中国での仕事も、一昨年3月の初回から回数を重ね10回になりました。
材料では、強力粉はともかくとして、薄力粉とマーガリンの品質の悪さ、モルトが思うように使えない、イースト使用量にも制限がある。まだまだ美味しいパンを作れる環境ではありませんが、今お邪魔している東莞のベーカリーは経営者が先進的なお考えを持ち、製法、商品作り、店作り、人材育成に神経を使い、中国にこれ以上のベーカリーは無いであろうと思わせます。
日本もそうであったように、今後直焼きパンの需要が増えると考えられます。今は惣菜パンが氾濫している中国ベーカリーですが、10年後は食パン、直焼きパンが並ぶ売り場作りが見られるでしょう。町には汚いラーメン屋、お粥食堂が居並ぶ光景が一般的で、直焼きパンが売れる環境では無い様に思えますが、高級レストランも多くなり、そこではステーキを食べる親子が多数見られますが、これも日本のファミレス勃興期と同じで、成長期のたくましさを感じます。
一方国内では小型ベーカリーの開店支援が主流ですが、小型のベーカリー機器で開店して1年も経たずにその製造能力を超えてしまったベーカリーが柏にあります。”天然酵母パンペジーブル”がそれで、9時開店、16時閉店という普通では考えられない短い営業時間で、巷のベーカリー並みかそれ以上の売上を実現しています。それには2種類の天然酵母を丁寧に毎日管理している努力もあります。指導した通りに毎日種を継ぎ、硬さ、温度、時間を厳しくチェックし、記録し、パンの出来上がりを厳しく見ています。今年は建物を増築し、カフェを開店する予定です。秋からはパンだけでなく、カフェメニューの提案が加わります。更に人材の育成を考え、パン学校を立ち上げるよう提案しています。良い人材は自前で作る。これ以外になさそうです。今年東莞のベーカリーも人材育成を積極的に進めるため、学校を立ち上げる予定です。
桜満開の”天然酵母パンペジーブル”
東莞から戻り2週間経ち、やっと体調が戻ってきました。出発前から風邪気味であったことと、到着した日の歓迎会が盛大で、1週間持つか心配でした。前回より連日のカラオケはお断りしていますが、よく飲み、良く食べ、良く喋る人たちです。
今回は生地の種類で16種、派生した最終製品は約50種類になります。予定はドーナツの改良と新商品の開発でしたが、日に日に要望が増え、クッキー、食パン、直焼き、メロンパン、バラエティーブレッドなど多岐にわたりました。元々ドーナツ生地の改良が主な目的で行きましたので、加工澱粉を持参しておりました。また、現地でもち米粉、幾つかの加工澱粉が入手できたので、それを使って食感、日持ち改善が出来ました。ケーキドーナツは薄力粉の品質に問題がありましたが、もち米粉、澱粉の使用で中国人の舌にも合いそうなケーキドーナツになりました。
最終日に直焼きパンの依頼が突然ありましたが、幸い現地に入ってから醗酵種を起こしていたので、それを使って3種類の生地を仕込み、8種類の製品となりました。中国人は直焼きパンをあまり食べませんが、予想外に好評で、試食に用意したパンが足りないほどでした。
今中国では、添加物の規制が厳しく、その使用量までチェックが入るとのことでした。その他イーストの使用量も制限があり、またモルトが見当たらず、直焼きパンを作るには悪い環境です。今お邪魔しているベーカリーは別ですが、一般的に中国では無醗酵生地でパンを作るのでバサバサのパンが多く、このままでは食パンの需要を増やすことは困難であり、ちょっと気の利いた経営者は天然酵母、醗酵種と、それに組み合わせる澱粉、湯種等に興味を示しています。