「百田尚樹『殉愛』の真実」角岡信彦+西岡研介+家鋪渡+宝島「殉愛騒動」取材班 2015宝島社
まあ、内容はほとんどネットのまとめにあるが、順になぞっていくには本の方がいいね。
この本を通して読むまでは『端的に、有名人の相続争いの片方に加担して嘘を並べた極悪人、百田尚樹だけに罪があるのではないか』と思っていたのだが、どうやらさくらの行動には犯罪性も見え隠れし、裁判もいいけど、まずは税務署が動いてくれないかと期待するようになった。検察まで動き始めたら楽しいけど、そうはならないだろうな・・・
結局、さくらは『殉愛』で経歴ロンダリングがしたかっただけなのかな。そして国民的ヒロインになって、太田社長みたいなポジションを望んでいたのか。
百田はさくらに惚れたのか?たかじんは百田をこき下ろしていたとのことなので、たかじんからさくらを奪った気になって悦に入っていたのか。こき下ろされたたかじんへの意趣返しの意味もあって、たかじんが大切にしてきたものを本来あるべき人たちから奪うように動いたのか。
まえがきにある「事故本」という表現は適格だね。
少なくとも、親族やマネージャーへの取材をしてない時点でノンフィクションは無理だ。
百田と幻冬舎は、「この作品はフィクションです」というシールを発行部数分用意して配布すべきだし、数年後に「さくらの真実」というタイトルでフィクションとしながら真実を暴露したら面白いのに。さくらのチャンスを逃さない生き方は「海賊と呼ばれた男」の女版として充分に読みごたえがあると思うよ。ずっとがっついて生きてきて、金持ち相手に慰謝料を取ることの簡単さに気付いてから人生が加速した状況!そして「殉愛」の計算違い!途中までは当たり前の欲深さで、途中から犯罪的な心理になっていく過程とかさ。
学生時代からの(男への)積極性、大金持ちのおじさんの正体!
この騒動そのものが、(親族やテレビ関係者、そしてさくらのことをよく知っている)たかじんの計算によって仕組まれたものだったりしたら、それが一番小説的で面白い。だって、そうであればメモが全部本物でもおかしくないんだもの。または、さくらとKが実は裏でつながっていて騒動を仕組んでいたりするというのもいけるんじゃないか。当然、Hもさくらと仲良しってことで。さすがに無いだろうけどさ…そういう小説ならば、百田さんも得意なんじゃないのかい?
っていうか、たかじんはさくらと会った頃から認知症が始まっていたんじゃないのかな。時々おかしくなるのは、それで説明がつくし。
たかじんのメモが本物だとして、百田に書いてほしかったのは「海賊と呼ばれた男」のような形での伝記だったのだろう。さくらの本じゃないはずだ。
ってか、この本でもやっぱりたかじんはわがままで無茶苦茶で迷惑な存在にしか見えなかったりする。正直だな!
そして、この本もやっぱり取材不足ではないか?真実にはまだ少し遠いような気がする。取材を断った人間を全部羅列してくれれば、もう少し状況が見えてくると思える。それとも、取材を断られたと書いてない人には取材を申し込んでいないのか?できれば百田が名前を出している看護師たちからの発言の真相は、さくらの介護の在り方とその評価に関わることだから、読者(やじうま)としては一番知りたいところだ。そこをこれまでのさくらの行状によって判断せよというのは公正ではない。参考程度だ。(久保田医師からの取材拒否は書かれているが、看護師たちについても取材を断られたのか?文書で要請して断られたということだから、医師が断れば看護師にも取材できないと諦めたのか)
ただし、この本によって、百田尚樹の「殉愛」が嘘の百貨店、嘘の展覧会だということはかなり明らかにされたと思う。
この本の締めくくりに書かれている「百田の実力を過信した業界の慢心」によって生まれたのは間違いないようだ。
はっ!
さくらの次の狙いは百田なんじゃないのか。
そして、それはほぼ達成していたのかも…(百田「『小説家』なんか九年しかやっていないが、『男』は五十八年もやっている。どっちを取るか、迷うはずもない」)
でも、展開によってはさくらは百田を簡単に切り捨てるってことになるんだろうな。