「安部公房全集005 1955.03-1956.02」 1997新潮社
戯曲「制服」「どれい狩り」「快速船」がページを取っているので(しかも全体のページ数が少ない)、001~004よりもかなり早く読み終わる。
「制服」での小説との変更点は女房とひげの関係と結末。
「どれい狩り」はもう、小説とは別物というか時系列が遡ってウェーの始まりの話。しかもネタばらししている。それにしても面白い。
「快速船」は願望達成薬ピュー!
「「奴隷狩り」について」の最後の方で月を使って発電しようなんてアイデアがあるが、それを応用すれば遠ざかろうとする月をつなぎとめておく技術にもなるなぁ。
起動エレベーターも地球を一周させるリングにするアイデアもあるんだから、それと連携すればどうだい。
月は資源として(大きく)消費してしまうというのは、潮汐の関係などからありえないわけだしね。
P366「十一番目の自殺者(エッセイ)」の中で「自己を集団から切り離して、特別視しようとする傾向、自己を集団の対立物として過大視する傾向」を女学生の包帯とニイチェに見出しているわけですが、これはまさに21世紀に生きる人々の多くが持つ傾向ではないか。60年近く前に書かれたものであることから、これは現代病というわけではなくいつでもあるものであるらしい。そしてそれを匿名IT世界が助長しているのかもしれない。わたしの中にもある傾向だわ。ニュースで見る犯罪者やクレーマーの多くが、この傾向を持つことは間違いないだろう。っていうか、どうせなら・・・自粛。