「後悔と真実の色」貫井徳郎 2009幻冬舎
『ポンツーン』2006年12月号~2008年06月号、大幅加筆修正
ああ、最終的にはありがちなアイデアと展開の作品だったな。しかし、読んでいる間は十分楽しめた。
《指蒐集家》
連続殺人(1+(3+1))
犯人の動機に迫る人格を、なにげなくそれでいて読者が少し違和感がある程度に描く(P148)あたりはうまいね。終盤の人格形成(幼いころの事件での刷り込み)でもそれなりの説得力もあるし。そこに行きあたらなければ!というのも、そこでなくてもいつかは・・・ってのも感じる。このあたりの因果の構成は他の作品と同様だね。
ジョー(西條)さんは甘いわな。まあ、そこが人間らしくて安心したんだけど、『正義』の下には刑事さんが浮気しちゃだめだわ。因果応報のようなかわいそうなような。おもしろいね。奥さんのことは好きなまま夫婦関係は破綻って。フフフ。私もこの奥さん好きだよ。ピシッと!
後悔は他人の気持ちを思いやれなかった言動や、すべての元凶となった自分の存在そのもの。だな。「たられば」は刑事を辞めさせられたことと最後の被害者。ジョーさんの存在がおまけの殺人を誘ってしまった。さらにもう一人失うところだった。
身代わり《指蒐集家》のところは作者は笑いながら書いただろうね。「わははは、こいつアホや、どうだ、これだけテンプレートなクズ」って。
わかりやすく後悔しているのは綿引だね。
あと、一人目の殺人の犯人(またはその原因)は安養寺美貴(大臣の娘)でいって欲しかったな。まあ、やり過ぎになるかもしれないけどスッキリするし、もう一山楽しめたのに。