「名もなき毒」宮部みゆき 2009光文社カッパノベルズセレクト(2006幻冬舎)
杉村三郎シリーズ第2弾
原田いずみという怪物キャラクター。でも現実にも存在しそうで、すこぶる恐ろしい。
どんどんその正体が明らかになって、みんな安心している所でさらに被せてくる。あああ。
不確定な不安を抱えたまま読まされる読者。
まあ、読者的にはずっと不安を感じ続けるしかないのだが、当の主人公はのほほんと家族と楽しくしている・・・あああ、だからそれだろ!まあ、上手い創り方。そうだよ、逆玉三郎には気付かないことなんだろう。そういった危ない人間の考え方とか行動とかさ。わかったつもりでも理解できていないために危機感が薄い。でもしかたない。どうしようもない。でも、義父に頼めばある程度は防衛もできたかもしれないというね。
「本来、あなたみたいな見るからに恵まれた人間が彼に接触すること自体が間違いなんです。邪気がないってのは、いちばん始末に悪い」
彼とは貧しい介護疲れの孫(元コンビニ店員)のことを言っていますが、これはまた原田いずみに対してもそのまま当てはまるということ。それに杉村三郎は気付けない。だから、妻子に危険が迫ることを予見できない。
・・・
で、原田いずみを捕まえて、気絶するほど乱暴に捕まえて、そこは読者も気持ちいいけど、でも、なんか解決したような気になっているけれど、この程度の罪であれば、原田いずみはすぐに娑婆に出てくるよ。または、抜け目のない嘘つきだから執行猶予くらいは軽く勝ち取るかもしれない。そこに読者の不安は残る。毒はなくなっていない。どんな体裁で作品が終わっていても。