「通天閣」西加奈子 2006筑摩書房
2007織田作之助賞大賞受賞
太字で書かれたのは夢の話だよね。面白いわ。その人の本当の価値観や恐れているものが見えるみたいで。
自分で自分を縛り付ける愚かな人間ふたり、近くにいながら互いに気づかないままそれぞれの生活。
昔関わっていた二人はそれぞれに時々思い出すくらいの意識がありながら、同じ場所で別々に恥ずかしかったり悲しかったり求めたりする。
「お前のことがッ、好きやああああああああああああああああ!!!」
「俺にはお前が、必要やっっ!!」
「死なんといてくれええええええええええ!」
「降りてきてくれえっっっ!」
「雪やっ!」
愛そう。
通天閣周りの人物スケッチがすごいね。すばらしい。
痛点掻くっーくらい。かさぶたをはがすような。
客観的には二人ともショーもないこだわり、自分ルールに縛られて無駄に過ごしている。でも、誰でもみんなそんなにうまく生きているわけじゃないから、何かしら同じようなことをして生きているんだろうなんて思ったりもしてみる。少なくとも私はその途中、同類だ。
ふたりとも、実はわかっているけど、それを認めるのが怖いんだな。認めたくないから逸れていく、逃げていく。
すごく楽しく読んでしまうぞ。
本棚の宝物候補だ。
ゲロを吐くシーンがこんなにもふさわしいエピソードがあろうとは。二つとも。
テレビドラマでもやろうものなら、この二人を再会させてハッピーエンドとかになるんだろうな。
おっちゃんと連れ子だった娘。