとなっていいます。その通りですが、質問の水準も大変高く、知識人との対話と言うべきものとなっています。
加藤周一さんがなぜ9条の会をつくったか、加藤さんは「政治の周辺にいるから真実が見える」と主体的に係わることを拒否してきました。
わたしは、氏の言葉と裏腹に、現実には、私にも影響を与えてように、主体的に係わってきたと考えていますが、今回、自他ともに、変化しました。
その理由を、直撃しています。「私は「戦後」つまり戦争一般を否定してきた時代に責任を持たなければならないと考える。改憲に反対しないで他になにをすることがあるでしょうか」と社会の変化の中での、自らの役割に目を背けない勇気ある姿勢を示しています。
もうひとち、晩年のクリスリャンとして洗礼を受けた点については、この時点では、「いまのところは、わたしは儒者の孔子の徒なんです」と述べています。
「いまのところ」と断定していません。
マルクス主義に関しては、さまざまな側面から肯定・疑問点あいまった見解を示されていますが、この本では、「マルクスが分析したのは資本主義なんです」とソ連崩壊の体制論とのちがいを明確にしています。
おもしろいのは「あなたがたは若いですから、いまから、マルクス主義の論文をけんきゅうしておけば、近い将来、その最先端にいることになる」と答えている点です。
加藤周一さんと不破哲三さんの直接的接点は、見られませんが、この7月の日本共産党創立90周年の記念講演で不破哲三さんは、日本共産党の理論活動について「スターリン時代の中性的な影を一掃して、この理論の本来の姿を復活させ、それを現代に生かす、いわば科学的社会主義の「ルネサンス」をめざす活動とも呼べるものだ」と解明しています。
この間、加藤周一さんが、世界の政治・経済・マルクス主義について語り提起してきた内容については、日本共産党員の変革の運動と特に不破哲三さんの数十年にわたる、理論活動を見ていると、より具体的に、全面的に応えていると思います。
加藤周一さんの魅力の一つは、本質的な問題提起と場合によっては、その先駆的な解明にもあるのです。