40年ほど前、内定取り消しに遭いパン屋に就職、第二次オイルショックで内定取り消しが横行した時でした。意に反してパン屋に、よりによって、パン屋とは。当時は大きな企業でした。研究室に配属され、毎日詰まらない事極まりない。現場への配置換えを希望し、菓子パンの仕込みに、横型ミキサーが3台並ぶ仕込み部屋、醗酵室には生地を発酵させる為の発酵ボックスが20数台。朝5時から、仕事が終わると既に20時、21時の毎日。後悔の毎日。
ここで教えてもらった事、ミキサースイッチの操作方法、生地温度を調節するための冷水のレバー操作。これだけで此処での仕事が始まり、後は先輩の仕事ぶり、動きを記憶すること、観察、周りの動きに注意しながら。先の分割機の動き、生地の減り方、身体で覚える以外に何も無い。マニュアルは基本的な配合とミキシングタイム、捏上温度、フロアータイム、後は感。
先輩が休みの日の緊張感、配属後1ヶ月頃初めての経験。アンパンが平たい、扁平だと包装から怒りの声。捏ね上げ温度もフロアータイムも同じ、それでもパンが違う。全く解らない数ヶ月が過ぎ、生地の感触と其の生地から出来るパンが微かに浮かんでくるようになる。
教えてもらえる事が極めて少ない、この世界。
その後食パンに移動、食パンは1台のミキサーを見ていれば良いので、菓子パンの仕込みに比べればはるかに楽でした。捏上温度、フロアータイムを守れば、粗良いパンには成る。しかし、仕込み担当が異なると、パンも異なる。同じミキシングタイム、温度、フロアータイムでもパンは違う。