初夏
基礎について。
パン屋作り、ベーカリー立上げは人生の一大事業でありながら、パン作りの経験が無いにもかかわらず、安易に手をだす輩がいます。
1週間や2週間のパン作りでどれだけ技術を習得できるとお思いでしょうか。生地が丸められた、だからできる。これは余りにも短絡すぎます。丸めも、綺麗に、生地表面を傷めず、綺麗に、いかに速くできるか。手の皮が生地に当たるだけで生地丸めはできているとは言いません。
この生地丸め、アンパンの整形、食パン、フランスパンの整形、焼成、少なくても3年程度必要と考えています。2〜3年の経験を持つ人材を採用しても、任せられるまで更に1〜2年必要です。
アンパンの整形、天板1枚に15個乗せ、これなど5分以内にできなければ売り上げを作る、店頭を商品で埋めることはできません。
売り上げが上がらない、売り上げが悪いと相談を良く受けますが、全てパン作りの作業が遅い。これに尽きます。商売は趣味程度の技術ではとても無理です。速さ、綺麗さ、そして美味しさ、更に接客の良さ、これらが揃って初めて商売のスタートラインです。
しかし、これまで述べたことは技能です。技能=職人技。
ベーカリー、本当にライバルと戦い、勝ち抜いて行くには技能だけでなく技術が必要です。
技術=技能+知識。
パン作りはかがくです。生地は物理的変化と化学的変化が同時に進みます。生地の物理的変化を見て、内部の化学的変化を判断します。またイーストの働き、イーストが気持ちよく休まず働くための条件は?この条件をどうするか、どう整えるかによってできるパンが変わります。同じ配合でも生地温度、発酵室温度、パンチ時期、分割丸めのタイミング、丸めの強さ、ベンチタイムの長短、ホイロ温度等によって美味しいパンになるか、そうでないか、分かれます。
粉の中のタンパク質の量、その質、でんぷん量とその質、粉の選択だけでもパンは変わり、その性格の違いは製法も選びます。
生地中ででんぷんはどう変化するのか。その変化は何によるのか。その変化の度合いによってイーストはどう働くか。働かなくなるか。いつまで、でんぷんのブドウ糖への転換を続けるか。言い換えれば、それをいつ止めるか。
頭に描いたパンの姿、思い描いたパンを思い通りに作る、これは至難の技で、お客様の求めに応じたパンを作る難しさ、開店してから味わいますか?