船橋革新懇での本島勲氏の講演要旨が、ちば民報に掲載されておりましたので紹介します。
船橋革新懇が12月4日、船橋市で「日本は原発なしでやっていけるか!」と題し、電力中央研究所元主任研究員の本島勲さん(元中央大学講師、現在核・エネルギー問題・情報センター常任理事)の講演をおこない63名が参加しました。以下、本島さんの講演要旨をお伝えします。
日本の電力産業は、電灯会社として1886年に誕生し、紡績業などの工場の動力を電力化したことにより、重要産業となりました。
1938年、国家管理諸法の公布により統合され、独占的な「発電会社」(日本発送電株式会社)となります。
事故の要因に「保護」
戦後は、マッカーサーの 「ポツダム政令」によって9つの電力会社に再編成されます。これは当時の独占禁止法に明らかに違反していましたが、アメリカのエネルギー世界戦略のもと、日本を支配しようとの意図で、成立させたのです。
アメリカはその後、日本固有のエネルギーだった石炭と水力から、石油と原子力に転換させます。日本の国会は、1964年に「電気事業法」を制定し、ポツダム政令を引き継ぎます。
その頃、既に火力発電は石炭から石油に転換されつつありました。もちろん石油は、アメリカの石油メジャーによってもたらされます。この電気事業法に保護され、電力会社は今日のような巨大企業に成長したのです。
また、政府の規制をクリアすれば「お上のお墨付きを得た」となり、電力会社が守られる仕組みです。それが、安全対策や独自の技術開発を怠る原因になり、さらには今回の原発事故を引き起こした遠因ともなります。
原発事故についての電力会社の直近の報告では、「政府と一体となって進めてきた」、「しかし、想定外のことが起こって事故となった」、「だから、人為的ミスはなかった」というものです。国と一体となってやったのだから「自分らの責任ではない」と、強弁しているのです。
今の福島原発の状況について東電は、循環水冷却が67度Cになっだので「安定した」といっています。しかし、1日に600トンの高濃度汚染水の漏洩がおこっており、更に建屋の中を開けられない状態であることからも「冷温停止状態」とはいえません。
原発重点・依存体質は電力の消費構造に起因します。大企業や大規模工場の契約口数は全体の0.01%なのに使用電力は30%です。
これに対し一般家庭は、契約口数99%で使用電力は35%です。
電力の発送網は大工場優先に造られています。発電所から大量消費の大工場に高電圧で直に送ると、電カロスも少なく電力原価も安く済む。そのためには、安定して高電圧をつくる原発が都合がいい。東電にとって大企業優先でやるためには、原発が一番効率的なのです。
作られた原発依存
原発をなくしても火力の利用率を今の43・8%から75%にするだけで、電力総量としてはやっていける。原発は定期点検で停止中以外はフル稼働しているのに、火力は常に半分以上止めているのです。また発電量は、火力は56%で原発が35%であることから、今ある火力を100%稼働させれば原発を補う能力が充分あります。
世界の火力発電の大勢は、石油から液化天然ガスに移行しています。天然ガスの大半は水素なので、温室効果のある炭酸ガスの出る量ははるかに少なくなります。
節電についてどう考えるか。電力事業法27条で電気の不足が国民生活に悪影響を及ぼすおそれがある場合、「供給する電気の使用を制限」すると書かれています。しかし、大企業を守るため、この条項は生かされていません。
大企業は、契約口数で0.01%なのです。「計画停電」はこれで充分でした。今後は、「計画停電」の範囲を中小企業まで網のかかる「500則以上」でなく、「2000所以上の規模の電気事業者」とさせることが必要です。
原発撤廃への提言
環境省によれば、日本の主な自然エネルギー(再生可能エネルギ士の導入可能量は、太陽14,920(単位は万KW)、風力185,550、中小水力1,440、等で合計203,330あり、9電力合計設備容量20,025の10倍を超えるとの試算です。
再生可能エネルギー導入では、住民と行政との共同による運動かカギです。一例として「南信州市民ファンド」による発電例があります。
また「エネルギー固定価格買取法」には、「再生可能エネルギーを買取る費用」を一般家庭の電気料に上乗せする条項があるので、これを電気会社に負担させる運動か必要です。
私は、核エネルギーの危険性をなくすために、既存原発を撤廃し、新しい社会を作る、次の6点を提言したいと思います。
①原発の是非を問う国民的な議論をおこし、十分な議論ののちに国民投票を実施する。原発利用のためではない核エネルギーの研究・開発は推進する。
②当面は、運転停止の命令や、施設と運転の改善命令などの行政権をもち、政府から独立した原発運転監視委員会と附属研究機関を設立し、原発の運転を監視、指導して安全運転を図る。
③大口需要の大企業は、自家発電の開発など自己の責任で電力を確保する。
④各地域に分散する固有の自然エネルギーの開発を、地方自治体のイニシアチブの下に住民参加による 「おらが村のエネルギーはおらが村の自然エネルギーで」として推進する。
⑤大工場を中心として大量生産、大量消費の産業玉工場中心)構造から、自然と共生する農林漁業、地場産業を主体とする低エネルギー循環型の産業、生活へ転換させる。
⑥ポツダム政令を基本的に引き継ぐ電気事業法を抜本的に改定し、電力会社による電気事業を改め、公共事業としての電力産業の社会的責任を明確にするとともに、エネルギーの地産地消を推進する法的財産的体制を確立する。
質疑では、「なぜ危険とわかっている原子力の研究を進めるのか」との質問が出され、本島氏は「今の科学でその危険性を回避できないからといって、将来の可能性を否定してはならない。また安全に原発をなくすためにも研究は必要」と語りました。
(文・写直 佐藤実)