「カフカ小説全集4『「変身」ほか』」フランツ・カフカ(1912~24) 2001白水社
「観察」「田舎医者」「断食芸人」とっていうのは雑多であり、スケッチでありメモである。面白いのかもしれないし、そうでないのかもしれない。やはり読むべきは『変身』である。「判決」「火夫」「流刑地にて」も読めるが、興味を惹かれるほどでもない。
先に解説を読んでしまったので、『変身』がグレゴール・ザムザ(主人公)だけのものではなく、彼の家族にも訪れるのだというのを確認してしまう。ああ、なるほどなぁと。そして、それを意識して読んでしまうから、グレゴールが「ある日突然引きこもりになった」という見方が恐怖を伴うようになる。あああ、元はパラサイト家族だったくせに、寄生主が引きこもりになったら邪魔者扱いかよ!死んじまえって思っていたろう。死んじまって喜んでいるだろう。わぁ!なんてことだ。完全に一致じゃないか!引きこもり問題に!しかも、その主人公の勤める会社はどう見てもブラック企業だ!まさに、企業の利益優先の格差拡大社会という現代を描いているような作品じゃないか!!!わぁああああ!
ってか、『変身』は本当にすごい作品だったんだな。虫(引きこもり)になった者への家族と家政婦のひどい扱い。リンゴが背中に陥没しているんだよ、椅子で殴られるんだよ。そして死んじゃうグレゴール。邪魔者がいなくなって気分転換の旅行、娘(妹)の成長は親たちには新たな宿主の発見へとつながるわけだな。あああ。なんて言うラスト。
いやいや、これ、引きこもりが『自分は虫になった』と妄想するドラマで再構築できそうじゃないですか。深夜枠あたりで。
「流刑地にて」はタイトルを「処刑機械」にした方がしっくりくるな。「処刑機械の最期」なんてのはどうだい。「最後の処刑機械」とかさ。
これまた原発行政、自治体や労働者の姿とみるのは穿ち過ぎだろうか。真実を何も知らされないまま、言われるままに処刑されていく。原発では処刑されていることすら気付かずに。環境と健康を徐々に汚されながら、地域が死んでいく姿はまさにこの作品の中の自動処刑ではないか。まあ、カフカの時代からすると機械産業への警鐘だったのだろうけれど。
「田舎医者」の中の「家父の気がかり」こそ、安部公房の変な生き物たちの原点だろう。「オドラデク」って何だろう。
荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」にもカフカの影響はあるんじゃないか。「断食芸人」の中の「最初の悩み」は空中ブランコから降りてこなくなった男のはなしであり、「ジョジョ」の方にも鉄塔に住んでいる男の話があったよね。
カフカは「失踪者」「判決」「変身」をまとめて『息子たち』のタイトルで1冊にしたかったそうだ。だけど、「失踪者」は失敗作だと言っていたと。ふ~ん。