「日本共産党だったらこう解決する」という立場で、その一つとして、経済危機打開への総合的な賃上げ政策を「ワンパッケージ」として示しています。
非正規社員の正社員化、最低賃金の抜本的な引き上げ、中小企業への本格的な支援、解雇規制のルールの強化です。
マルクスの「賃金,価格,利潤」を読んで、(大月書店1969年第7刷)(現在は 新日本出版社から「マルクス『賃労働と資本』『賃金、価格および利潤』」として出版。)
資本主義社会一般だけでなく、現代日本経済と労働運動の根本問題を考える大きなヒントになりました。
労働者が賃金として受け取るものは、本来は、「彼の労働そのものではなくて彼の労働力であって、彼は労働力の一時的な処分権を資本家にゆずりわたすのである」大月版52ページ。
「ほかのあらゆる商品の価値を同じく、労働力の価値も、それを生産するのに必要な労働量によって決定される」53ページ。
「労働力の価値は、それを維持または再生産するのに必要な労働量によって決定されるが、しかし、その労働力の使用は、労働者の活動エネルギーと体力によって制限されるだけである。労働力のの一日分または一週間分の価値が、その同じ力の一日分または、一週間分の行使とはまったく別物である」と、ここに剰余労働が生まれる根拠があるという事だと思います。
「労働日(時間のことだと思います。注・市原)の限界が一定だとすると、賃金が生理的最低限のときに利潤は最大限であること、」「また、賃金が一定だとすると、労働者の体力がゆるすかぎり労働日を延長したときに利潤は最大限であるということ」83ページ ここに、労働時間や賃金をめぐって、労働者と資本家の利害が相容れない根本問題があります。
「労働の生産諸力が発展するにつれて、・・・資本の蓄積が促進され・・・・固定資本・・・の部分は・・・賃金つまり労働の購買に投じられるもう一つの資本部分くらべて、累進的にに増大する」85~86ページ。
「近代産業の発展そのものは、・・・労働の価値を大なり小なりその最低限界におしさげるものである」87ページ。
この中で、労働者、労働組合の労働時間短縮、(労働強化とのたたかい)、賃上げ要求の正当性があるのではないでしょうか。
「労働日の制限についていえば、・・・イギリスでも法律の介入によらないでそれが決まったことは一度もなかった・・・・全般的な政治活動が必要であった」84ページと政治が行うべき役割についても述べています。 日本共産党のワンパッケージの政策提起は、当面の極めて現実的合理的な提起であると思ったことと、この本の内容との関連でも意味深いものでした。
不破哲三さんの「マルクスは生きている」平凡社新書720円では、社会的ルールづくりの世界史的な発展の3つの節目があると言っています。
①1917年のロシア革命の社会保障制度を掲げた影響がヨーロッパに広がった。ドイツのワイマール憲法1918年ドイツ革命後の1919年ドイツ人の権利と義務の規定。ベルサイユ会議1919年で、国際労働機関の創設(ILO)
②1936年「人民戦線」の時代のフランスで、経営者と労働組合の全国組織同士での労働者の権利と労働条件を定めた団体協約。
③第2次世界後の国際連合の発足
しかし、日本では、ヨーロッパ諸国と違って、労働運動や労働組合に重大な弱点があり、こうした権利を勝ち取ることができず、「過労死」「サービス残業」「派遣労働」「下請けいじめ」などルールなき社会になっています。
不破哲三さんは、これらの段階の時代に、専制政治で労働者が無権利に押さえつけられていた。戦後の「民主化」もアメリカの占領下での「上からの改革」としての、重大な弱点がある。(新日本共産党綱領を読む 新日本出版)と指摘しています。それが今日まで続いているということだと思います。
「その組織された力を労働者階級の終局的解放すなわち賃金制度の最終的廃止のためのてことして使うことをしないならば、それは全面的に失敗する」(賃金価格利潤89ページ)と資本主義に変わる、未来社会と労働者階級の役割を示しています。
この未来社会論は、別の場所でも「労働する人間と労働手段との分離がひとたび確立されると、・・・・ついに生産様式上での新しい根本的な革命がふたたびこれをくつがえして新しい歴史的形態で原結合を復活させるまでつづくであろう。」53ページとも述べています。
毎日新聞2月7日付「風知草」山田孝男氏は、2日の衆院予算委員会での志位和夫委員長の質問を取り上げ、「『ベテランと経験を捨てて安全を守れるか』と切り込んだ・・・歴史的な一石を投ずる質問だった」と評価されています。
そして「マルクス経済学用語や労組べったりの話法を振り回していたら、反響はもっと小さかったろう。」とも述べていますが。根本的な改革をめざすとともに、現在の「国民の命と安全を危険にさらす」やり方を許さない、日本航空の大義あるたたかいに連帯して、日本社会の展望を切り開くことが、日本共産党の使命であり、科学的社会主義の党の役割ということではないでしょうか。